曲目
ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
指揮/エーリッヒ・ラインスドルフ
演奏/ボストン交響楽団
録音 1962。ボストン・シンフォニーホール
P:リチャード・モア
E:ルイス・レイトン
リ・マスタリング SV:アンドレ・カウシャー E:アンソニー・サルバトーレ
演奏/ボストン交響楽団
録音 1962。ボストン・シンフォニーホール
P:リチャード・モア
E:ルイス・レイトン
リ・マスタリング SV:アンドレ・カウシャー E:アンソニー・サルバトーレ
RCA VICTROLA 7878-2-RV


普通「エロイカ」の第1楽章は、力強い2小節の和音で始まるのですが、このラインスドルフの演奏は裏切られます。何とも芯のない鳴らし方で、休止符を無視してスラーでつなげてしまっています。こんな開始なのですが、その後は快調なアレレグロ・コンブリオです。元々ラインスドルフは名トレーナーとしての腕の持ち主でしたからアンサンブルは見事です。耳が良いんでしょうね。各楽器の音が非常にバランスよく響き、生理的にはα波いっぱいの演奏になっています。冒頭以外、けっして、これと言って特徴のある演奏ではないのですがドイツ風の重厚な響きでボストン響をドライブしています。コーダの部分のトランペットも当時の慣習に従って吹かせていて来ほめてオーソドックスな味付けです。
第2楽章もこれといって深刻ぶった表情付けは無く、淡々と譜面を音にしています。ミュンシュ時代にやや低下していたアンサンブルを立て直して、素晴らしい弦楽をベースに音楽を組み立てています。
第3楽章はホルンが活躍しますが、ここでもバランス感覚が優先して耳当たりの良いスケルツォとなっています。
第4楽章もスケール感のあるフィナーレで堂々としたベートーヴェンが繰り広げられます。とくに朗々と響き渡るホルンの音が印象的です。これだけ充実した演奏だと、これ1曲で堪能出来ます。
意外にも、ボストン交響楽団のベートーヴェンの交響曲全集はこのラインスドルフが唯一です。ミュンシュもモントゥーも、そして29年間常任指揮者をしていた小澤でさえ全曲は録音していないのです。それだけ、着任当初はラインスドルフに対する期待が大きかったことを物語っています。しかし、トレーナーとしての仕事を優先しすぎたのかオーソドックスな録音に終始してしまい、人気は今イチぱっとせず、わずか8シーズンで辞任しています。

廉価盤ということで、英雄1曲しか収録されていませんが、この曲だけ聴きたい時にはこのCDを取り出して聴く機会が多いのも事実です。実は、ラインスドルフの「英雄」はもう一枚所有していて、そちらはオーマンディの「ウェリントンの勝利」という珍しい作品を収録しているので思わず買ってしまいました。