東京バンドワゴン
著者 小路 幸也
発行 集英社 集英社文庫

東京、下町の古本屋「東京バンドワゴン」。この老舗を営む堀田家は今は珍しき8人の大家族。60歳にして金髪、伝説のロッカー我南人。画家で未婚の母、藍子。年中違う女性が家に押しかける美男子、青。さらにご近所の日本大好きイギリス人、何かワケありの小学生までひと癖もふた癖もある面々が一つ屋根の下、泣いて笑って朝から晩まで大騒ぎ。日本中が待っていた歴史的ホームドラマの決定版、ここに誕生。---データベース---
この本、友人からの頂き物です。どこかできいたことがあるタイトルだなぁ、と思ったらこの小説ドラマ化されていたんですなぁ。ネットで調べると2013年10月期の土曜ドラマということでした。残念ながらテレビとは殆ど無縁の生活をしているので全く未聴でした。古本屋の物語ということで、暫く前に読んだ「ビブリア古書堂の事件手帖」が面白かったのでその流れで読んでみました。そうしたら面白いこと。舞台は古本屋ですが、人生模様は往年の「時間ですよ」とか「寺内貫太郎一家」の流れなんですなぁ。この物語はシリーズになっていて、これは序章の様なものですが、春夏秋冬の出来事を今は無き妻の語りによって纏めています。今で言う「三井のリハウス」の樹木希林の語り口ですな。
この本の章立てです。
春・百科事典はなぜ消える 4月末
夏・お嫁さんはなぜ泣くの 7月半ば過ぎ
秋・犬とネズミとブローチと 10月
冬・愛こそすべて 12月10日 - 12月20日
というストーリーで構成されています。小説の方は冒頭に登場人物の一覧が掲載されています。何しろ登場人物が膨大で、これが無いと人間関係が中々理解出来ません。実際、この本を読みながら何度登場人物の一覧を見たことやら・・・
お話の舞台の東京バンドワゴンは、明治時代から続く東京の下町の古書店とその一部を改造して作られた今時のカフェです。登場人物はその古書店を経営している家族で、平成の世には珍しい、4世代同居という大所帯です。次から次へと家族それぞれに関する事件が起きていきます。それぞれのストーリーの中にちりばめられているエピソードが、後から関連してくるという仕掛けで連作短編は上手く繋がっています。
幽霊のおばあちゃんが語ると言う組み立てで、この一家の食事の時の会話は誰が何を話しているかというのがはっきり書かれていません。センテンスは「 」の羅列で脈絡がありませんが、こうすることで、大家族のわいわいと話しながらの食事風景が目に浮かびます。
解説を百々典孝氏が書いているのですが少々フライイング気味で、次作の「シー・ラヴズ・ユー」にまで触れています。調べると今年の4月時点までに12冊刊行されています。誰もが際立った個性で描かれていて、尚かつ事件を持込んできてという展開で、大家族ならではのアットホームさと、適度な推理小説の要素を併せ持っていて、飽きさせずに読ませます。テレビドラマでは青が主人公のように描かれていますが、原作では堀田家の誰もが主人公という展開で自由なストーリー展開が楽しめます。
珍しくYouTubeに映像がアップされていましたので貼付けておきます。ただし、天地左右がカットされ、音声もややピッチが早くなっています。第1話は原作にほぼ忠実です。