徒目付の指-口入屋用心棒 31
著者 鈴木 英治
発行 双葉社 双葉文庫

母の田津と護国寺に参詣した帰り途、頭巾を被った侍に声をかけられた定廻り同心樺山富士太郎は、湯瀬直之進の亡骸が見つかったと告げられ驚愕する。だが、急を知らせに小日向東古川町の長屋に走った田津の前に現れたのは、当の直之進だった。忽然と姿を消した富士太郎の行方を追う直之進と中間の珠吉。富士太郎を誘き出した謎の侍の狙いは何なのか、そしてその正体とは!?人気書き下ろしシリーズ第三十一弾。---データベース---
前巻の最後で、冨士太郎の母親の田津が直之進の長屋に飛び込んでくるという突飛な描写があったのですが、それがこの巻の冒頭に繋がっています。そういう意味では繋がっているのですが、事件の性格からするとこの巻より新シリーズの始まりという体裁です。
ただ、定廻り同心樺山富士太郎が勾引されるという設定は前にもあり、またかという印象です。非番の日の出来事ということで珠吉が側にいないのは分りますが、同心という立場では如何にも不用心です。また、冨士太郎は徒目付に勾引されるのですが、最後にその徒目付の中指が特徴的なことからタイトルも「徒目付の指」とはなんとも安直な付け方です。読んでいる途中で、この男が殺されることが分ってしまいます。全体に探索シーンが長過ぎ、それも、直之進、珠吉が探索するシーンと佐之助が探索するシーンが交互に描かれて最終的に同じ的に辿り着くと言うパターンはちょっとくどく感じます。
まあ、長いシリーズ物が陥るパターンですが、この巻は新事件の立ち上がりということを加味しても金太郎飴的な展開で、斜め読みしてもストーリーが分らなくなるということは皆無です。事件も冨士太郎の父親時代の米絡みの不正にかかわることで、以前の展開と類似しています。もうちょっと捻りが欲しいなぁ。