バレンボイム、シフ&ショルティ
モーツァルト:ピアノ協奏曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲
曲目/モーツァルト
2台のピアノのための協奏曲変ホ長調 K.365
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
ゲオルク・ショルティ(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
3台のピアノのための協奏曲ヘ長調 K.242
ゲオルク・ショルティ(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
ゲオルク・ショルティ(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
録音/1989/06/18 ロイヤル・アルバート・ホールダニエル・バレンボイム(ピアノ)
ゲオルク・ショルティ(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
TELDEC 090317077765

この映像は、ジャクリーヌ・デュ・プレの基金による演奏会のために、元夫のダニエル・バレンボイムやアンドラーシュ・シフに声をかけ、モーツァルトの2台用及び3台用のピアノ協奏曲を演奏し、さらに第20番のピアノ協奏曲をショルティの弾きふりで演奏した名女流チェリストのジャクリーヌ・デュ・プレの追悼コンサート「ジャクリーヌ・デュ・プレ アピール コンサート」の模様を収録したものです。コンサートは1989年6月18日にロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホール(RFH)で開催されました。このコンサートの主役一人はバレンボイムということで、映像はテルデックが収録したものです。ただし、この直後に収録されたCDはデッカから発売されていますし、ショルティはデッカの専属ということで弾き振りされたピアノ協奏曲第20番はこのレーサーディスクには収録されていません。その辺がこのコンサートの権利関係の妥協点だったのでしょう。
その時はショルティがピアノを弾いているので珍しいと思い購入したのですが、多分このレーザーディスクは権利関係の問題で国内発売されなかったのではないでしょうか。小生が入手したのも輸入盤でした。ショルティはシカゴ交響楽団の指揮者として有名でしたが、元々は1942年のジュネーヴ国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝しており、ピアニストとしての実績も持っていました。2台のピアノのための協奏曲は、ピアノがバレンボイムとショルティ(および指揮)、3台のピアノのための協奏曲は、ピアノがバレンボイム、シフ、ショルティ(および指揮)という豪華メンバーによって、これがモーツアルトだ、といわんばかりの典雅な演奏を繰り広げています。3人とも超有名な演奏家ではあるが、ここでは3人が心を一つにして、モーツアルトのそれは美しい世界を描いて見せてくれています。「2台」の活気のある雰囲気、それに「3台」の幽玄とも取れる静かで、透明な美を、空間いっぱいに繰り広げています。ショルティは本職のピアニストと言われても少しもおかしくない名演奏を聴かせてくれるのですが、オーケストラ譜とは違ってピアノパートまでは暗記出来なかったようで譜めくりの人についてもらっています。さすが弾き振りということで、指揮棒は仕えませんわな。2台のピアノのための協奏曲では、ピアノは対面に置かれ、ショルティは観客席を背負った形で指揮をしながらの演奏、たいするバレンボイムは観客席に向かう形で奥に座り、ショルティの指揮をみながらの演奏です。バレンボイムは現役のピアニストでもありますからさすがに暗譜で演奏です。ここは先輩に譲った形でしょう。ショルティのピアノに合わせる形で間合いを取りながらの演奏です。ゆっくりとしたテンポで一音一音を慈しむようなタッチはに思わず聴き惚れてしまいます。そう、これはデュプレへの追悼演奏会なのです。
2台のピアノのための協奏曲も素晴らしいのですが、圧巻はオールスター・キャストの3台のピアノのための協奏曲でしょう。こちらはピアノを観客席を背負った形にピアノが3台並べられました。左からショルティ、バレンボイムそしてシフのピアノが並びます。スタインウェイのピアノが3台並ぶのも壮観ですが、さぞかし調律は大変だったでしょうなぁ。一応主導権はショルティがとっていますが、全体のタイミングや呼吸を合わせる仕草では中央のバレンボイムが気配りをしています。そういう意味ではシフが一番ゆとりをもってピアノに向かっています。昔、カラヤンがエッシェンバッハやユストゥス・フランツと組んだ映像が残っていますが、そちらはスタジオ収録ということも合って3台のピアノがオーケストラと平行に並んでカラヤンがオーケストラを横から指揮しているというカメラワークだったのですが、実演ではこういう形が無難でしょうな。
最近は指揮者もピアニスト出身という人材が少なくなって来ているのでなかなかこういう組み合わせは出来ないでしょう。現役ではアシュケナージか、バレンボイム、エッシェンバッハぐらいがこういう形で演奏出来るぐらいではないでしょうか。
この映像。レーサーディスクの形以外では商業発売されたことは無いようです。ただ、バレンボイムがピアノ協奏曲全集をテルデックに再録音した際のボーナスDVDとして、この2曲の映像が収録されていたということですからそういう意味ではご覧になった人も多いのではないでしょうか。ショルティの映像はかなり残っていますが、デッカとの専属契約だったのでそれ以外のレーベルからこうしたものが発売されていたのは貴重でしょう。ここでは3台のピアノのための協奏曲を当時の映像で振り返ってみましょう。ショルティの弾き振りの映像が残っているのは多分これだけではないでしょうか。