ブラームス/交響曲第3、4番 ストコフスキーとスタインバーグの競演 |
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曲目/ブラームス |
1. Allegro con brio 10:13
2. Andante 10:50
3. Poco allegretto 6:19
4. Allegro 9:39
交響曲第4番ニ短調Op.98*
5. Allegro non troppo 11:33
6. Andante moderato 11:42
7. Allegro giocosco - Poco meno presto 6:02
8. Piu allegro 9:58
指揮/レオポルド・ストコフスキー
ウィリアム・スタインバーグ*
演奏/ヒューストン交響楽団
ピッツバーグ交響楽団*
ウィリアム・スタインバーグ*
演奏/ヒューストン交響楽団
ピッツバーグ交響楽団*
録音/1958 シヴィック・センター、ヒューストン
1959 シリア・モスク、ピッツバーグ*
P:バード・ホワイト
E:バード・ホワイト
1959 シリア・モスク、ピッツバーグ*
P:バード・ホワイト
E:バード・ホワイト
BESCOL CD517

個人的なことですが、今日誕生日を迎えました。55歳です。一昔前なら定年の年ですね。幸い今の会社は後5年勤めることが出来ます。今の世の中ありがたいことです。これでようやく親父の人生を超えることが出来ました。親に感謝、家族に感謝、友人に感謝、そして社会に感謝です。今日はそういう節目に当たり、大好きなストコフスキーを取り上げます。
LP時代はEVERESTレーベルから発売されていましたが、CDになって最初に登場したのはBESCOLというメーカーからでした。しかし、このCD何とも妖しいレーベルで解説、データなどいっさい記載が無く、ただ曲目と演奏者だけが列記されただけという代物でした。上記のデータはレコ芸のイヤーブック1996年版記載のも、その他から調べたものです。
録音はステレオ初期でさすがに古く、ダイナミックレンジも広くないのでいささか弦の潤いが乏しいものとなっています。Wikiで検索すると、ストコフスキーは録音でブラームス交響曲全集を世界ではじめて録音したということですが、ちょっと意外な感じがしました。しかし、録音にはことのほか情熱を燃やした人ですからさもありなんということでしょう。ここでも先駆者?の貫禄で自在な演奏を繰り広げています。
第1楽章はテンポがくるくる揺れます。なかなか堂々としたバランスで和音が鳴ったかと思うと猛烈なスピードで第1主題が飛び出します。ところが、それは10小節も進むとすぐ遅くなり19小節からの駆け上がる三連符のあるところはもとのテンポ、そして練習番号Bの23小節からはまたゆっくりといった具合に頻繁なテンポ変化があります。スコアを確認してもパッショナートとかクレッシェンドの指示はありますが、速度記号なんか無いんですけどね。考えてみればストコフスキーはこういう演出は得意な指揮者ですから文句はありません。ブラームスの一番は1960年代に入っても再録していますが、この3番は以後録音がありません。ということはこの演奏は彼の満足のいくものだったということでしょう。そして、テンポの揺れこそありますが極めてスケールの大きいロマン的演奏でなかなか聴かせてくれます。
ヒューストン交響楽団は1955年から常任の地位にあったストコフスキーですがこの組み合わせの録音は決して多くはありません。一つには当時のメジャー契約先のRCAがこのオケとの録音に興味を示さなかったことと、まだNBC交響楽団が存在していたことが大きな理由でしょう。そんな流れの中で新興勢力であったEVERESTが名乗りを上げて録音したのがこのディスクです。ヒューストン交響楽団は1913年に設立されたオーケストラで、金にものをいわせて有名どころの指揮者を常任に迎えて台頭していました。このストコフスキー時代には一つの頂点を迎えていた頃でそれがこの録音に結びついているのでしょう。個性的でクセもあるストコ節にもオケはしっかり付いていっており、思った以上の水準の演奏を披露しています。
ヒューストン交響楽団は1955年から常任の地位にあったストコフスキーですがこの組み合わせの録音は決して多くはありません。一つには当時のメジャー契約先のRCAがこのオケとの録音に興味を示さなかったことと、まだNBC交響楽団が存在していたことが大きな理由でしょう。そんな流れの中で新興勢力であったEVERESTが名乗りを上げて録音したのがこのディスクです。ヒューストン交響楽団は1913年に設立されたオーケストラで、金にものをいわせて有名どころの指揮者を常任に迎えて台頭していました。このストコフスキー時代には一つの頂点を迎えていた頃でそれがこの録音に結びついているのでしょう。個性的でクセもあるストコ節にもオケはしっかり付いていっており、思った以上の水準の演奏を披露しています。
