アンドルー・デイヴィスのバロック名曲集 | geezenstacの森

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アンドルー・デイヴィスのバロック名曲集

曲目、演奏/
1. ヘンデル/Arrival of the Queen of Sheba 2:59
2ヘンデル/ Keyboard Suite #5 In E, Vol. 1/5, HWV 430 - Air & Variations, "The Harmonious Blacksmith"* 4:54
3パッヒェルベル/Canon 5:26
4.バッハ/Prelude and Fugue in D Major* 3:42
5.バッハ/Air on the G String 5:25
6.クラーク/Trumpet Voluntary 2:05
7パーセル/.New Irish Tune - New Scotch Tune - Round O (Rondeau)* 3:42
8.コレッリ/Gigue 2:34
9.スカルラッティ/Sonata in A Major, L.428 (K.209)* 2:34
10.アルビノーニ/Adagio for Strings and Organ 6:51

指揮、チェンバロ/アンドルー・デイヴィス
演奏/トロント室内管弦楽団
録音/1985/03/11 グレース教会、トロント
1985/04/20* 聖ティモシー教会、トロント
E:アントン・クワイコフスキー

カナダ FANFALE DFCD-8014


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 アンドルー・デイヴィスを取り上げるのは3回目になるのですが、バロック音楽の分類に入れていたのでこのCDの所有は失念していました。こんなものを録音していたのですね。録音時期からすると、ちょうどトロント交響楽団の常任をしていた時期です。ジャケット写真からするとひげを伸ばし風格を感じます。トロント交響楽団とはソニーにポロディンの交響曲全集、EMIにはヘンデルのメサイヤなんかを録音していました。

 このCDは珍しくも室内管弦楽団を指揮してのものです。ただしこの中の4曲はデイヴィスのチェンバロ独奏、さらにはアルビノーニのアダージョでは自らオルガンも弾いています。多分ジャケットの写真はそんな彼のショットなのでしょう。元々デビューがマリナー率いるアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズでの鍵盤奏者でしたからこの手のものはお得意ということでしょう。そんなデイヴィスの芸風がこのCDでは楽しめます。

 曲目からするとバロック名曲集的なものです。1曲目の「シバの女王の到着」の華やかなテンポで幕を開けます。ここでも通奏低音のチェンバロはディヴィス自ら請け負っています。このトロント室内管弦楽団は近年はナクソスからかなりの枚数のバロックもののCDがリリースされていますから実力は十分なのでしょう。現代楽器による演奏ですがバランスのいい響きで指揮者の要求に応えています。

 2局目はデイヴィスのチェンバロ独奏です。曲目は基本的にCDDBから引っ張ってきますからこのような長ったらしいものになっていますが要はヘンデルの「調子の良い鍛冶屋」という曲です。エンタティメントに徹した演奏で、マリナーのもとで養ってきた古学的アプローチをベースにしながらも楽しい演奏に仕上げています。こういうスタンスは他のバッハやスカルラッティの曲でも同じで、しっかりした技巧の上に成り立つ音楽味あふれる演奏で小生は好きです。

 同じバッハでも、5曲目の「G戦上のアリア」はあまり重たいドイツ的な重厚な響きではありませんが、しっとりとした歌い口で、パッヒェルベルのカノンとともに好感が持てます。ところがどうしたことか、自国のクラークの「トランペットヴォランタリー」は華やかな音楽にも関わらす、スローテンポでの演奏となっておりやや地味な印象を受けます。考えてみれば、元々のこの曲のタイトルは「デンマーク王の行進」というタイトルであり、そういう意味からすると荘厳な感じのこの演奏の方がふさわしいのかもしれません。

 パーセルの「アブデラザール組曲」からのロンドはブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のテーマに使われている曲です。通常は弦楽合奏の形で演奏されますが、ここではデイヴィスのチェンバロ独奏で演奏されています。珍しいのはこのロンドに先立ち、「音楽のはしため第2部」に含まれる「New Irish Tune」と「New Scotch Tune」も演奏されています。こういうこだわりはさすがイギリス人ですね。

 コレッリのジーグは彼のヴァイオリン・ソナタOp.5-9のジーグですね。もともとのヴァイオリン曲がここでは弦楽合奏で演奏されています。欧米ではなかなか人気のある曲なんでしょう、いろいろな演奏で出ていますが日本ではいまいちって所ですかね。元々はLPとして発売されていたようで収録時間が40分あまりと短いのが今となっては残念です。