オーケストラ・ランキング2017

小生のブログのアクセス解析を分析すると検索ワードは「指揮者ランキング」で、記事としては未だに2011年の9月30日の「英誌の選んだ世界の20大指揮者」が検索のベスト5に入っています。でも、不思議とオーケストラランキングは取り上げたことがありません。今年の「レコード芸術2017年3月号では,「オーケストラ・ランキング2017」という特集がありましたので、取り上げることにしました。こういう企画、2008年以来9年ぶりということです。で、今年のランキングです。レコ芸の30人の評論家がそれぞれ1位から10位までランク付けし,10点から1点までの順番で点数化しています。して、その結果は,
1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 バイエルン放送交響楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
5位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
6位 パリ管弦楽団
7位 シカゴ交響楽団
8位 ロンドン交響楽団
9位 マーラー室内管弦楽団
10位 ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
11位 ベルリン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
12位 ボストン交響楽団
以下略
となっていました。
1位のベルリン・フィルは今ならこういう結果でしょうかね。30人中14人が1位にランク付けし,ランキングに入れていないのは2人だけです。 それにしても、現時点でのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の1位は納得です。レコーディング,映像配信,演奏会(旅行)などの活動ぶりをみても,ほかの一歩も二歩も先を行ってると思うし、客演指揮者陣も安定しています。先日取り上げたウィーンフィルのシェーブルン宮殿でのコンサートとベルリンフィルのワルトヴューネでのコンサートを比較しても明らかにベルリンフィルの方がすぐれています。同じ自主運営のオーケストラにしてはウィーンフィルの方が保守的すぎます。最近はレコーディングもありませんし、何よりも、指揮者をコケにする発言がオーケストラ側に多すぎます。2位ー4位は意外かもしれませんが順当な結果ではないでしょうか。ウィーン・フィルは,これまでは1位か2位が定位置だったが,このところの凋落ぶりからするとこれでも高い順位になってると思います。今の世の中では常任指揮者を置かないというのはかなりのリスクになっているということでしょう。何しろ中心指揮者がいませんから来日公演では指揮者がころころ入れ替わっていますし、演奏会のレベルも安定していませんからね。一つ救いは、この凋落の期間,長くコンサートマスターを務めたライナー・キュッヒルが退任したので,いい方向に向かうかもしれません。それでも、ウィーンフィルに1位に入れた人が6人もいるというのは、評論家人も硬直化しているとしか言いようがありません。まあ、ベルリンフィルの常任にキリル・ペトレンコが選出されるのを予見した人が一人もいないというのが、この国の評論家のレベルといってもいいのでしょう。
参考までに2008年と1993年のランキングです。
2008年
1位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 バイエルン放送交響楽団
5位 シカゴ交響楽団
6位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
7位 ロンドン交響楽団
8位 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
9位 ベルリン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
10位 パリ管弦楽団
1993年
1位 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
2位 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
3位 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位 シカゴ交響楽団
5位 クリーヴランド管弦楽団
6位 モントリオール交響楽団
7位 パリ管弦楽団
8位 18世紀オーケストラ
9位 ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ)
10位 バイエルン放送交響楽団
こうして見るとオーケストラは指揮者との結びつきがランキングに繁栄しているのが分ります。コンセルトヘボウは日本では万年ベストスリーに名を連ねていますが、これはハイティンクの後を継いだリッカルド・シャイーやマリス・ヤンソンスというシェフが優秀であったということでしょう。2008年にベストテン入りしているライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は2005年からシャイーがシェフになっていますが2016年に退くといきなりランク外です。ただ、後任が、アンドリス・ネルソンズですから、次回は復活しているのではないでしょうか。反対にボストン交響楽団がアメリカのオーケストラとしては2位の12位にランクされていますが、22年に離任の予定ですからクリーヴランド管が復活するのではないでしょうか。またランキングでは、ヤンソンスがいまも常任を続けているバイエルン放送交響楽団がどんどん躍進しているのが分ります。ウィーンフィルやコンセルトヘボウより上ですからね。ただ、個人的な本音を言うと、来日公演を聴いてもヤンソンスの良さはイマイチ理解出来ません。
さて、コンセルトヘボウはこの後ダニエル・ガッティが常任になり、さらにそのガッティはマーラー室内管弦楽団の芸術顧問にも就任していますから、9位にいるのは納得です。
10位のドイツ・カンマー・フィルもパーヴォ・ヤルヴィが牽引してのランク入りだと思いますが、2016年まではパリ管弦楽団も率いていましたのでこの体でいくとNHK交響楽団も上位に来るのではないでしょうかね。
シカゴ響の7位はムーティが頑張っているからのランクともいえますが、活動面で見るとロンドン交響楽団がこの9月のシーズンから音楽監督として着任していますから、その期待を込めての順位ではないでしょうか。
以上10位までの中で,1位に入れた人がいるのは,コンセルトヘボウを除く5位までに集中しています。しかし、下位のオーケストラで1人だけが1位を入れたのが2つあります。どちらも、その票だけ(つまり合計10点)というのが面白いことです。それは、矢澤孝樹氏が1位にしたウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(WCM)と、平林直哉氏が1位にしたチャイコフスキー交響楽団です。どちらも、ほかの29人は1点でも票を入れた人はいないのですから。
まあ、矢澤氏は古楽のオーケストラを押していますし、平林氏はその著作でフェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団(現チャイコフスキー交響楽団)を世界で一番のオーケストラと公言して押している人ですからこれは当然でしょうなぁ。ただ、WCMはアーノンクールのオーケストラでしたから主のいなくなったこのオケは自然消滅するのではないでしょうかね。また、チャイコフスキー交響楽団はフェドセーエフのもと1974年から40年以上も続くコンビですからいまや、オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の記録を抜いています。阿吽の呼吸での演奏が出来るオーケストラなのでしょうが、如何せんフェドセーエフ自身が個性的すぎて熱狂的ファンはいるようですが、一般からは評価されていないのが実情でしょう。