デュトワのサンサーンス | geezenstacの森

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デュトワのサンサーンス
曲目/サン・サーンス
交響曲第3番 ハ短調 作品78 ≪オルガン付き≫
1. 第1楽章(第1部):Adagio-Allegro moderato   10:21
2. 第1楽章(第2部):Poco adagio 9:32
3. 第2楽章(第1部):Allegro moderato-Presto 6:47
4. 第2楽章(第2部):Maestoso-Allegro 7:53
5. 交響詩≪死の舞踏≫ 作品40 * 7:05
組曲≪動物の謝肉祭≫**
6. 第1曲:序奏と堂々たるライオンの行進 2:10
7. 第2曲:雌鶏と雄鶏 0:56
8. 第3曲:騾馬 0:31
9. 第4曲:亀 2:17
10. 第5曲:象 1:30
11. 第6曲:カンガルー 0:57
12. 第7曲:水族館 2:31
13. 第8曲:耳の長い紳士 0:44
14. 第9曲:森の奥のかっこう 2:33
15. 第10曲:大きな鳥籠 1:12
16. 第11曲:ピアニスト 1:19
17. 第12曲:化石 1:20
18. 第13曲:白鳥 2:47
19. 第14曲:終曲 1:52

 

指揮/シャルル・デユトワ
演奏/モントリオール交響楽団
   フィルハーモニア管弦楽団*
ロンドン・シンフォニエッタ**
オルガン/ピーター・ハーフオード
ピアノ/パスカル・ロジェ、クリスティーナ・オルティス**
録音/1982/06 聖ユスターシュ教会、モントリオール
   1980/06 キングスウェイ・ホール*、ロンドン
   1980/03 キングスウェイ・ホール**、ロンドン
P:レイ・ミンシャル
 アンドルー・コーナル* ** 
E:ジェイムズ・ロック
 ジョン・ダンカーリー* ** 

 

DECCA(LONDON) F00L-223039

 

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 デュトワがモントリオールと華々しい活躍を初めて丁度脂の乗ってきた頃の録音ということで勢いがあります。この頃でしょうかね、現代のアンセルメとしての位置づけで捉えられ始めたのは。ラヴェルの一連のレコーディングで勢いに乗ってフランス音楽の名演を次々レコーディングしていきます。オルガンは、プーランクなどでも共演している名手ピーター・ハーフォードが務めています。LP発売時はこの交響曲第3番一曲だけで発売されていました。その他の曲は他にサンサーンスの交響詩2曲とともに別のCD(F35L20094)で発売されていました。そういうことを考えるとクラシックは抜群のコストパフォーマンスですね。このデュトワ盤が発売されるまでは、長らくアンセルメやマルティノン、ミュンシュなどのいわゆるフランス系の指揮者の演奏が代表盤だったわけですが、その歴史の中にまた喰い込んでトップの一角を担っているわけです。それにしても、未だに演奏、録音、音楽性と三拍子揃った名盤といえます。なんとかベストというシリーズには欠かせない名盤ですが、小生辺りは交響詩辺りとのカップリングで再発してもらいたいと思ってもみます。

 

 第1部の冒頭の序奏が終わり、アレグロに入ると、弦楽のさざ波のようなテーマに木管が絡んでいくところがすぐに出てきます。ここで、微妙に木管はテンポを広くとって伸びやかに歌いはじめます。デュトワってこんなにも表現力のある指揮者だったのかと再認識させるフレージングです。いろいろなオーケストラを渡り歩いてきて、ようやく落ち着き先を見つけたのかなという感じを当時持ったものです。アンセルメの跡を継ぎながら決してその真似ではない独自の音楽を作り出しています。ここまでモントリオール交響楽団という当時としては一流と呼ぶにはまだ機が熟していないオケをここので見事に鍛えているのですからオーケストラ・トレーナーとしての実力も大したものです。

 

 第1部の後半のゆったりとしたところでからオルガンが入りチェロがバックでメロディを支えます。いいバランスですね。ところでこのオルガンの録音は初期の解説では聖ジョゼフ教会のものを使用しているとかで合成の録音といわれています。聴感上は至極自然で、そんなことは思わせませんがどうなんでしょう。合成録音は良くある手で、バレンボイムの演奏なんかはそれが一聴しただけで分かるというお粗末なものですが、デッカの技術陣は優秀ということなのでしょう。そういうことはみじんも感じさせません。さすがメジャー系では一番早くデジタル録音を発売したレーベルだけはあります。普通この曲は第2楽章に入ってから活躍するオルガンが聴きものですが、小生は静かながらも、この第1楽章の第2部の入りのオルガンの響きが好きです。そして、ここで録音の善し悪しを判断しています。このデッカの録音はスペアナでみる限りちゃんと低レベルながらも低域まで伸びた素晴らしい録音です。デュトワはこういう技術陣に支えられて名演を作っているのでしょう。

 

 華やかな第2楽章は、決して焦らずじっくりと全体の構成を考えたテンポで入っています。ここから播木らケルト全体の焦点がぼけてしまいますからね。そして、最初の部分ではオルガンに先立ってピアノが活躍します。このピアノはクレジットされていませんが、確か日本人のピアニストが弾いていたはずです。こういうところのデータはちょっとデッカはいい加減なのが残念です。さて、第2部からはオルガンのフォルテで開始されクライマックスを築いていきます。しかし、この音量は以外と余裕のある録音です。派手になりすぎないところがいいのですが2分過ぎ辺りのフレーズでややバランスを崩したオルガンの音形が聴き取れます。こういうところはやはり、別録音での編集かなとちらと思わせます。それでも、全体はクライマックスに向かって着実に進んでいきます。デュトワはやはり耳がいいんでしようね。各楽器のバランスは絶妙です。フガートで盛り上がる最後の数分は、見事な盛り上げ方です。そして、コーダのオルガンの響きはしっかりオーケストラのサウンドに溶け込んでいます。お見事です。

 

 

 ところで、最近録音が途切れているデュトワ、そろそろこのサンサーンス辺りを再録音してもらえないものでしょうかね。時はフィラデルフィアという新しいオケのシェフになっています。オーマンディの名演もあるこのサンサース辺りの交響曲全集辺りはいいターゲットになると思うのですがね。何しろこのサンサースの交響曲第3番デュトワの記念すべき交響曲作品の最初の録音だったのですから・・・・・

 

 2曲目はフィルハーモニア管弦楽団を振った交響詩作品集からチョイスした「死の舞踏会」です。ここでは、オーケストラのやや渋めのしっとりとした響きが怪しい雰囲気とぴったりなのがいいですね。

 

 

 

 3曲目は「動物の謝肉祭」です。ピアニストだけクレジットがあって、チェロ奏者のクレジットがないというものです。まあ、どちらかといえばピアニストにスポットを当てられた録音ということも出来、「白鳥」なんかではやけにピアノが目立っています。それはピアノのメロディに装飾音が付加されていることで、このことでチェロよりピアノが浮き出ているのです。そういうことで、全体としてはややバランスを欠いた演奏ということが出来るのではないでしょうか。まあ、それでも達者な奏者の演奏だということは出来ます。でも、どうしてもメインプログラムのおまけ的な存在でしかないなあという印象がぬぐい去れません。