演奏曲目
1.ヴィヴァルディ/合奏協奏曲「四季」
2.メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲変ホ長調Op.20
3.チャイコフスキー/弦楽セレナーデハ長調Op.48
ヴァイオリン・ソロ/日比浩一
日時 2015年8月30日(日) 14:30開場、15:00開演
入場 無料
会場 名古屋芸術大学東キャンパス3号館ホール
午前中まで雨が降っていましたが、コンサートの開始時間にはようやく雨があがっていました。今日は以前から楽しみにしていた室内楽コンサートに出掛けました。「NUA Strings」は「Nagoya University of Arts Strings」の略です。2008年に結成されたアンサンブルで、名古屋芸術大学・同大学大学院弦楽器専攻の卒業生で構成されていました。現在は現役の学生も参加しているようです。この曲目を見て下さい。とても贅沢なプログラムです。そして、ヴァイオリンのソロを名フィルのコンサートマスターの日比浩一さんが務めるのも楽しみの一つでした。
コンサートはいきなり、ヴィヴァルディの「四季」で始まりました。多分イ・ムジチのコンサートならトリを務める曲でしょう。その「イ・ムジチ」今年も来日します。この地方では10月25日に豊田市コンサートホールで公演がありますが、予想通り最後の演目になっています。しかし、パンフレットの写真を見ると男性のようですが、今はだれがコンサートマスターかは紹介されていません。調べてみると「アントニオ・アンセルミ」だそうです。知りませんでした。
名フィルではヴィヴァルディの四季なんて定期のプログラムには載らないでしょうから、これは貴重な体験です。構成はチェンバロも含めて16名の演奏で、日比氏が半円の中心に位置して立ったままで独奏というスタイルで演奏されました。メンバーにはお尻を向けた状態でのソロ演奏ですから、ボウイングのタイミングだけで日比氏がリードしてアンサンブルを纏めているのが分ります。
スタイルは現代楽器による演奏です。まあ、往年のイムジチと同じですわな。テンポはどちらかというとゆったりしたアーヨに使い演奏で、曲の最後はポルタメントで締めくくるというスタイルです。この団体でヴイヴァルディの「四季」を演奏するのは初めてという事でしたが、中々の演奏です。ただ、有名曲という事も合って、ミスがあると直ぐ分ってしまうのは辛い所です。日比氏は、所々に装飾音を折り込んでのソロを披露してくれました。
2曲目はちょいと渋い曲目ですが、メンデルスゾーンの室内楽曲の中ではよく知られた曲です。この曲をオリジナルの形で生で聴くのは初めてでした。ここでのコンサートマスターはこのオーケストラの音楽監督でもある「森典子」が務めました。プログラムにも書いてありますが、ちった3日の練習で臨んだという事で第1楽章はちょっと固さが目だち、ヴァイオリンの音が出ていませんでした。しかし、曲が進むに連れてその固さも取れて音楽がスムーズに流れだします。アンコールピースにもなる第3楽章はちょっとリズムが重く残念でしたが、コンマスは演奏が走りすぎないように必至に足でテンポを保っていたのが印象的でした。
そして、このコンサートのトリはチャイコフスキーの「弦楽セレナード」です。これはサイトウキネンが得意としている曲ですな。でも、アンコールピースで第1楽章はよく演奏されますが、全曲は中々取り上げません。ここでは、このオーケストラの全メンバーが総出演で演奏されました。コンサートマスターはここでも日比さんが担当し、今度はコンサートマスター席で全体を纏めます。今度は全楽員からコンサートマスターの一挙一動が確認出来ます。最初の一音から演奏に惹き込まれました。7ー6ー5ー4ー2の編成のオーケストラは指揮者無しの演奏ですが完璧なアンサンブルです。
第2楽章のワツとなんか、うっとりしてしまいます。チャイコフスキーのオーケストレーションのマジックなんでしょうが、低弦はチェロが4挺、コントラバスが2挺ですが随分とぶ厚い響きに聴こえます。アタッカではないですが、第3楽章と第4楽章は倍音を響かせた終止の和音から、直接第4楽章に繋がります。この流れもスムーズです。このアンサンブル、コンマスの他チェロには同じ名フィルの小笠原恭史氏が参加しています。また、コントラバスにも2007年に退団した松山大樹しも加わっていてそのためオーケストラが締まっています。久しぶりに充実したコンサートを楽しませて貰いました。
こんな素晴らしいコンサートなのにお客さんが少なかったのはちょっと残念でした。