ホフナング音楽祭1988-その2 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

 
抱腹絶倒のホフナング音楽祭
つづき

 

イメージ 1

 

 3曲目はL.モーツァルトのアルペンホルンのための協奏曲の第3楽章のパロディです。歴代のフィルハーモニア管弦楽団のトップが演奏しているところをみるとさしづめ、ここではワトキンズ氏が吹いているということでしょう。パロディといいながら、ちゃんとした作曲家が書いているという意味ではさしずめ音楽の「パスティーュ作品集」ということも出来るのではないでしょうか。まあ、5曲目からは耳慣れた名曲の旋律がそこかしこに登場して、さながら「フックト・オン・クラシック」の趣きです。それこそカウントダウンの声に合わせて、ジョニーが凱旋するとき、熊ん蜂の飛行、フィガロの結婚序曲、錨を上げてなどのメロディが次々と出てきます。そして、最後の締めはベートーヴェンの第9の第4楽章のフィナーレです。

 

 CD1の最後は「人気協奏曲」です。この曲にはそれこそ有名曲が登場して気持ちよく聴くことが出来ますが、それとは裏腹にピアニストとオーケストラの壮絶なバトルが展開されるのです。これは映像がないとそのおもしろさはまったく伝わってきません。

 

 

 CD2は曲としてはヴァイオリンと管弦楽のための「恋の協奏曲」で始まります。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を思わせるようなティンパニの連打で開始されますが、裏をかかれます。メロディラインとして聴こえて来るのはブラームスであったりラロであったり、ブルッフであったりとしてベートーヴェンはちょろちょろとメロディの断片が聴こえるだけです。いつかはベートーヴェンが聴こえるかなと期待しているうちに曲は終わってしまいますが、パスティーシュとしては成功している部類の作品です。まあ、笑わせてくれますがね。ティンパニが曲の要所を締めているという意味では、ベートーヴェンに継ぐ協奏曲という気もしないわけではありません。

 

 序曲「バグパイプはわめく」はイギリスならではの作品です。冒頭から荘厳なバグパイプの響きが鳴り響きます。そのうち語りが入ると曲はおふざけ調に変ります。ロッシーニの「盗むカササギ」のメロディやメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」のメロディに乗って曲が進みますが、肝心のバグパイプは最初と最後にちょろっと登場するだけです。これはサギだ!と叫んでもずっと流れているのはカササギだったりして・・・ハイドンの「びっくり」交響曲はそれこそ驚愕のサプライズで会場は爆笑の渦です。映像があれば本当に笑えるところなんでしょうな。本当のびっくりは予想されない転調でしょうし、後半の終わったと思わせながら何度も続きがあることでしょう。最後は楽員のぼやきまで聴こえてきそうです。

 

 最後の2曲はさながら「フックト・オン・クラシック」です。「オーケストラ・メドレー」はいきなりブラームスの悲劇的序曲で始まり、ベートーヴェンのエグモントに替わっていきます。まあ、こんな感じで綴られる「オーケストラ・メロディ」ですから次から次へと耳になじんだメロディが飛び出します。これぐらいのメドレーだと曲を考える余裕がありますね。ピアノと管弦楽のための不協奏曲はピアノ協奏曲の名曲が登場するのは当然ですが、ヴァイオリン協奏曲の領域まで浸食しているのですから侮れません。そして、モーツァルトのピアノ協奏曲がベンジャミンのジャマイカンルンバ並みのチャチャチャのリズムで現われるのには大笑いです。パロディのもとを知っている人にとっては大受けでしょう。いやはや何とも楽しい演奏会です。
 
 小生は知りませんでしたが、ものの記録によるとこのホフナング音楽祭、日本でもゲリラ的に開催されたことがあるそうです。まあこの他にも日本版のホフナングを実行していた人もいるもんで、かの山本直純氏が1967年から約5年に渡り毎年夏に開催していた日本フィルとの「山本直純ウィット・コンサート」です。CDもあるようですが既に廃盤です。内容については下記のホームページて紹介されています。

 

 

 こういうコンサートを今日本で企画出来る指揮者はいるのでしょうか。なんかあの頃より余裕のない時代になってしまっている様な気がしますね。