十津川警部殺しのトライアングル | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

十津川警部殺しのトライアングル

著者/ 西村京太郎

発行/ 角川春樹事務所 ハルキ文庫

イメージ 1



 群馬県の温泉地で、ほぼ同時期に、三人の若い女性が行方不明となった。水上温泉で、三水めぐみ、草津温泉で山西ひろみ、伊香保温泉で広瀬香織。なかなか捜査にふみきらない警察に、業を煮やした広瀬香織の姉千鶴の依頼を受けた私立探偵橋本豊は、捜査の途上で、東京から来た十津川警部と出会う。一方、都内では少年によるホームレス狩りによる殺人事件が発生。一見、何の接点もないように思われた二つの事件の陰にあるものとは果たして・・・。---データベース---

 十津川警部のシリーズに登場する私立探偵や元刑事というキャラクター設定は、ほとんど殺されて死んでしまうのですが、この小説に限っては死にマシェーン。ということで、見事に裏切られます。

 裏切られるのはそれだけではありません。女性が3人も殺されるのですからこれは連続殺人と思わせられます。しかし、これが途中からとんでもないどんでん返しに。おまけに、ホームレスまで殺されるということで殺人の動機が全く見えてきません。巧いストーリー展開です。事件は二転三転してあらぬ方向に向かっていきます。

 群馬県の温泉での殺人ですからタイトルにその温泉地の名前がついて良さそうなものですが、実際の事件の根は島根県の松江にあります。ここで、上司の三上啓司部長が絡んでくるのが何か政治色を感じさせます。十津川警部と亀さんは意を決して、辞表を胸に入れての捜査を継続します。そういうところに、権力におもね無い十津川警部の正義感を垣間見て痛快です。

 ただ、興味を持たせるためか前半の私立探偵の橋本との捜査の過程で不振な尾行の車が登場するのですが、それは最後まで誰だったのか明らかにされません。青いベンツのスポーツクーペタイプと日産の白いシーマがそれなんですが犯人が後に割れた時の車が何だったのか記載が無いので犯人の車ではないような気がします。いったい、誰が尾行していたのでしょうか。謎のままです。

 こういう、未消化の部分もありますが、本筋は中盤から、後半にかけて一気に氷解していきます。そして、殺人事件が一種のカムフォラージュだったのでは無いかとの推理を立てます。根は深いところにありました。この事件の解決には、マスコミが巧く利用されています。そこに目を付けた十津川警部の作戦勝ちです。

 ストーリーはこれからというところで終了しています。まあ、ここまでくれば解決したのも同然ということでの終了でしょうが、映画でいうなら最後のエンドクレジットが無くて終わっているようなものです。せっかくマスコミを利用して事件を掘り起こしたのですから、そのマスコミの記事を引用する形でエピローグを書いてくれると良かったと思うのは小生だけでしょうか。