
東京でホテルの宿泊客が殺された。彼の滞在を内密に依頼した大学教授も行方不明に。解剖の結果、胃の中からエチゼンクラゲの肉片が発見され、警視庁捜査一課の十津川警部と亀井刑事は、クラゲ専門の加茂水族館がある山形・鶴岡へと向かう。館長・後藤の態度に不審を抱く二人。一方、東京では、被害者の身許が公益法人「山形の文化を守る会」の職員・岩田博司であると判明。再び後藤に事情を聞くため、十津川と亀井は指定された「いなほ五号」に乗り込むが、合流先の鶴岡駅で後藤が刺殺された!シリーズ最新作。---データベース---
2006年3月から9月号の「問題小説」に発表された作品です。冒頭はかなりミステリアスな展開です。いきなり、怪しげな男が殺されます。彼の存在は内密にされているのですがその謎は解けていません。唯一の手掛かりは死体解剖で胃の中に残っていた「越前クラゲ」に肉片です。しかしこの設定、東京に出てきて何日も経っているし、東京ではこの「越前クラゲ」のが含まれる食品は販売されていないという設定なのです。不思議です。
2006年3月から9月号の「問題小説」に発表された作品です。冒頭はかなりミステリアスな展開です。いきなり、怪しげな男が殺されます。彼の存在は内密にされているのですがその謎は解けていません。唯一の手掛かりは死体解剖で胃の中に残っていた「越前クラゲ」に肉片です。しかしこの設定、東京に出てきて何日も経っているし、東京ではこの「越前クラゲ」のが含まれる食品は販売されていないという設定なのです。不思議です。
まあそんな中、十津川警部と亀さんはそれを手掛かりに山形にある「加茂水族館」に出かけます。くらげに特色のある水族館で実在します。ここの館長も分けありげな存在として登場しますが、その存在意義は明らかにされません。一番の疑問点は、陰に隠れている謎の人物との接点が明らかではないのです。そんな中でこの館長も殺されてしまいます。
伏線がいろいろ張られているのですが、この伏線が消化不良で読んでいてイライラします。館長の殺しには電話が盗聴されているのではという疑惑がありますがこれは提示だけで追求はありません。先の東京で殺された男にも宿泊を問い合わせる不思議な電話が掛かりますが、これも解明されないままで終わってしまいます。
やがて、被害者の身元が公益法人「山形の文化を守る会」の職員であったことが判明するのですが、この組織の理事長なる人物も不思議な設定になっています。当初の記述では山形の市職員であったことが述べられていますが、読み進んでいくとそうではなく地元の新聞社の社主をしていてその流れで「山形の文化を守る会」の理事長になったという設定にすり替えられてしまっています。
こういう脈絡のない展開ですら読んでいる方も話が混乱し、シラケてしまいます。最悪なのはクライマックスに向かっていよいよこの「山形の文化を守る会」と対決という構図が出来上がりますが、ここでの展開は隠れていた人物が突然寝返りを打ってしまうのです。ですから最後は腰砕けの期待とはうらはらのストーリー展開で、なんなんだこれはという感じです。
取ってつけたようなダンヒルのライターの存在もなんだこりゃです。こんなものを登場させて、容疑者の理事長を呼び出すのです。それも10年前の証拠品です。それが駐在所の警察官が持っていたというのも笑ってしまいます。取得物の処理をちゃんとやっていない、職務怠慢な警察官です。あきれかえってしまう展開です。
もう一人の大学教授は拳銃で撃たれますが、その拳銃は誰が使ったのか、水族館館長を殺したのは誰か、全く言及されないし、途中で十津川警部は北への捜索ではなく南の方を捜索すると訳の分からない発言をするしということで、とにかくちゃらんぽらんで無理矢理結末に持っていくという摩訶不思議なストーリー設定です。
これはよっぽどのファンしかお勧め出来ません。