ゴールウェイ/C.P.Eバッハのフルート協奏曲 |
曲目/ Carl Philipp Emmanuel Bach
Concerto for Flute in G major, Wq.169/H 445 /1755
1. Allegro Di Molto 11:09
2. Largo 8:51
3. Presto 5:52
Concerto for Flute in A major, Wq.168/H 438/1753
4. Allegro 5:54
5. Largo Con Sordini, Mesto 8:58
6. Allegro Assai 5:20
Concerto for Flute in D minor, Wq.22/H 426/1747
7. Allegro 7:09
8. Un Poco Andante 7:45
9. Allegro Di Molto 6:06
フルート/ジェームス・ゴールウェイ
指揮/イェルク・フェルバー
演奏/ウェルテンベルク室内管弦楽団
指揮/イェルク・フェルバー
演奏/ウェルテンベルク室内管弦楽団
録音/1989/11/23-25 福音派教会、シュヴァイゲルン
P:ティエ・ヴァン・ゲースト
E:ティエ・ヴァン・ゲースト
E:ティエ・ヴァン・ゲースト
RCA 88697828122

最近のソニーの廉価ボックスの攻勢には凄いものがあります。2011年の春にジェームズ・ゴールウェイの12枚組ボックスセットが発売されたのはご存知でしょうか。このセット、入荷量が少なかったのか、限定盤でしたからあっという間に市場から消えてしまいました。日本のメーカーはあまり売れないと踏んだのでしょうかね。この中には小生の知る限りではまだCDになっていないものが含まれています。ゴールウェイがベルリン・フィルを退団してソリストとしてのスタートを切ったのは、1975年のことでした。それ以来、彼のアルバムはRCAからリリース、最近まで、ほぼ「専属アーティスト」という感じで、このレーベルに貢献してきていました。しかし、ソロ活動を始めた当初は、EURODISC(オイロディスク)など他のレーベルにも録音は行っていましたし、LP時代にはそういう音源が米ノンサッチなんかにも流れていました。そのEURODISCはすでにBMGの傘下に入っていましたから、当然SONYからも出すことが出来ます。そこに残した数枚のアルバムの中の、1987年の録音、テレマンの組曲と2曲の協奏曲を収録したものの中から、ト長調の協奏曲が多分初めてCDになってます。まあ、そういう意味ではマニア垂涎のボックスではありましょう。このセット、1970年代のアナログ録音も含まれますが、大半はデジタルでRCAに90年代までに録音されたものを集大成し、時代別にコンピュレーションしていますが、この一枚は既存の単独で発売されていたレギュラー盤をそのまま収録しています。

バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルは1714年に生まれました。長男とは違って独立心の強いエマヌエルは豊かな才能だけでなく、社会性や経済感覚にも優れ、ベルリンのフリードリヒ大王の宮廷音楽家を経て、彼の名付け親だったテレマンの後を受けて、ハンブルグの音楽監督にまで上り詰めた人物です。そして、これらの協奏曲はその時代に書かれ、元々はチェンバロのために書かれたものです。この中で一番知られているのはニ短調(Wq22)の協奏曲です。この協奏曲の編曲はフレデリック大王の宮廷で近付きとなったプロシアのアンナ・アマーリア王女によってなされました。これを機にバッハは残りの協奏曲もフルート用に編曲したようです。さらにその中の2曲(Wq.168.169)はチェロ・ソナタ用にも編曲されています。バッハの自信の作品であったということでしょう。
ここで、ゴールウェイをサポートしているのはイェルク・フェルバーの指揮するウェルテンベルク室内管弦楽団です。古くからのリスナーならこの組み合わせのレコードがVox-Turnaboutレーベルから盛んに発売されていたのを覚えているでしょう。決して古楽で演奏する団体ではありませんでしたが、レコード時代には奇をてらわないオーソドックスな演奏で個人的には大変満足していました。ゴールウェイがここの録音に彼らを指名したのはどういう経緯があったか知りませんが、この組み合わせは成功していると思われます。ゴールウェィのフルートに古楽奏法は似合いませんからね。まあ、現代的解釈によるC.P.Eバッハのフルート協奏曲集といえます。
ゴールウェイのフルートは音色が明るいので、これらの協奏曲をいとも簡単にやすやすと吹いています。最初に演奏されるのはト長調(Wq169)の協奏曲ですが、そのめまぐるしく変化する主旋律は原曲がチェンバロのための作品だということを感じさせますが、ゴールウェイはそういうメロディでも、容易く演奏してしまいます。第1楽章ではその明るいアレグロがまるでモーツァルトの世界の様な響きで、聴く者を温かく包み込んでくれます。ただ、第2楽章になるとヴィヴラートをかけた音色がどうも古典の様式とは違うなぁと感じてしまいます。もう、これはゴールウェイを聴くものだと割り切った方がいいのでしょう。第3楽章は早いパッセージでゴールウェイの黄金のテクニックを満喫することが出来ます。
ゴールウェイのフルートは音色が明るいので、これらの協奏曲をいとも簡単にやすやすと吹いています。最初に演奏されるのはト長調(Wq169)の協奏曲ですが、そのめまぐるしく変化する主旋律は原曲がチェンバロのための作品だということを感じさせますが、ゴールウェイはそういうメロディでも、容易く演奏してしまいます。第1楽章ではその明るいアレグロがまるでモーツァルトの世界の様な響きで、聴く者を温かく包み込んでくれます。ただ、第2楽章になるとヴィヴラートをかけた音色がどうも古典の様式とは違うなぁと感じてしまいます。もう、これはゴールウェイを聴くものだと割り切った方がいいのでしょう。第3楽章は早いパッセージでゴールウェイの黄金のテクニックを満喫することが出来ます。
2曲目のイ長調の協奏曲も明るいアレグロで開始されます。そして、これもさらさらと流れる小川のようによどみなく旋律が流れていきます。バックのオーケストラも同じ様な調子でころころし跳ねる様な音色です。そういう意味では馬が合っています。ただ、聴く方としては何処か音楽が上滑りで、ただ奇麗な音楽を聴いているだけという印象がなくもありません。第2楽章は、珍しく陰鬱なラールゴの音楽になっています。このCDの中でひょっとしたら一番聴きどころの楽章かも知れません。まあ、この記事を書いている今現在台風の接近で空はどんよりと曇り今にも大粒の雨が降り出しそうな空模様ですから、そういう気分にこの音楽がマッチしているのかもしれません。どういうわけかここではヴィヴラートがあまり気になりません。
最後のニ短調(Wq22)の協奏曲は、この中では一番古い年代に作曲されたものですが、アマリーア王女がこの曲をフルート用に編曲したくなった気持ちが理解出来る様な魅力的な旋律に溢れています。ここでもゴールウェイのフルートは春の草原の上を吹き抜ける爽やかな風のように軽やかなフレージングで駆け抜けていきます。これがランパル当たりだともう少ししっとりと落ち着いた響きで、気品みたいなものを感じる事が出来ますが、ゴールウェイはまるで乙女の初恋の心持ちなんでしょう、ふわふわしています。
フルート好きの人には珍しい協奏曲も含めてたまらないボックスセットです。参加している演奏者のリストを見ると、近代曲で岩城宏之氏がロイヤルフィルを振って録音した曲も収録されています。発売時にはあまり話題にならなかったようですが、今となっては氏の貴重な遺産ともいえる録音が含まれている点もお宝ボックスセットといえますね。