1. 第1楽章 Allegro molto appassionato 13:16
2. 第2楽章 Andante 08:10
3. 第3楽章 Allegretto non troppo - Allegro molto vivace 06:51
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
4. 第1楽章 Allegro moderato 18:52
5. 第2楽章 Canzonetta (Andante) 06:43
6. 第3楽章 Finale (Allegro vivacissimo) 10:23
ヴゥイオリン/川久保賜紀
指揮/下野竜也
演奏/新日本フィルハーモニー交響楽団
録音/2004年4月12-14日 すみだトリフォニーホール
2. 第2楽章 Andante 08:10
3. 第3楽章 Allegretto non troppo - Allegro molto vivace 06:51
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
4. 第1楽章 Allegro moderato 18:52
5. 第2楽章 Canzonetta (Andante) 06:43
6. 第3楽章 Finale (Allegro vivacissimo) 10:23
ヴゥイオリン/川久保賜紀
指揮/下野竜也
演奏/新日本フィルハーモニー交響楽団
録音/2004年4月12-14日 すみだトリフォニーホール
Avex Classics AVCL25018

最近はSACDで再発されましたが、所有するのは初出のハイブリットダイプのものです。ただこのCD、世間では悪名高いコピーコントロールCDです。このコピーコントロールCD、クラシックの世界ではこのエイベックスとEMIだけが発売しましたが、評判がよく無くて絶滅しましたね。幸い我が家のブレーヤーでは一応ちゃんと再生出来ましたが、世の中にはせっかくこのCDを買ってもちゃんと再生してくれなかった人もかなりいたという話しです。
そんなわけでこのCDが存在する訳ですが、もともとがハイブリッドCDなので音質的には十全ではありません。そういう前提でこのCDを聴いていますが、普通のCDプレーヤーしか持っていない人はこのCDを必ずしも100%のキャパでは聴いていないという事になります。本来、この場で書く事ではありませんが、小生は幸いにもパソコンはマックの環境で作業していますから、このCDを簡単にリッピング出来ます。そんなことで、リッピングソフトを使って一度AIFFファイルに変換し、それをCD-Rに書き込んで聴いています。それで、分かった事ですが、一度デジタルで取り込んだものをCD-Rに焼いた方がオリジナルのCDよりも音がいいという事です。これは多分余分なデータが書き込んであるCCCDハイブリッド盤の仕様が、一般のブレーヤーには何処か再生の負担になっているという事なのでしょう。そんな事で、オリジナルを上回る音質で聴くことができます。ところで、この録音、現在はCCCDが廃止になったので、改めてAVCL-25745という番号でハイブリッドSACDで発売されています。
さて、本題のこのCDです。ヴァイオリン協奏曲としては王道のカップリングです。デビュー・アルバムにこの組み合わせを持ってくるのは相当の自信があるのか、一発屋のメモリアルかのどちらかなんでしょう。まあ、この場合はメーカーのバックアップもあってセールス的に成功したという意味では、前者になったといえるでしょう。彼女の場合は、2001年サラサーテ国際ヴァイオリン・コンクール優勝していて、その余勢を駆って2002年の第12回チャイコフスキー国際コンクール最高位入賞(1位なしの2位)に輝いています。同時に、ロシア作曲家協会による「現代音楽の優れた演奏に対する特別賞」受賞も受賞するというおまけがつきました。そういうことでは、満を持してのデビューという事になります。
思えばチャイコフスキー・コンクールを登竜門としてデビューした日本人ヴァイオリニストは1962年3位の久保陽子を筆頭に、1966年2位潮田益子、3位佐藤陽子、1970年2位藤川真弓、1978年5位清水高師、1982年2位加藤知子、そして1990年日本人として初めて優勝した諏訪内晶子、1994年5位横山奈加子、そして2002年2位の川久保賜紀と続きます。この後は2007年に2人目として神尾真由子が優勝しています。しかし、これらの中でメンチャイでCDデビューしたのは多分川久保賜紀が初めてではないでしょうか。そういう意味ではインパクトがあったと思います。
{メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲}
歴代の大家たちは大体第1楽章を12分から13分で演奏しています。中にはハイフェッツなんかは11分という驚異的な速いテンポで演奏しているものもありますが、小生は好きではありません。上のリストの最後にあげた、ミシェル・オークレールの演奏が小生のディフェクト・スタンダードなのであまりにも遅いものも正直いって、だれてしまって聴く気がしません。この川久保賜紀の演奏は許容範囲のうちでしょう。いま捜してみても見つからないのですが、前橋汀子の演奏するメンデルスゾーンはあまりにも遅いので一度聴いてお蔵入りです。録音が2004年という事で、使っている楽器は1707年製ストラディヴァリウス「カテドラル」のはずです。この楽器は南カリフォルニアのマンデル・コレクションから貸与されていました。そういうこともあるのでしょうか、音に深みがあり伸び伸びとした響きを堪能する事が出来ます。
演奏者 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 |
川久保賜紀 | 13:16 | 08:10 | 06:51 |
