バーンスタインのブラームス交響曲第1番 | geezenstacの森

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グレートコンポーザー13/バーンスタインのブラ1

曲目/ブラームス
交響曲第1番ハ短調 作品68
1.第1楽章 17:31
2.第2楽章 10:54
3.第3楽章 5:36
4.第4楽章 17:54
5.悲劇的序曲 作品81 14:15
指揮/レナード・バーンスタイン 
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1981/10/01-12 
   1981/10/06-12 ムジークフェラインザール、ウィーン
P:ハンノ・リンケ
E:クラウス・シャイベ

同朋舎 DGG GCP-1013

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 ニューヨークPOを辞任してからのバーンスタインはVPOとの関係を深め、かなりの量の録音を残しました。中でも、ベートーヴェンやブラームスは交響曲全集の録音を初め、主要なオーケストラ曲はほとんど録音しています。それも、ライブ録音が主体です。しかし、これらの一連の録音はほとんどがセッション録音と違わない内容になっていてホールノイズとか聴衆の拍手は聴こえてきません。おそらく、リハーサルやゲネプロの通し録音にほんの少して輪加えた方法で録音されたものでしょう。これは多分、バーンスタインが実演で燃えるタイプなのでプロデューサーや録音エンジニアから演奏中に口出しされるのをいやがって通し一発のライブに近い録音を残したかったんだろうと思います。

 それは成功していて、このブラームスも熱い演奏になっています。以前にフィレンツェ音楽祭でのバーンスタインを取り上げていますが、ここではオーケストラがウィーンフィルということもあってより、燃焼度の高い演奏に仕上がっています。既に60年代の後半からヨーロッパに軸足を移していたバーンスタインとの相性も抜群で、常任指揮者という呪縛から解き放たれ、作曲家としての視点から取組んだこれらの録音はニューヨークフィル時代とは一皮剥けた深遠さを伺い知ることが出来る演奏になっています。バーンスタインの特徴である飛んだり跳ねたりする独特の指揮法は健在のようで、そこかしこにその痕跡も記録されています。

 第1楽章のティンパニの連打から始まるフレーズは、やや速めのテンポのせいでしょうか,バーンスタインにしては意外に素っ気無い冒頭です。ブラームスの指示を忠実に再現しようとしたのかも知れません。個人的にはジュリーニのようにゆったりとしたテンポで堂々と演奏してほしかったと思う所です。第1楽章が17分台というのはリピートを忠実に実行しているからで取り分けて遅い演奏という結果ではありません。

 第2楽章でははっきりバーンスタインの歌う声が聴き取れます。開始3分ほどの所です。気持ち良さそうにメロディを口ずさんでいます。こういった所がライブの面白い所なんでしょうね。その他の所でも随所にうなり声が聴かれます。まさに燃える男の本領発揮なのでしょう。吉田秀和氏が「世界の指揮者」という本の中でバーンスタインについて、
『この名指揮者は、ときどき、情熱を生きるのではなく、情熱の何たるかを、きく人に教えるような演奏をする時がある。-中略-とくにヴィーンで、自分で独奏しながらモーツァルトの協奏曲の指揮をする時、右に左にあいずをしながら、ときどき「うまくやった、ありがとう」といわんばかりに唇に指をあてて、甘いキッスを楽員に送っているのを見た時、私はそのまま関に残っているのに、かなり努力がいった-中略-。
 しかし、その時、私の周りには、恍惚として彼を見上げている何人もの女性の目があったのも事実である。バーンスタインは、単に聴き手を陶酔さすだけでなく、オーケストラの楽員をも強く魅了するにたる精神的放射があるのであろう。』
と、語っています。

 第4楽章も音楽をすることの楽しさを全身で表現しているような演奏です。それに応えてオーケストラの紡ぎだすブラームスの調べも心の琴線に触れる感動的な演奏となって昇華しています。こういう雰囲気に包まれたコンサートは聴いていてさぞかし楽しいでしょうね。そういう演奏が記録されているのですから楽しくないはずがありません。

      演   奏第1楽章第2楽章第3楽章第4楽章
バーンスタイン/ウィーンフィル17:3110:545:3617:54
バーンスタイン/ニューヨークフィル12:569:305:1516:15
ベーム/ウィーンフィル14:0610:375:0517:52
ジュリーニ/ウィーンフィル15:4910:495:1819:46
カラヤン/ベルリンフィル13:499:124:5417:57

 このバッタもんCDには併録として悲劇的序曲が収録されています。全集が1983年のレコードアカデミーを受賞していますから、こちらも素晴らしい演奏です。個人的にはワルター/コロンビア響の演奏とともに気に入っています。ブラームスのロマン的資質の中に悲劇性を凝縮している演奏で、冒頭からただならぬ緊張感に溢れています。

何度と無く再発売されている名盤ですが、不思議とこの組み合わせでし市販はされていないようです。