著者/西村 京太郎
出版社/光文社 光文社文庫
出版社/光文社 光文社文庫

東京・井の頭公園で男の刺殺死体が発見された。ポケットには善光寺の“凶”のおみくじ。被害者は二カ月前にR銀行を辞め、謎の金満生活を送っていた。彼の交遊関係を示す十二枚の名刺から浮かんだ牧原麻美の行方を追う十津川警部に、長野県警から連絡が入った。名古屋発長野行き特急「しなの21号」の車中で、麻美が毒殺されたという。彼女もやはり善光寺の“凶”のおみくじを持っていた。翌日、新聞社に犯行声明が届いた。そこには三枚目の“凶”のおみくじが同封されている。十津川警部の推理が犯人を追いつめる。---データベース---
テレビドラマにもなった十津川警部シリーズの原作です。ところが最初の殺人は井の頭公園で「しなの21号」で殺された女は二人目です。しかも、東京の女がなぜか名古屋発の「しなの」で殺されるのです。この女から見て長野は北西、「凶」のおみくじは「北西は危険」と書いてあったのです。なぜ東京からストレートに「あずさ」で長野に向かわなかったのか謎です。そして、3人目も殺されます。今度は「南東は危険」の凶のおみくじが残されていました。共通するのは善光寺のおみくじ。しかし、それは偽物なのです。
3人の接点を探っていくと、その年の3月頃から急に生活環境が変わっているのです。その前後に起こった事件を十津川警部はしらみつぶしに調べていき、殺された第3の男が上越市で10課間だけ喫茶店を開いていた事を突き止めます。これが何を意味するのか興味深いところですが、ここではそれを伏せておきます。
そこに浮上する第4の人間が狙われる可能性を見つけます。後は犯人との競争です。しかし、タッチの差で犯人に先を越されてしまいます。ここら辺はスリル満点です。しかし、犯人は必ずおみくじにこだわって殺人事件を起こさせると確信し、主要道路で検問を張ります。しかし、犯人は現れません。そこへ、十津川警部のもとへ気になる情報が入ります。一機のビーチクラフトが大阪から八王子へ向かっています。怪しいとにらんだ十津川警部はこの飛行機に緊急着陸を指示します。パイロットは半信半疑ながらも、浜名湖に緊急着水します。脱出とともに機体は爆発します。間一髪でした。十津川警部の読みが当たりました。
しかし、事件はこれで解決ではありません。ようやく第4の人間を保護しますが、事件の真相は話したがりません。この人物にも犯人が誰なのかは分からないのです。ただ、一組の老夫婦が関係した事だけぽつんと話します。十津川警部と亀さんはこの線から事件の真相をたぐり寄せます。一人の男が浮かび上がります。

この第4の人間は一つの事件の容疑者として東京に移送されます。この時、犯人が現れるだろうとの読みで3台のパトカーで東名を走らせます。しかし、敵もさることながらどんでん返し輪用意してきます。何と亀井刑事の下の女の子マユミが誘拐されるのです。

この第4の人間は一つの事件の容疑者として東京に移送されます。この時、犯人が現れるだろうとの読みで3台のパトカーで東名を走らせます。しかし、敵もさることながらどんでん返し輪用意してきます。何と亀井刑事の下の女の子マユミが誘拐されるのです。
まさに手に汗握る展開で最後まで目が離せません。そして、最後は拳銃で発砲までして犯人を逮捕します。しかし、人質の5歳の子供は犯人側の手にあります。十津川警部は最後のかけに出ます。共謀者を逮捕しないという約束で取引をします。
これは、十津川警部が犯人たちの性格を見抜いた巧みな選択です。この取引が功を奏して亀さんの子供は無事保護されます。結末は簡素な記述ですが、この共犯者が自殺しているのが発見されます。
見事なストーリー展開です。ドラマ化される要素がいっぱいですから当然でしょうね。ただ、「しなの21号」はほとんどストーリーに関係ありませんし、そこで殺された女は仲間の一人なのですがほとんどストーリーには絡んできません。「善光寺おみくじ殺人事件」の方がぴったりくる内容なんですがね。でも、これだとやっぱり売れないんだろうなぁ。