講談社 ステレオ世界名曲全集15 | geezenstacの森

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講談社 ステレオ世界名曲全集15

曲目
1.ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調
ピアノ/ピーター・カティン
指揮/コリン・デイヴィス
演奏/ロンドン新交響楽団
2.グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調
ピアノ/ピーター・カティン
指揮/コリン・デイヴィス
演奏/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
3.グリーグ/ペールギュント-第1組曲、第2組曲より「ソルヴェーグの歌」
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
4.シベリウス/交響詩「フィンランディア」
指揮/エリク・トゥクセン
演奏/デンマーク放送交響楽団
5.シベリウス/交響詩「トゥオネラの白鳥」
指揮/トーマス・イェンセン
演奏/デンマーク放送交響楽団
6.シベリウス/組曲「カレリア」より間奏曲、行進曲風に
指揮/トーマス・イェンセン
演奏/デンマーク放送交響楽団

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 早速取り上げるのは、第15巻の「グリーク、シベリウス、ラフマニノフ」です。このレコードで注目したのは、まずはシベリウスです。ロンドンレーベル=デッカにこんなソースがあるのを初めて知りました。元々デッカのシベリウスはモノラル時代に、アンソニー・コリンズのものが全集であり、それにカヤヌスのものが少々あったことぐらいは記憶していました。しかし、トゥクセンとかイェンセンの名前は初めてです。もともと、北欧系の指揮者はレコード時代は冷遇されていました。今でこそ、サラステやサロネン、オラモ、ヴァンスカ、セーゲルスタムが活躍していますが、カラヤン指揮者コンクールで優勝して一躍時の人になったオッコ・カムでしたが、その後はぱっとしませんでした。個人的にはシクステン・エールリンクをFMで聴いて以来ファンでしたが、この人もレコードに恵まれませんでした。デトロイト交響楽団のシェフを10年も務めていたのにその時代の録音はありません。この人は史上初のシベリウスの交響曲全集を1952-54年に完成しています。

 さて、ここで聴くことの出来るトゥクセンの「フィンランディア」は真に心もとない音です。高音は伸びないし、低音部はぶかぶかの音です。エリク・トゥクセンは1903年の生まれで1957年8月28日にコペンハーゲンで亡くなっています。僅か55歳の生涯で、年代的にいえばぎりぎりステレオ最初期に滑り込んでいます。そんなことでネットで検索したら確かにこういう録音がありました。ロンドンのリッチモンド・レーベルでB19053という番号で発売されています。ただ、ハイフィデリティの表示はありますが、ステレオの表示は確認で来ません。他には、チャイコフスキーのスラブ行進曲、グリーグの叙情組曲、それにリストのハンガリー狂詩曲第4番が収録されています。この形のレコードは1959年のリリースのようです。本家デッカからは45回転のEPで、こちらはイェンセンの「トゥオネラの白鳥」とのカップリングで発売されています。どちらかというとイギリスではビートルズのレコードでもそうですが1960年代末までモノラルが主流でした(保守的なんですな)から、当然モノでの発売でした。でも、アメリカはステレオがブームで、勢力を伸ばしつつありましたから、ステレオ盤で投入したものと思われます。

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 一方のイェンセンの「トゥオネラの白鳥」と「カレリア組曲」は中々の好演です。ところが、彼のディスコグラフィなるものに行き当たったら、カレリア組曲は1952年7月、「トゥオネラの白鳥」は1953年7月の録音になっています。当然モノラル録音ということになります。英誌グラモフォンのクラシカルカタログで当たったところ、LP時代にデッカのECRIPSEシリーズで再発されていました。交響曲第5盤と一緒に発売されているところを見るとオリジナルはモノラルです。要するにこの2枚目のB面はすべて疑似ステレオということになります。すべて当たったわけではありませんが、このシリーズ中唯一の疑似ステではないでしょうか。詳しい録音データは全く記載されていませんが小生が調べた範囲ではそういうことになります。それを堂々とステレオとレーベルに謳ってあって、記事ステの表示は何処にもありません。大手メーカーがこんなインチキ商売をしていたとは信じられません。ちなみに、レコードの第3面はカラヤン/ウィーンフィルのペールギュントで、レコードの盤面も、ZALから始まるマトリックス番号5438が振ってあります。ところが湖の第4面はそういうものは無く、国内プレスのSDLBT537の表示があるだけです。ところで、イェンセンはトゥクセン没後の1957年からデンマーク放送交響楽団の常任になっています。そして、1963年に亡くなるまでその任にあったようです。ニールセンの大家だけあって、彼の交響曲は全曲録音していますし、発売はされていませんがシベリウスの交響曲全集も録音しているようです。

 そんなことで、期待した演奏でしたが、疑似ステという結果になって少々落胆です。それでも、おらが国の作品ということもあってカレリア組曲は抜粋ながら中々聴きごたえがあります。当然、グリーグのカラヤンの演奏は申し分ありません。

 さて、ここでもう一つ注目はラフマニノフとグリークのピアノ協奏曲でしょう。いずれもサポートはコリン・デイヴィスです。そして、何とラフマニノフはこの録音が唯一のものなのです。ところがこの録音はレコードとしてはロンドンのSTS(ステレオ・トレジャリー・シリーズ)で再発売されたことはありますが、今までCD化はされていないんですねぇ。最初この顔ぶれを見たときは、はて、こんな録音あったかしら?と思ったほどです。よくよく調べてみたら、存在したんですねぇ。ラフマニノフの方はマトリックス番号がZAL4489/90、グリーグはZRIC4645/6となっています。グリーグの方はOLYMPIAレーベルからCD化されていましたからその存在は確認していましたが、ラフマニノフは知りませんでした。デイヴィスはステレオ初期は中々の引っ張りだこで、EMIやデッカにかなりリレコードを残しています。しかし、ラフマニノフはディスコグラフィを見てもこの一曲、それも、このカティンと組んだこの録音しか残していません。交響曲に至ってはゼロです。これは珍しいことです。で、この録音ですが、よくも悪くも、カティンペースで押し切られていて、デイヴィスの見せ場はほとんどありません。カティンのピアノは速めのテンポでぐいぐいと押し進めていて、ロマン派の香りはあまり色濃くありません。むしろ淡々とした表現でテクニックで突き進んでいます。ケティン自身は第1番はボールト/ロンドン・フィルと録音していて、こちらはかなり市場に流通していますが、どうしてこの第2番はCD化されないのでしようね。不思議です。それでも、この第2番の第3楽章をネットで聴くことができます。興味のある人はアクセスしてみて下さい。


 これに対してグリーグのピアノ協奏曲はカティンはジョン・プリッチャード/ロンドンフィルとEMI系のCFPにも録音しています。音質的にはこちらの方が優れているでしょうが、デイヴィスの初々しいサポートを聴くならばこのデッカ録音になるでしょう。とにもかくにも、今まで未知のデイヴィスの録音を聴けたので満足です。