ホルスト・シュタインのチャイコフスキー交響曲第5番 | geezenstacの森

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ホルスト・シュタイン
チャイコフスキー交響曲第5番


曲目/チャイコフスキー
交響曲第5番ホ短調OP.64
1.第1楽章 Andante - Allegro con anima - Molto piu tranquillo 14:18
2.第2楽章 Andante cantabile, con alcuna licenza - Moderato con anima - Andante mosso - Allegro non troppo - Tempo I 11:56
3.第3楽章 Valse. Allegro moderato  6:14
4.第4楽章 Finale. Andante maestoso - Allegro vivace (Alla breve) - Molto vivace - Moderato assai e molto maestoso - Presto  12:37

 

指揮/ホルスト・シュタイン
演奏/バンベルク交響楽団

 

録音/1973

 

独ミラーインターナショナル MER 204 (プレス英DAMONT)

 

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 海の向うでも名曲全集のような企画があったようで、これは「STEREO GOLD AWARD CLASSICS」というシリーズの中の一枚です。もっとも、このシリーズはどうも大手ではなく、中小輸入業者が販売していたようで、日本でも一時流通した事があります。国内では日本語のジャケットで、「ステレオ 豪華ライブラリー」として主に駅売りや書店のワゴンセールで販売されていました。ちなみに、国内で販売されていたものも「A Miller International, Germany, Production Made in England 」と表記されていましたので多分同じ原盤を使用していたのでしょう。丁度、レコード店経由で「西日本ドリーム」という業者が全国で輸入盤セールを開催していた時期とダブります。ただし、確認出来たのは20枚ほどで、ベートーヴェンやブラームスなどの交響曲はなく、交響曲はこのチャイコフスキーの5番とドヴォルザークの「新世界(バーノン・ハンドレー/LPO)」だけというお粗末なものでした。国内ではこの演奏がCD化されたという記憶がありませんが、ヨーロッパでは1989年に発売されています。

 

 ホルスト・シュタインはヨーロッパでは歌劇場からの叩き上げの指揮者で下積みもそれだけ長かったのですが、そういう時代からの繋がりで、結構マイナーなレーベルにレコーディングしていたようです。このシリーズでも他に伴奏ものでグリーグ、チャイコフスキー、メンデルスゾーンの協奏曲を入れています。このレコードには録音データの記載が無かったので、ネットに記載されているものを使用しました。これを信用するならデッカの録音と平行して、マイナーレーベルにもせっせと録音をしていた事になります。オーケストラはバンベルク交響楽団が中心ですが、一部ハンブルク北ドイツ放送交響楽団も振っています。1972年にはハンブルク国立歌劇場音楽総監督になっていますからその頃の録音でしょう。何にも増して、ホルスト・シュタインの名声は1970年にバイロイトでワーグナーの「ニーベルングの指環」全曲を指揮(登場は1962年)してから一気に高まり、1970年にはウィーン国立歌劇場第一指揮者にも就任しています。

 

 さて、そういうマイナーなルートで発売された発売されたものでも、さすがに指揮者がしっかりしていると出来上がりの音楽はすこぶる完成度の高いものとなります。冒頭のくらいバスーンの響きも見事です。ここでは、ムラヴィンスキー並みにくっきりと旋律線を吹かせています。そして、ホルスト・シュタインの棒は思いのほか最初は淡々と音楽を築いていきます。しかし中盤辺りから興に乗ってくると次第にテンポを揺らしてロマンティックな表情付けに変わっていきます。まあ、ホルンが少々野暮ったい響きを出すところがありますが、それ以外はいたって快調です。まあ、マイナーですからセッションにそんなに時間をかけてはいないでしょうが、かえってそれが統一感あるサウンドを生んでいます。ロシアのオーケストラのような重厚さはありませんが、金管はかなり健闘しています。バンベルク響は、カイルベルト亡き後はヨッフムがサポートしていた時代まではよかったのですが、やはり、ケルテスの就任が不慮の事故で白紙に戻ってからは苦難の時代がありました。ここではその最良の遺産時代の響きを聴く事が出来ます。その第1楽章です。

 

 

 第2楽章も、音楽自体はこってりしたものですが、シュタインはそれを感じさせる事無く爽やかさを伴った表情付けで、重く暗くなる寸前で踏みとどまった演奏を繰り広げています。そんなことで、この演奏は夏に聴いても息苦しくなりません。(^▽^;)

 

 

 第3楽章は終始軽やかなテンポで流していきます。元々この楽章はワルツですから、ひょっとして一番シュタインの作る音楽はこの楽章に合っているのかもしれません。とても優雅なワルツです。指示はアレグロ・モデラート(ほど良く快速に)ですが、聴感上はアンダンティーノぐらいです。主題の提示が終わると本来の指示に戻ります。まあ、ムラヴィンスキーの演奏などを聴き慣れているとちょっと戸惑うかもしれません。そして、又最後は最初のテンポに戻ります。

 

 第4楽章はあっさりと開始されます。重量感はあまりありません。そういう意味ではちょっと荘厳さには欠けます。感じとしては全編Allegro vivaceのような疾走感です。最近まで、チャイコフスキーやシベリウスの交響曲はどうも暑苦しすぎて夏場は聴く事がほとんど無かったのですが、こういう演奏なら安心して聴くことができます。まあ、終結部前の大きなためもまったくありませんから、ファーストチョイスとしてはお勧め出来ませんが個人的には結構気に入っています。

 

 ホルストシュタインの録音はデッカがボックスセットで発売していますが、その他の録音はあまり顧みられる事がありません。上記のシリーズではありませんが、チャイコフスキーのバレエ音楽の録音もあるようです。ホルストシュタインは日本と関係の深かった指揮者ですから、タワレコも大手ばかりの音源に注目しないで、こういうマイナーなものを発掘してほしいなぁと思います。