ファンタジア2000 | geezenstacの森

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ファンタジア2000

曲目/
1. 交響曲第5番ハ短調op.67「運命」より(ベートーヴェン) 2:51
2. 交響詩「ローマの松」より(レスピーギ)  10:18
3. 「ラプソディー・イン・ブルー」より(ガーシュウィン) 12:32
4. ピアノ協奏曲第2番ヘ長調op.102~アレグロ(ショスタコーヴィチ) 7:22
5. 組曲「動物の謝肉祭」フィナーレより(サン=サーンス) 1:54
6. 交響詩「魔法使いの弟子」(デュカス)  9:33
7. 行進曲「威風堂々」op.39より(エルガー) 6:18
8. 組曲「火の鳥」より(ストラヴィンスキー) 9:11

 

ピアノ/ラルフ・グリアーソン 3
   イェフィム・ブロンフマン 4
   ゲイル・ニワ、フィリップ・L.サラバンスキー 5
ソプラノ/キャスリーン・バトル 7
指揮/ジェームス・レヴァイン
演奏/シカゴ交響楽団 1,2,4,5,7,8
  フィルハーモニア管弦楽団 3,6

 

Walt Disney Records 3689472  ソニークラシカル SICC-405
  

 

 このアルバムは1940年に公開された「ファンタジア」の続編として2000年に公開されたものです。実際はそれに先立ち、1999年12月17日にニューヨークのカーネギー・ホールでジェームズ・レヴァイン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で映画とシンクロさせるというライブ・パフォーマンスでプレミア公開されています。そして、正式公開は2000年1月1日から世界中のIMAX劇場で4ヶ月間先行上映されました。そう、元々はIMAXシアター用の大画面向きに製作されていたんですなぁ。3Dではありませんぞ。だから、本当の迫力はDVDやブルーレイでも体験出来ない作品というわけです。ただ、CDとしてのサウンドだけなら現在の5.1chサラウンドで充分体験出来ます。そして、このCDはDSDリマスタリングされていますからより充実したサウンドで楽しむことが出来ます。

 

 

 オープニングを飾るのはベートーヴェンです。それも交響曲第5番の第1楽章です。映画では蝶のような形をした、ペア三角形の物体が善と悪の戦いを繰り広げます。このシーンはIMAXの大画面でしかその迫力は分からないでしょう。そこに付けられたベートーヴェンの音楽は中間部を丸まるカットしています。つまりは主題の提示部とコーダだけで構成された音楽になっています。それでも、映像がつくとこれだけで完結した音楽になってしまうのですからすごいです。そういう部分は上の映像からも感じ取ることが出来るのではないでしょうか。レヴァインのベートーヴェンの交響曲は第3番と第7番ぐらいしか出ていません。そういう意味では貴重なベートーヴェンです。

 

 

 ここではシカゴ響を振っていますが、レヴァインのレスピーギも正式録音がありませんからこれも貴重な音源といえるでしょう。ただ、映画のサントラのための収録ということで、かなりのカットがあります。「カタコンブ」が収録されていませんし、映像に会わせたためにナイチンゲールは鳴きませんし、第3部と第4部のジャニコロの松のつなぎのアタッカも映画用のものになっています。でも、この充実した響きはさすがシカゴ響です。レヴァイン/シカゴ響のローマ三部作を是非とも聴いてみたいものです。

 

 

 のだめでピアニカバージョンが一時もてはやされましたが、やはりピアノの響きも捨てたものではありません。ここでも、短縮版が演奏されています。都会(マンハッタンか?)の忙しそうな人々の生活をコミカルに合わせている。なお、このアニメーションのどこかに、ロイ・ディズニーが隠れているが、探してみよう。

 

 

 まさか、この作品でショスタコーヴィチの作品が使われるとは思いませんでした。それもメジャーな作品ではなくピアノ協奏曲第2番ですからね。原曲があまり知られていませんからあまり分かりませんが、この曲はほとんど手が加えられていません。ネズミが飛び込むシーンの映像にあわせてシンバルが追加されているのが、ほとんどゆいいつの変更でしょうか。なを、このブロフマンはショスタコのピアノ協奏曲をサロネン/ロスフィルとちゃんとセッション録音をしています。

 

 

 多分この作品で映像的に見て、子供から大人まで楽しめるのはこの「動物の謝肉祭」のフラミンゴの映像ではないでしょうか。ここでは盛大にアレンジされた謝肉祭が響きます。

 

 

 さてさて、この「魔法使いの弟子」は映像は1940年のものをデジタルリマスターして使っています。ということは映像にはシルエットでストコフスキーが登場してミッキーと絡むシーンが含まれています。もちろん演奏の方は、レヴァイン/シカゴ響が担当していますから最新のデジタルサウンドが堪能出来ます。まあ、プレミアでもシンクロでライブ演奏しているぐらいですからレヴァインは慣れたもんなんでしょうが、このストコフスキー版ともいえる「魔法使いの弟子」をきっちりフォローしています。まあ、見ての通り、映像に会わせてテンポはかなり延びたり縮んだりしていて、音だけ聴いたら卒倒してしまいそうな演奏です。それにしても、レヴァインは器用なもんです。

 

 

 この「威風堂々」の画像には前曲の「魔法使いの弟子」からの引き続きの映像ということで、ストコフスキーに続いてジェームス・レヴァインも登場しています。まあ、一番アレンジがすごいのがこの曲でしょう。何しろエルガーの「威風堂々」の1番から4番までがごちゃ混ぜに取り入れられています。ここではドナルド・ダックがノアの方舟に動物たちを集める役目をしていますが、そのエピソードをユーモアに上手く纏めています。なを、このエルガーの旋律をユニークな編曲で纏めたのはPDQバッハでおなじみのピーター・シックリー(Peter Schickele)なんです。まあ、現代の冗談音楽の大家ですからこの起用は的を得ています。エルガー以外の編曲はブロードウェイ・ミュージカルではおなじみのブルース・コーリン(Bruce Coughlin)が担当しています。総監督のロイ・ディズニーのセンスの良さが光る人選です。

 

 

 最後を締めくくるのは、ストラヴィンスキーの「火の鳥」です。もちろん短縮版で王女達のロンド→カスチェイの魔の踊り→子守唄→終曲という形で演奏されています。形の上では1919年版の組曲の最後の4曲をピックアップしています。ここでは「火の鳥」は悪役として登場し、森の妖精が破壊された大地を生成させていくという自然輪廻の思想を映像化したものですが、どうにも、宮崎駿作品の影響がありありと感じられるエピソードです。まあ、映像はそれなりに単純化されていますが、音楽は内容が凝縮されていて、なかなか聴かせてくれます。不思議なことに、レヴァインは「春の祭典」と「ペトルーシュカ」は録音していますが、「火の鳥」はこのサントラの録音だけです。そういうことで、これも貴重な音源といえます。

 

 

 このCD、サントラですが普通のサントラと毛色が違うのか、はたまたディズニーが発売元なのでか子供関係のところに分類してあることが多いですね。そして、中身はクラシックということで、ネットでもまともに取り上げているサントラ関係のサイトはありません。もちろん、クラシックの方でも抜粋とか編曲ものということでまともに取り上げていません。まことにもったいないことです。これ。レヴァインにしては上出来の仕事です。もっと評価されてもいい作品ですね。