第2楽章はも非常にスローテンポの演奏で、アンダンテというよりはアダージョに近い雰囲気です。ロマンティックでありながらややねちっこいニュアンスの表現が延々と続きます。聴くものを飽きさせないバランスでブラームスの持つ渋さの中に何とも妖しい妖艶さを漂わせた表現です。こんな演奏を聴かされたら世のご夫人たちはたちまちストコフスキーのファンになること請け合いです。
第3楽章もその延長線上の切ない心情を思い切り吐露したまるで映画の劇伴を聴いているような演奏です。例によってテンポは大きく揺れます。ホルンの切々としたフレーズも思いっきりディフォルメされています。そして、極めつけはコーダの部分です。弦のピチカートが終わっても管楽器の響きがフェルマータがあるかのごとく引き延ばされていますが、実際の楽譜には何も書かれていません。まさにストコフスキーでなくては表現出来ないような演奏であり、ブラームスです。
第4楽章も詳細に聴いていくとここかしこにストコフスキーらしい仕掛けがありますが、音がごろっと代わる箇所があります。テープの編集の後がくっきり出ているのが125小節過ぎです。まるで音の響きが代わりますからびっくりするのですが、丁度ここのところから仕掛けが始まります。まるでベルリオーズの作品のような響きが聴こえてきます。楽譜にはマルカートの指示があるところですが、ここで、ストコフスキーは第1ヴァイオリンとヴィオラの音を弓を駒から遠ざけてかすれた音を出させています。ここはちょっと不気味な響きです。がこのテイクを採用するためにここで音を繋いだような気もして思わずにんまりです。まあ、こういう演奏はストコフスキーファン以外は受け入れられないと思いますが、一丁の価値はあると思います。
さて、ストコフスキーの人となりを映像で楽しみましょうか
シベリウスの交響曲第1番の録音セッションを中心としたドキュメンタリーです。これは1976年11月2、4、5日のセッション録音でオケはナショナルフィルです。
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シベリウスの交響曲第1番の録音セッションを中心としたドキュメンタリーです。これは1976年11月2、4、5日のセッション録音でオケはナショナルフィルです。
さて、それに比して交響曲第4番の方はウィリアム・スタインバーグの指揮ものです。小生の所有するBESCOL盤はトラックが2つしかありません。1、2楽章が一つのトラックで収録されています。上記の楽章別の演奏時間はキングから発売されたもののデータを記載しています。
今では息子のピンカス・スタインバーグの方が通りが良くなってしまっているようですが、これは父親のウィリアム・スタインバーグと当時の手兵だったピッツバーグ交響楽団(1952-1976)との録音です。スタインバーグはドイツ生まれの指揮者ということでがっしりとした音作りをしています。確かブラームスは米コマンドなんかに全曲録音しているはずです。こちらも同時代の録音とあって録音はさすがに古色蒼然たる音がします。第1楽章はやや速めのテンポですが重厚なサウンドでどちらかと言うとヴァントに似た解釈のブラームスです。こちらはストコフスキーほど音の揺れはありませんがややポルタメント的に音をためるところなんかは時代を感じます。しかし、しばらく聴いていると音の悪さなんかは忘れて音楽にのめり込めます。目隠しで聴かされたらドイツのオーケストラの演奏だと思い込んでしまうような正統な音楽がなっています。
スタインバーグは日本では全く注目されませんでしたが、なかなか良い仕事をしています。そういうことを評価されて一時はボストン響の常任をしていました。小沢征爾の前任者ですね。その時代にグラモフォンに録音されたホルストの惑星なんかは個人的には未だにベストスリーの演奏に含まれます。
昨年このスタインバーグの演奏だけがオリジナルの形でEVERESTから復活しました。第1回の発売に含まれているということはそれだけ価値のある演奏ということが出来るのでしょう。アメリカのビッグファイブの実力を持つオケだけにアンサンブルも申し分ありません。恣意的なところは無く王道の響きで、第2楽章なんかはじっくりと聴かせてくれます。オーケストラの鳴らし方のバランスがとれているので音が過不足無く聴こえてきます。金管、木管の響きも味わいがあります。第3楽章はこれまた早めの畳み掛けるような演奏ですが躍動感があります。ただ、この楽章は金管を突出させて吹かせているところがあります。特にコーダ間近のトランペットの響きは強烈です。
最後の第4楽章はややゴツゴツとした響きを意識的に作り出し、この曲の持つ悲劇性を強調してはいますがそれも計算されたバランスの内で渋さの中に男の毅然たる意思を感じさせる骨のある演奏になっています。ヨーロッパを活動の主体にしていた指揮者の過去のアーカイブは最近かなり発掘されていますが、こういうアメリカを主体に活躍していた指揮者の演奏も復活してくれると良いんですがね。