十津川警部 幻想の信州上田 | geezenstacの森

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十津川警部 幻想の信州上田

著者/西村京太郎
出版/講談社 講談社ノベルス

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 東京都内で二件の刺殺事件が発生。二件とも被害者の顔の上には、六枚の一文古銭が置かれていた。戦国時代に六文銭を旗印にした真田家ゆかりの地、信州へ向かう十津川警部。真田家の子孫をめぐって暗躍する団体の存在を突き止めるが…。なかなか尻尾を出さない犯人をあぶり出すべく、十津川が一計を案ずる。----データベース−−−

 十津川警部シリーズの小説で「幻想」と付く作品は歴史物を扱った作品が多いようです。2006年のこの作品も「幻想の信州上田」というタイトル通り時代小説を扱っています今回は真田幸村が登場します。

 殺人事件が起きますが、現場にこんなにも手掛かりとなる物証が残されるとは不思議な事件です。殺された二人には一見、表面上何の繋がりもありません。その六文銭を頼りに、これを旗印に活躍した真田幸村の居城か合った信州上田に向かいます。真田の地名が残る真田町は町村合併で今は上田市真田町になっています。そういう関係で信州上田という書名になったのでしょう。

 六文銭は六道銭をあらわしているといわれます。六道銭とは、亡くなった人を葬る時、棺に入れる六文の銭のことで、三途の川の渡し賃なのだとか。

 これを旗印にすることは「不惜身命」(ふしゃくしんみょう:仏法のために身命をささげて惜しまないこと)を意味するのだそうです。

 この小説で登場する「六文銭の会」のような組織は現実には存在しないので、現実味の無いストーリーになっています。だいたい、真田家が祖先であるからということで顕彰されて喜ぶ人がいるのかということからして理不尽なのですが、この小説ではそういう人間が登場して、詐欺にあい名古屋の人間が自殺しています。そして、最初に殺された二人もそういう事に関連して死んでいます。

 ここに登場する「六文銭の会」なんてのも十津川班が活躍すればもっと早く事件が解決しそうですし、殺された人物の身辺捜査も何も、十津川班と亀さんが出かけてまでやるような事案ではないように思えてきます。

 組織としての犯罪なのですが、その殺人の実行犯は最後の方にしか登場しません。いわばつけたしみたいなもので、歴史ロマンが優先されたプロットになっています。こういう展開ですから、この小説では十津川警部と亀さんしか登場しません。正確には三上本部長と西本刑事は登場しているのですが、全くといっていいほど活躍していません。近年のシリーズはこういうパターンが多すぎてちょっとつまらなくなっています。