ゴールデン・シネマ・クラシックス Vol.1 スタンリー・ブラック/THE ADVENTURE FILM |
曲目/
1 James Bond suite 9:01
2 Lawrence of Arabia 3:53
3 The great escape 5:25
4 Bridge on the river Kwai 4:19
5 Around the world in eighty days 8:39
6 The great race 2:42
7 The sea hawk 6:45
8 Patton 2:57
9 Stagecoach 5:28
10 The guns of Navarone 2:57
11 The magnificent seven 3:59
12 Ben Hur 10:48
指揮/スタンリー・ブラック
演奏/BBCコンサート管弦楽団
コンサート・マスター/マーティン・ラヴデイ
演奏/BBCコンサート管弦楽団
コンサート・マスター/マーティン・ラヴデイ
録音/1992/01.02 ヒッポドローム、ゴルダースグリーン、ロンドン
P:レイ・ヒュー、グラハム・パス
E:ジョン・バサースト、ルパート・フリント
P:レイ・ヒュー、グラハム・パス
E:ジョン・バサースト、ルパート・フリント
BRAINBRIDGE BCD-2521

このCDは先日レコードを返却してくれた友人が同梱で送ってくれた頂き物です。このCDの存在は知っていましたが現物を見るのは初めてでした。スタンリー・ブラックは先に紹介したソニーへのロイヤルフィルとの録音と並行してBBCコンサート管弦楽団とこんな録音も残していたのですねぇ。録音会場のゴルダースグリーンのヒッポドロームはBBCコンサート管弦楽団の当時のホームグラウンドでここからBBCラジオ2で生放送も良くされていたところです。このCDについてはハイファイ録音ということでイギリスの「THE AUDIO CRITIC」という雑誌の1993年春号に取り上げられています。確かにサウンドとしては往年のデッカのフィルム・スペキュタクラーシリーズのデジタル版といえないこともありません。
ところがこのCD指揮者としてのスタンリー・ブラックは表立ってクレジットされていません。シリーズとしては第4集まで出ているようですが果たして全部スタンリー・ブラックが指揮しているかどうかは確認出来ませんでした。とりあえず第1集と第3集はスタンリー・ブラックが指揮しているようです。あくまでBBCコンサート管弦楽団がメインで指揮者はどうでもいいというスタンスでこのCDは売られています。これと同じ内容でスタンリー・ブラック指揮プラハ・フェスティバル管弦楽団のCDが一時キングから発売されたようですがどうもソースからしてまがい物のような気がします。
一曲目の「ジェームズ・ボンド組曲」はデッカ時代の「フィルム・スペキュタクラー」の第3集に収録されていました。そちらでは「ジェームス・ボンド・メドレー」となっていましたが内容は同じです。ただし、このBBC盤ではコーラスは使われていませんからその部分はトランペットのソロに置き替わっています。変にコーラスを入れるより個人的にはこのアレンジの方が好きです。
スタンリー・ブラックの「アラビアのロレンス」は序曲のみのアレンジです。いつも思うのですがこの曲は組曲みたいにしてくれたらよかったのにと思います。映画は当時はシネラマという70mmの大画面での公開でした。凄い迫力で画面一杯にアフリカの砂漠が広がったのは圧巻でした。いつも映画に行っても飲食はしないのが普通でしたが、この映画のと知勇休憩ではどうしても喉が渇いてしまって当時はまだ珍しかったコーラで喉を潤したのを今でも覚えています。ここでは、以前紹介したものと同じアレンジによる演奏ですが印象が全く違います。録音会場の違いいうのもあるのでしょうが、全体的に明るいサウンドで弦の音をアップで収録していて、音に馬力があります。ハイファイということでは甲乙つけ難いのですが、曲へののめり込みではBBCコンサート管弦楽団に軍配が上がります。特にコーダの迫力はデッカ盤も含めて最高の仕上がりです。
ところでこのアルバムに前掲のCDと重なる曲がもう一曲含まれていますが、こちらはアレンジがぜんぜん違います。ロイヤルフィル盤がテーマ音楽だけのマントヴァーニの様な弦をカスケイドさせるワルツのリズムの演奏に終始している演奏に比べて、ここではファンファーレから始まる組曲の様なアレンジになっています。こちらはワルツのリズムではなくドラムスのリズムに乗って軽快なテンポのテーマで始まります。これがほんとに同じスタンリー・ブラックの編曲家と耳を疑う違いです。
このアルバムはサブタイトルに「THE ADVENTURE FILM」と付いているだけあってそれに相応しい作品が並んでいることは確かです。まあ、そういう作品の中でもこの第1集は過去の偉大な名作を取り上げています。年代はかなりバラバラで、それこそスタンリー・ブラックのお気に入りといった選曲のような気がします。7曲目の「The Sea Hawk」なんかはその際足るものでしょう。この曲は日本ではさっぱりですが欧米では人気のある曲のようで映画音楽ながらアンドレ・プレヴィンやチャールズ・ゲルハルトなんかが取り上げています。そうそう、最近ではナクソスからFilm Music Classics」というシリーズでこの曲の2枚組と言う途方も無いCDが発売されています。作曲したコルンゴルトは元々はクラシックの作曲家だったのですがナチスに終われてアメリカに渡りシンフォニックなスコアを初めてハリウッドに持ち込んだジョン・ウィリアムズの大先輩にあたる人なんですね。ここではスタンリー・ブラックが7分あまりの作品に仕上げています。いい編曲です。9曲目の「駅馬車」はそれこそデッカの録音で嵌まった一曲です。デッカの録音ではSE(サウンド・エフェクト)で馬の蹄の音も取り入れられていましたがここではそういう小細工は取られていません。
個人的には「ナバロンの要塞」よりも「史上最大の作戦」を取り上げてほしかったところですが、この作品も忘れ難いので良しとしましょう。「荒野の七人」も短いアレンジですがラテンのリズムを生かした原曲を越える分厚いオーケストラサウンドが気持ちよく響きます。そして最後はスペクタクル大作「ベンハー」で締めです。ミクロス・ローザのこの大作を10分長の編曲に纏めて聴かせてくれます。
スタンリー・ブラックの編曲による純粋にオーケストラサウンドを聴くにはもってこいのアルバムでこれはデッカ盤には無い楽しさが溢れています。