西崎崇子 | 13:41 | 09:26 | 06:29 |
諏訪内晶子 | 13:03 | 08:25 | 06:10 |
庄司紗矢香 | 14:03 | 08:23 | 06:54 |
ミシェル・オークレール | 11:57 | 07:31 | 06:10 |
歴代の大家たちは大体第1楽章を12分から13分で演奏しています。中にはハイフェッツなんかは11分という驚異的な速いテンポで演奏しているものもありますが、小生は好きではありません。上のリストの最後にあげた、ミシェル・オークレールの演奏が小生のディフェクト・スタンダードなのであまりにも遅いものも正直いって、だれてしまって聴く気がしません。この川久保賜紀の演奏は許容範囲のうちでしょう。いま捜してみても見つからないのですが、前橋汀子の演奏するメンデルスゾーンはあまりにも遅いので一度聴いてお蔵入りです。録音が2004年という事で、使っている楽器は1707年製ストラディヴァリウス「カテドラル」のはずです。この楽器は南カリフォルニアのマンデル・コレクションから貸与されていました。そういうこともあるのでしょうか、音に深みがあり伸び伸びとした響きを堪能する事が出来ます。
しかし、このメンデルスゾーンは冒頭が難しいのでしょうかね。どうも最初は自信なさげな感じの出だしです。まあ、それも少しするとスグ波に乗って来て後は彼女のペースで音楽が作られていきます。もう一つ言うなら、オーケストラもこの第1楽章ではただ合わせにいっている様なところが感じられます。もう少しガチにぶつかりあっていく音楽を作った方が良かった様な気がします。それでも、演奏の水準は標準以上の出来ではないでしょうか。この第1楽章の聴き所はやはり、カデンツァでしょう。メンデルスゾーンはカデンツァをきっちり書き込んでいますから、後はヴァイオリニストの技量次第というところがありますが、ここではストラディヴァリウスの美音をたっぷりと聴かせてくれます。
ファゴットの持続音で切れ目無く第2楽章に突入します。この楽章はソロヴァイオリンが活躍する部分ですから、第1楽章とのテンポの比較でいうならもう少し余裕のあるテンポで切々と奏でてもいい様な気がします。その点、先輩に当る諏訪内晶子の演奏の方が聴きごたえという部分では上かなという気がします。ところで、この第2楽章からオーケストラは陰影をはっきり付けてきて尻上がりの好調ぶりを見せて来ます。
第3楽章は第2楽章の中間部の主題を引きずる形で始まりますが、主部に入るオーケストラの強奏がやや腰砕けなのが頂けません。もう少しメリハリを付けてほしかったなぁと思えてしまいます。それでも、その後は独奏ヴァイオリンとオーケストラの掛け合いはなかなか息が合っていて聴かせてくれます。ここではやはり第1楽章を聴いてみましょう。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も冒頭のオーケストラの響きがちょっと平凡で失望します。セッション録音はナクソスのデビュー盤に次いでのものであったのでまだ硬さが抜けなかったんでしょうかね。それでも、今ではサイトウキネンで小沢征爾の代役をこなすまでになっているのですから、成長株の一人でしょう。オーケストラはさておき、チャイコフスキーはそれこそ、コンクールで認められた曲目ですから川久保賜紀が全力で立ち向かっている様が確認出来ます。コンクールでは1位なしの2位とはいえ中国人の陳西(チェン・シィ)と優勝を分け合ったというのは何とも割り切れないものがあったのではないでしょうか。ここではその後の2年間の成長の跡をお披露目する様な演奏を繰り広げています。ちなみにそのコンクールの時の陳西の演奏がYouTubeにありますからきいてみましょうか。バリバリ力任せに弾いていますが迫力はあります。
この剛に対して川久保賜紀は柔のチャイコフスキーで対抗している様な気がします。この繊細さはやはり女性ならではのものでしょう。技術だけはもう負けないレベルにある訳ですから後は表現力だけでしょう。川久保賜紀はジュリアードでの師がドロシー・ディレイ、川崎雅夫ですが、陳西はカーティス音楽院のボストン響のコンマスでもあったジョゼフ・シルヴァースタインが師です。そんな川久保賜紀ですが、ジョン・ウィリアムズの指揮するボストンポップスと共演しているのは何かの因縁なんでしょうかね。
この演奏だけ聴いていれば実にスケールの大きい演奏を展開しています。何の過不足も無いでしょう。技巧的には申し分ありません。でも、この演奏はレコ芸では特選盤になりませんでした。上には上があるという事なのでしょう。ちなみにこちらも演奏時間の比較をしてみましょう。ただし、庄司紗矢香の演奏はチャイコフスキーコンクールで優勝した時のガラコンサートのライブ録音の演奏タイムです。こちらしか持ち合わせていないモンで・・・
{チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲}
そんなことで、比較の意味で、第3楽章を聴いてみましょう。
演奏者 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 |
川久保賜紀 | 18:52 | 06:43 | 10:23 |
西崎崇子 | 19:21 | 06:57 | 11:25 |
諏訪内晶子 | 18:54 | 06:34 | 10:20 |
庄司紗矢香 | 19:39 | 06:33 | 10:57 |
ミシェル・オークレール | 17:24 | 06:03 | 08:44 |
そんなことで、比較の意味で、第3楽章を聴いてみましょう。
とにもかくにも、このCDは売れたようで、喜ばしい事ですがCDを聴く普通のクラシックファンを愚弄している販売方法といえるでしょう。SACDで出すならハイブリッドでなくてちゃんとした形で、また、一般リスナー用に普通のCDでも発売してほしいものです。