松本美ヶ原殺意の旅 | geezenstacの森

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松本美ヶ原殺意の旅

著者/ 西村京太郎

発行/ 詳伝社 詳伝社文庫

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 十津川は妻直子の大学後輩笠原由紀から、画家の兄・笠原功が焼身自殺した事件の真相を調べてほしいという依頼を受けた。十津川は功が死ぬ前に長野の美ヶ原に出かける予定だったことを知り、現地に飛んだ。一方、功の恋人・坪井アキコも美ヶ原へ行き、諏訪湖畔で何者かに襲われ、記憶喪失となって病院に収容された。
十津川は功の死を殺人事件として再捜査することを決意し…。---データベース---

 こちらはタイトルに「美ヶ原」と付いていますが、ここでは殺人事件は起こっていません。ただ、事件のきっかけとなった出来事があっただけです。その、真相の究明も新聞社のカメラマンが写した写真と証言だけが唯一の糸口でした。

 最初の焼身自殺に見せかけた殺人、その証言者のガソリンスタンドの関係者はことごとく失踪。鍵となった画家仲間は海外へ逃亡?と不可解な行動が目立ちます。残された自画像の表情は何かを物語っていると十津川警部はにらみます。そこには今までの自画像には描かれていなかった薔薇が書き込まれているからでした。この薔薇が最後に大きなキーポイントになってきますが、ストーリーの中では関係者はその謎を解き明かすことはできません。

 そして、疑惑の友人が描いた自画像にもまた、薔薇が書き込まれていました。こういう伏線がいろいろありながら最初は犯人像が見えてきません。殺された画家、笠原の恋人までもが事件に巻き込まれ、一時的に記憶喪失になってしまいます。しかし、この女性は殺されずにすみます。十津川警部ものでは珍しい部類に入ります。ストーリーの展開上は生きていても殺されてもあまり重要ではないのですが、十津川警部の妻の直子の後輩の知り合いということでの配慮でしょうか。

 事件は美ヶ原よりも舞台を根源となった殺人事件の起こった京都に移して広がりをみせていきます。また、最後には鳥取まで舞台が広がります。ここで、薔薇の謎が解けるのですが、十津川警部たちの事件解決への執念は並ではありません。

 長野県警、京都府警との連携はあまりありませんが、これだけ動き回る本庁の刑事は十津川警部以外いないのではないかと思うほどの行動ぶりです。