Russian Music/ピアノ連弾の世界 |
曲目/
Stravinsky Petrouchka
1.First scene "The Shrove Tide Faire" 6:42
2.Russian Dance 2:31
3. Petrouchka 4:19
4.Third scene "The Blackamoor" 2:28
5.Dance of the Ballerina 0:40
6.Valse-Vivace 2:43
7.The Shrove-Tide Faire 11:59
8.Scriabin/Fantasy in A minor for 2 pianos 6:22
9.Shostakovich/Concertino OP. 94 9:31
Rachmaninov Six Morceaux Op.11
10.Barcarolle 4:32
11.Scherzo 2:39
12.Russian Theme 3:48
13.Valse 3:38
14.Romance 3:02
15.Slava 3:59
録音/1992 EMSスタジオ、ブリュッセル
ピアノ/ロルフ・プラッゲ、ウォルフガング・マンツ
P:トニー・ダマート
E:ケヴィン・ダリー
E:ケヴィン・ダリー
DISCOVER DICD920150

ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」はもともとピアノ協奏曲として構想され、たまたま訪ねてきたディアギレフがその一部を聴きバレエ化を望んだために生まれ変わった作品です。そのため、ストラヴィンスキーの三大バレエ曲としては華やかにピアノが活躍する難曲となっています。そして、ストラヴィンスキーは編曲魔でしたから1911年の第1版が四管編成で作曲された後、47年版は三管編成版が作曲されます。そして、ショパン弾きとして非常に高名だったアルトゥール・ルービンシュタインが、ストラヴィンスキーに「俺のために世界一難しい曲を書いてくれ」と依頼したことがもとで、1921年に、すでに完成していた「ペトルーシュカ」からピアノパートを中心に、3つの楽章に編曲されたものが、一般に知られている「ペトルーシュカ」からの3楽章 です。こちらは数多くのピアニストが録音していますから良く知られたところで、マウリツィオ・ポリーニ演奏は代表盤ですね。しかし、それ以外にピアノ連弾版もあるんですね。
ということで、このディスクはそのピアノ連弾による「ペトルーシュカ」です。連弾というのは一台のピアノを二人が弾くというスタイルです。国内盤が出なかったのでほとんど知られていない演奏といえるでしょう。難易度からいえば一人でオーケストラの音色を演奏するのと比べていく分下がるのかもしれませんが、二人の息を合わせるという意味では、連弾の方があるいは難易度は高いのかもしれません。ただこの演奏、連弾だけで演奏されているわけではありません。第1曲ではピアノにプラスしてジャケットには表記されていませんがトライアングルが使用されています。ということで本格的なオーケストラ版からの編曲になっています。そして、この連弾版は全曲が編曲されているのです。
この演奏以外に録音が有るのかな?とインターネットを検索しても皆無でした。非常に珍しい演奏である録音ということになるのでしょうか。このDISCOVERというレーベルは以前紹介したアレクサンダー・ラハバリが創設したレーベルで90年代初期、意欲的なレパートリーを発売していましたがマイナーの宿命という波の中にいつの間にか飲み込まれて消えてしまいました。
そういうレーベルに残されたロルフ・プラッゲ、ウォルフガング・マンツのコンビによるこのCD、貴重です。彼らはその後も「Duo"Reine Elisabeth"」という名前で活躍していてThorofon Recordsレーベルから発売されています。しかし、この録音だけは見当たりません。
このピアノ連弾で「ペトルーシュカ」を聴くと、この曲の構造がくっきりと浮き彫りにされて面白いです。このブログを書くためにラックから取り出したのですがこの一週間ずっと聴き込んでいます。曲としては「のだめカンタービレ」でのだめがコンクールでこの曲を弾いたことから一時楽譜が売り切れるという現象まで引き起こしたということで一躍ポピュラーになりました。しかし、この連弾では最後の「ペトルーシュカの亡霊」まできっちり演奏されていますから、オーケストラの演奏と比較しながら聴くことが出来ます。そして、オーケストラの演奏では埋もれてしまっているメロディまできっちりと浮き上がらせていますから、ええっ!という発見が随所にあります。いゃあ、面白い演奏です。こういう発見があるからクラシックは止められません。
CDは確認出来なかったのですが「YouTube」ではこの連弾バージョンのロシアの踊りがアップされていました。
そして、フィナーレの部分もStephanie Ho and Saar Ahuviaのデュオでアップされていました。
さて、このCDは「ペトルーシュカ」がメインなのは曲目のトップにあることからも明らかなのですが、それ以外にもスクリャービン、ラフマニノフ、そしてショスタコーヴィチの作品が収められていています。そこが「Russian Music」と題されたこのCDの所以でもあります。つまりは4手のための作品ばかりが集められているということです。で、作品としての聴きものはショスタコーヴィチの「コンチェルティーノ」という曲です。
この2台のピアノのための「コンチェルティーノ」は単一楽章の小品で、ショスタコーヴィチが48歳のときに、交響曲第10番作品93と前後して、1953年に作曲された作品です。子煩悩であったショスタコーヴィチは息子マキシム(最近はマクシムと表記することが多いようです)とのデュオのために書かれた「緩-急-緩-急-緩-急」という構成の10分ほどの聴きやすい作品です。そういう作品ですから難易度はそれほどでも無いようで「YouTube」でも映像がアップされていました。ただ埋め込みが禁止されていますから下記のURLから覗いてみてください。
この演奏よりははるかにレベルの高い演奏で、このCDの中では「ペトルーシュカ」についで聴き入ってしまいました。
ラフマニノフの「ピアノ連弾のための6つの小品Op.11」もこの手のものの中では良く知られた作品です。どうもこの曲の映像を探すと男性と女性の連弾の映像が多いのですがそういう性格の曲なのでしょうかね。
この演奏はFlora Gomez & Miguel N'Dongのデュエットによるものです。曲は第3曲のスケルッオでした。
最後になりましたがスクリャービンの「Fantasy in A minor for 2 pianos」はやはりかなりマイナーな曲ですね。画像はありませんが、無料でダウンロード出来ますから下記のURLへアクセスしてみてください。
聴いてみると、なかなか愛らしい作品でスクリャービンというと現代音楽の先駆者の一人年手の位置づけですが、ラフマニノフと同時代の人としてみると、こういうメロディアスな曲も書いていたんだなあということが分かります。
さて、実際このアルバムで演奏している「Duo Reine Elisabeth」の二人はこんな容姿です。
