スラットキン/ハリウッドボウルの遺産 | geezenstacの森

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Symphonic Dances

曲目/
1.Tchaikosvky / Waltz of the Flowers from 'Sleeping Beauty' 4:28
2.Kabalevsky / Galop from 'The Comedians' 1:37
3.Grieg / Norwegian Dance No. 2 2:25
4.Weinberger / Polka from 'Schwanda the Bagpiper' 2:26
5.Gliere / Russian Sailor's Dance from 'The Red Poppy' 3:37
6.Bizet / Farandole from 'L'Arlesienne' 3:17
7.Delibes / Pizzicato Polka from 'Sylvia' 1:41
8.Khachaturian / Sabre Dance from "Gayne" 2:33
9.Saint-Saens / Bacchanale from 'Samson et Dalila 6:55
10.Mendelssohn / Scherzo from "A Midsummer Night's Dream" 4:27
11.Offenbach:Rosenthal / Gaite Parisienne (complete)* 38:05

 

指揮/フェリックス・スラットキン
演奏/ハリウッドボウル交響楽団

 

録音/1956/09/28,10/06-10
   1956/09/22,26*
P:ラルフ・オコーナー
E:カールソン・テイラー

 

EMI CAPITOL CDM-7637372

 

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 前日に引き続いてこちらも懐かしい音源です。指揮者のフェリックス・スラットキンをご存知の方はかなりのご年配の方でしょう。年末にNHK交響楽団の第9を振っていたレナード・スラットキンは彼の息子になります。親子2代指揮者という訳です。もっとも、父親はヴァイオリニストが本職でもっぱらそちらで活躍していましたから指揮者としては晩年のみの活躍になります。そして、演奏するオーケストラもロスアンジェルス・フィルハーモニーの別名でロス郊外にある野外ホールのハリウッドボウルに登場するときにこの名を使っていました。と過去形を使ったのはこの録音当時の話で、現在はちゃんとした同名のオーケストラが存在します。1991年に結成され活躍しています。現在の常任指揮者はジョン・マウチェリーです。

 

 で、この当時はロスフィルが活躍していました。そして、もっぱらこのフェリックス・スラットキンがこのオケを振っていたようです。ここではタイトル通りのオーケストラ作品の舞曲を演奏しています。そういう括りですから登場する作曲家はバラバラです。

 

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 この中での聞き物といえばやはり40分近い時間を占める最後のオッフェンバックの「パリの喜び」でしよう。実際のメロディはオッフェンバックですが、その素材を編曲してバレエ音楽に仕立て上げたのは指揮者でもあるロザンタールです。バレエ音楽では書かせないレパートリーになっているようで、ショルティ、ドラティ、デュトワをはじめそうそうたる指揮者がこの曲を録音しています。このCDも購入したときに聴いてはいますが、この曲が含まれていたとは今回この記事を書くまですっかり失念していました。そして、このスラットキンの演奏、なんと1958年のグラミー賞を受賞しているのです。驚くべきことに、この年同時にヴァイオリニストとしてハリウッド四重奏団としても受賞しています。つまりは二足のわらじの活躍をしていたのです。こういう演奏ですから悪いはずがありません。中々活気に満ちた演奏で、金管を目立たせるところはちゃんとクローズアップしてばりばり吹かせていますし、なんといってもテンポが生き生きとしています。グラミー賞がうなづけます。
 ただ、この曲はもともとこのオリジナルLPには収録されていませんでした。このCDはそういう意味ではコンピュレーションされたものです。オリジナルはラヴェルの「逝ける王女のためのパヴァーヌ」、マスネの「ナヴァラの踊り-歌劇「ル・シッド」第2幕より」が含まれていましたが、それがカットされて挿入されたものです。
 まあ、ステレオ初期の録音ということではやや中抜けの音で、加えて録音がデッドですから残響がほとんどありません。マルチマイクでソロの楽器の音が強調された録音ですからバランス的には違和感がありますが中々良く録られた音です。当時はキャピトルもハイファイをトレードマークにしていましたから頷けます。

 

 この中で珍しいのは4曲目のワインバーガーの「笛吹きシュワンダ」からのポルカでしょう。この曲今ではほとんど耳にしませんが1950年代は結構演奏されたようでフリッツ・ライナーなんかも録音を残しています。ジャロミール・ワインバーガーはチェコの作曲家です。あとはグリエールの「ロシア水兵の踊り」ですか。この曲を初めて聴いたのもバーンスタインの1964年の演奏でした。あまり人気のない作曲家か近年になってもCDは限られていますね。この曲なんかはもっと演奏されてもいいオーケストラピースです。

 

 もう一つ、新しい発見はデーリアスの「ピチカート・ポルカ」です。バレエ「シルヴィア」の中の一曲ですが、今まで何の協奏曲なしに聴いていたのでこの曲も「ピチカート・ポルカ」という曲だということには気がつきませんでした。あわてて調べてみたら結構いろんな演奏で持っていました。この演奏、最後のアクセントをやけに強調していますが、中々洒落っ気のある演奏です。中間部のフルートのソロがもう少し品があるとよかったのですがね。

 

 後は、サンサーンスのバッカナーレが聴きものです。こちらの冒頭のクラリネット・ソロは中々味があります。アップテンポで颯爽と演奏されるバッカナーレはリズムもきびきびとしていて踊るにはふさわしいテンポかも知れません。この父親の方のスラットキンの演奏は日本ではほとんど忘れさられていますが、本家アメリカには熱烈なファンが大勢いるようで、このCDの録音データもそこから引用してあります。