
能登旅行中の警視庁の北条早苗刑事が、ライフル銃で狙撃された。さらに早苗が泊まった家の娘・田村真理子が、片山津温泉で溺死。警察への恨みか、人違いか。―一方、東京・国立市でバス爆破事件が発生、早苗の同僚四人が死亡した。絞り切れぬ犯人の動機。いらだつ十津川警部のもとへ、早苗暗殺を予告する挑戦的電話がかかった。みなぎる緊張とサスペンスの傑作。---データベース---
小説宝石'93/12号~'94/3号にかけて連載された小説です。この小説では珍しく北条早苗刑事が冒頭から登場し活躍します。この事件ではその北条刑事が狙撃され殺されかけます。また、十津川班の清水刑事がバスの爆破で殉職します。しかし、この清水刑事は1990年の「十津川警部・怒りの追跡」という事件でも殉職していますから2度死んだということになります。この十津川警部シリーズではこういう矛盾が時々出てきます。
小説宝石'93/12号~'94/3号にかけて連載された小説です。この小説では珍しく北条早苗刑事が冒頭から登場し活躍します。この事件ではその北条刑事が狙撃され殺されかけます。また、十津川班の清水刑事がバスの爆破で殉職します。しかし、この清水刑事は1990年の「十津川警部・怒りの追跡」という事件でも殉職していますから2度死んだということになります。この十津川警部シリーズではこういう矛盾が時々出てきます。
この事件当時北条刑事は26歳、毎日充実した刑事生活を送っていたとき、突然自分の存在がむなしく感じて旅に出ます。それが北陸は能登だったのですがこの逗留先の民宿でライフルで突然狙撃されます。幸いかすり傷で済みますが、早苗には狙われる動機が見つかりません。しかし、こういう事件が起きたのに最初の内は石川県警はすぐには動かないところが不思議です。いつもなら地元の刑事が真っ先に登場するのに、わざわざ東京から西本刑事が駆けつけます。そして、入院先の病院でまた狙撃されます。子録るここに至ってようやく石川県警の井出という刑事が登場します。でも、彼は単に登場するだけでその後何も活躍しません。後で平井という別の刑事も出てきますがこちらも同様です。
さて、北条刑事が狙われたのは誰かと間違われた可能性があります。たまたま、泊まった民宿には同じ年頃の娘、田村真理子がいました。そして、彼女は行方不明の後片山津温泉で溺死体で発見されます。この事件の傍ら、東京では通勤バスが爆破され、たまたまそのバスに乗っていた乗客4人が死亡し、その中に捜査一課の清水刑事が含まれていました。一件関係の無い事件に思われましたが、警視庁にこの犯行を認める電話が入ります。
狙われたのは十津川班の刑事だということが分かります。北条刑事のガードが固くなったので別の刑事を狙ったという電話です。ことここに至って十津川警部たちに恨みを持つものの犯行と言う線が出てきますが犯人像は浮かんできません。しかし、方や北条刑事一人をターゲットにしていたのに、清水刑事の方は他に3任が巻き添えを食らっています。犯行の手口としては一致しません。十津川警部は犯人像をしぼりきれないので北条刑事だけは別に五人事件の方の千で捜査をさせます。
十津川班が扱った事件の線から捜査が進めば問題は解決しそうなものですが、その捜査は棚上げになってしまいます。しかし、地道な捜査で使われたダイナマイトの線から次第に犯人像が浮かんできます。アマチュア映画を撮影する仲間がダイナマイトを手に入れていたのです。
ここから事件が確信に向かって動き出します。なかなか凝ったストーリー立てで真犯人は一向に姿を現しませんが、北条刑事が再び北陸で狙われたことで事件は再び北陸に舞台を移します。十津川警部たちも石川に乗り込みヘリを使って上空からグループ発見の捜査をします。中々スケールの大きな展開です。そして、ある放置されたままのゴルフ場が妖しいとにらみそこへ降り立ちます。案の定、生活をしていた痕跡が発見され、彼らが乗り回していた車が発見されます。しかし、車に近づくと突然爆発し警察官が爆風に巻き込まれます。ここでもダイナマイトが使われたようです。
そして、事件の舞台となったゴルフ場の経営者の線から意外な人物が黒幕として登場します。彼こそが十津川班が扱った事件で警察に恨みを持っていた人物だったのです。こうした後はひたすら犯人グループを追いつめる展開となりますが、ここからも、犯人側との熾烈な戦いが繰り広げられます。事件はさらに瀬戸内海に飛び火して今度はN島が舞台となのます。ここでは危うく十津川警部たちが火に包まれる寸前まで追いつめられます。しかし、グループの仲間割れでなんとか難関を突破出来ます。それでも、犯人グループには逃げられてしまいます。
大団円は東京が舞台です。警視庁が扱う事件の幕切れとしては当然のことでしょう。今年の映画コンクールの最優秀作品に彼らの作品が選ばれたのでした。その映画にはバスの爆破シーン、そしてゴルフ場での車の爆破シーンも登場していました。彼らの作品は、現実の事件をその映像の中に取り込んでいたのです。
あまりに事件のスケールがでか過ぎるのか、この事件は映像化されていません。ここまで派手に爆破や炎上のシーンがあるとドラマとしては金がかかりすぎるのかもしれませんからね。