クラシック名曲初演&初録音事典
著者 平林直哉
発行 大和書房

世界初の音楽事典!作曲家74人374曲の“初めて”を網羅。巨匠・名曲は、かく生まれり。--データベース---
何ともマニアックな一冊です。多分こういう著作は平林氏以外には考えられません。よくぞ調べたりといったところですが、出版が2008年ということもあり、その後の発掘やら新発見などで少々データが古くなっている所もあるようです。その点は著者も承知のようで、ネットで修正記事も時折見かけます。盤鬼・平林直哉氏は「グランドスラム」というレーベルを主催しているように、彼の名盤復刻にかける情熱にも畏れ入るところがありますが、それをこういう形で書籍に残したことは経緯を評するに値する仕事です。
クラシックのレコードはステレオ時代になってから接してきた小生で、若かりし頃は古い録音には見向きもしなかったのですが、年を取ると折りに触れ古いものに目が向き、特にCD時代になってからは復刻が容易くなったのかよく目にしました。最近ではネットでそういう音源を目にする機会も多く、わざわざコレクションしなくても手軽にそういう演奏に接することが出来ます。良い時代になったものです。
1960年代はリアルタイムでショスタコーヴィチなどが活躍していましたから、彼の新作の交響曲はいち早くレコードで買い求めていました。まあ、現代音楽にも興味があったことも一助したのでしょうが、この本で紹介されているコンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団のショスタコの交響曲第13番「バビ・ヤール」は安価なエヴェレスト盤で発売されたこともあり、飛びついて買った記憶があります。
ただ、取り上げている曲目には偏りがあり、ロック音楽はかなり少なく、バッハのロ短調ミサなども含まれていませんし、ハイドンに至っては一曲も触れられていないのが残念です。まあ、記録が残っている作品を中心に編成したとは思いますが、室内楽や器楽曲それに歌曲等もほとんど見かけません。
初演の方は作曲者が関わっているものがかなりあるのですが、オーケストラ作品だとやはり別の指揮者やオーケストラの演奏ということになってしまいます。室内楽や器楽曲では作曲者自ら演奏ということもかなりあるでしょう。手元に有るEMIが1997年に発売した「Centenary Edition 1897- 1997」が手元に有るのですが、その中にはグリーグやサン・サーンス、ブラームスが自作自演した演奏が含まれています。そういったものまで取り上げたらきりがないのでしょうが、補完の意味でも続編が発売されることを個人的には期待してしまいます。
この本はコラム記事も面白いのですが、最後に初演魔というものがあります。この本の中でも頻繁に登場しているのがストコフスキーとオーマンディです。二人ともSP時代から活躍している指揮者ですら録音が多いのも分りますが、新しい物好きだったんでしょうなぁ。世界初演ではありませんが、個人的にはショスタコの交響曲第7番「レニングラード」でアメリカ初演をめぐってストコフスキーとトスカニーニ、それにクーセヴィッキーが争ったのが面白いと思いました。そして、イギリスではヘンリー・ウッドだそうで、他には現代音楽が得意だったハンス・ロスバウト、ヘルマン・シェルヘン、パウル・ザッハーなどもかなり手がけているようです。で、日本では何といっても岩城宏之でしょう。なんと、生涯に2000を超える作品の初演をしているそうです。
さて、この本の修正記事が下記で参照出来ます。
また、この本に関するCDも以前は発売されていたようです。
