ホフナング音楽祭1988 | geezenstacの森

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抱腹絶倒のホフナング音楽祭

曲目/
1. チューニングと冒頭の挨拶(楽団長) Tuning & Announcement 0:39
2. ホフナング音楽祭ファンファーレ(レントン) A Hoffnung Fanfare 0:51
3. 大大序曲~4台の電気掃除機のための~(アーノルド) A Grand, Grand Overture 7:28
4. 水道ホースと管弦楽のための協奏曲(L.モーツァルト~デル・マー編) Concerto for Hosepipe & Orchestra 3:12
5. カウント・ダウン地方のバラード(シャグリン) The Ballad of County Down 7:35
6. テイ川の鯨(マクゴナゴール) The Famous Tay Whale 7:05
7. オペラ「カジモドとジュリエッタ」よりアリア(スカルラティナ) "Quasimodo e Guilietta"-Aria 7:35
8. 咳をする人 The Cougher 5:27
9. 序曲「レオノーレ」第4番(ベートーヴェン) Leonora Overture No,4 11:24
10. ロッキンヴァー(スコット) Lochinvar 7:09
11. 人気協奏曲(ライゼンシュタイン) Concerto Popolare 12:55

 

CD2
1. コンサート・マスター The Concert Master 1:40
2. ヴァイオリンと管弦楽のための「恋の協奏曲」(ジョゼフス) Concerto D'Amore for Violin & Orchestra 13:45
3. 序曲「バグパイプはわめく」(ベルグマン,ジョゼフス) Overture "The Heaving Bagpipe" 9:40
4. 「びっくり」交響曲(ハイドン~スワン編) "Surprise" Symphony 8:09
5. ベッドタイムのテーマによる変容(サンプソン,ホロウィッツ) Metamorphosis on a Bedtime Theme 12:34
6. オーケストラ・メドレー(バターワース) Orchestral Swich 8:41
7. ピアノと管弦楽のための不協奏曲(ジョゼフス) Disconcerto for Piano & Orchestra 9:48

 

指揮/マイケル・マッセイ、フランク・レントン、トム・バーグマン、マーク-フィッツ・ジェラルド、ヨーゼフ・ホロヴィッツ
演奏/フィルハーモニア管弦楽団

 

録音/1988/02/12-13 ロイヤル・フェスティヴァル・ホール、ロンドン

 

P:クリス・ハーツェル
E:サイモン・イードン、ジョン・ダンカーリー

 

DECCA 425401-2

 

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 こういう冗談音楽のたぐいは映像と音楽、そして会場の雰囲気が揃わないと100%満足はいかないものでしょうね。それとホフナング音楽祭という名前を知っていないと何のことだか分からないというものです。ホフナング音楽祭は、クラシック音楽をこよなく愛するイギリス人の漫画家、ジェラルド・ホフナング氏(1925-1959)によってロンドンで始められました。ホルン奏者のデニス・ブレインなど、当時のイギリスが誇る名人たちが、くそ真面目に繰り広げる冗談音楽のオン・パレードは、当時ライヴ録音されて、LPレコードは世界中で大ヒットとなりました。タイトルをみてもお分かりの通り、なんとゴムホースを独奏楽器にした激ムズ協奏曲。ベートーヴェンのあずかり知らぬ「レオノーレ」序曲第4番。そして、びっくり効果を倍増させたハイドンも驚愕する「びっくり」交響曲などなど、クラシックを知っているファンほど笑えるギャグのオンパレードです。

 

 さて、その音楽祭の歴史を少々。「ホフナング音楽祭」と言う名称はこの催しを企画したベルリン生まれのイギリスの若手漫画家ジェラード・ホフナング(1925~1959)の名前からつけられています。記念すべき第1回のコンサートは1956年11月13日、まさしくこん録音と同じロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで超満員の聴衆を集めて大成功を飾ったと伝えられています。まさに「クラシック冗談音楽」への幕開けとなったコンサートであったわけです。その後第2回目の音楽祭が2年後の1958年11月に開催され大好評のため翌59年1月にも追加公演が行われたほどでした。しかし主催者のホフナングがその年の9月に35歳の若さで急逝してしまうのです。
 このコンサートを楽しみにしていたロンドンのファンは大ショックを受けます。当時は娯楽が少ないですからね。そこでホフナングの親友だった「戦場にかける橋」でもおなじみのマルコム・アーノルドが中心となり1961年11月28日に第3回目の「ホフナング音楽祭」が「ホフナング追悼演奏会」として開催されます。これら演奏会は当時EMIが録音しており、その演奏会ライヴレコード(米Angel 35500)が発売されて大人気になりました。それもこの時期としては珍しいオリジナル・ステレオ録音での発売であったことにもびっくりしたものです。収録内容も多彩で既にこのレコードにベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番をパロディー化して第4番や「大々的序曲」等々ウィットに富んだ作品が収録されています。この「大々的序曲」では名手デニス・ブレインが得意のオルガンを演奏していますし、「水道ホースと管弦楽のための協奏曲」ではもちろん水道ホースを吹いているという活躍ぶりでした。

 

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 そういう歴史(?)のある音楽祭なので、イギリス人は大喝采です。ここでも往年の名曲の数々が演奏されています。近年は「フックト・オン・クラシック」でこういうおもしろさが変化してしまったような感がありますが、これはその「フックト・オン・クラシック」の原点のような楽しさがあります。音楽祭の開始のファンファーレはイギリス吹奏楽界の重鎮、フランク・レイトンの作品です。それでもやはりパロディで、曲の中にはムソルグスキーの「展覧会の絵」のプロムナードのメロディが隠れています。思わずにやついてしまいます。2曲目もマルコム・アーノルドの作品ということで大まじめかと思いきやこれも音楽祭ならではのパロディ作品です。アーノルドは純クラシックの作品も書いていますが、ここではそういうものと映画音楽作家としての側面を合わせた楽しい作品に仕上げています。この曲はプロムスでも演奏されていますから映像で確認出来ます。映像がないとおもしろさは100%は理解出来ないのが分かるでしょう。

 


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