隠れた指揮者の名演シリーズ1 | geezenstacの森

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ハイドン&シューベルト 交響曲集

曲目 
1.シューベルト交響曲第5番ロ長調D.485
2.ハイドン/交響曲第49番ヘ短調「受難」

指揮/ジョン・ラバック
演奏/聖ジョン・スミス・スクエア管弦楽団

録音 1981/04 聖ジョン・スミス・スクエア教会
P:ジョン・ボイデン
E:トニー・フォークナー

英IMP PCD 819

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 指揮者ジョン・ラバックは1990年代にIMPを皮切りにASV、CARTONなどのレーベルにかなりの録音を入れています。オーケストラの聖ジョン・スミス・スクエア管弦楽団は1967年にジョン・ラバックが創設したオーケストラで、彼は芸術監督を務めているようです。このCDは最初期の一枚でした。一応DDD録音なので音質的には良好です。 ラバックのCDはイギリス本国ではけっこう出ています。まあ、中堅指揮者といった所でしょうか。

 どういうコンセプトでこの2曲が選ばれたのかは分かりません。統一的な内容なら、シューベルトは交響曲第4番「悲劇的」を持ってきた方が良かったのではと思いますが、そういうこだわりは無いようです。鑑賞するイメージでは、曲想の明るい印象のシューベルトと暗い感じのハイドンを並べたというところでしょうか。
 
 シューベルトは下記のタイミングで見ると、第1楽章からして落ち着いたテンポで演奏しているように見受けられますが、聴感上は快適なアレグロです。元々、小編成のオーケストラ用に書かれた作品なのでここでの演奏は違和感はありません。クリアな録音に加えて各楽器がオンマイクで鮮明に捉えられていて、まことに小気味よい演奏になっています。とくにフルートのソロはひときわ華やかに響きます。

 第2楽章も、じっくり旋律を歌わせた演奏で好感が持てます。第3楽章はもう少し早くても良いかなと思いますが、ここは第4楽章との比較で考えると妥当かもしれません。

シューベルト交響曲第5番ロ長調D.485
指揮者第1楽章第2楽章第3楽章第4楽章
ジョン・ラバック盤7:1411:435:155:38
ブルーノ・ワルター盤5:5210:385:006:24
イシュトヴァン・ケルテス盤6:429:565:075:35

 ハイドンの交響曲第49番はアダージョで始まる作品で、ニックネームもハイドン自身が付けたものではないのですが、この第1楽章だけ聴いてもそのニュアンスは充分伝わります。比較してみるとずいぶん早そうですが、こちらはゆっくりに感じられます。フィッシャーほど濃いめの味付けはしていないので、曲本来の持つバロックの教会様式の持つ厳粛性が感じられます。

 これに対して主調と同じなのに第2楽章は快活なアレグロになります。音楽之友社の「名曲解説全集」によるとハイドンのシュトルム・ウント・ドランク時代のソナタ形式の楽章の中でも傑出した例の一つと紹介されています。たしかに、この楽章は単独で取り出して聴いても鑑賞に堪えられるだけの内容を持っています。ラバックの演奏も丁寧な演奏でこの楽章の持ち味を良く表現しています。これに呼応した第4楽章も魅力的な楽章で、オーボエとヴァイオリンによる掛け合いの主題が魅力的です。悲劇的な緊張感のある主題ですが、あっという間に終わってしまうのが惜しい楽章です。フィッシヤー盤と比較しながら聴きましたが、明快な旋律の歌わせ方と良い各楽器のバランスと良いラバック盤の方が音楽製豊かな響きとバランスで好感が持てました。

ハイドン/交響曲第49番ヘ短調「受難」
指揮者第1楽章第2楽章第3楽章第4楽章
ジョン・ラバック盤7:506:504:543:06
アダム・フィッシヤー盤8:206:194:202:57
アンタル・ドラティ盤10:204:285:433:20

 さて、オーケストラの母体となっている聖ジョン・スミス・スクエア教会、ここは由緒ある教会のようで、ホームページも充実しています。ビック・ベンのすぐ前にあるそうです。