ルプーのベートーヴェン | geezenstacの森

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ルプーのベートーヴェン

ピアノ協奏曲第3、4番

曲目
ベートーヴェン
1.ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37
2.ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58*

 

ピアノ/ラドゥ・ルプー
指揮/ズビン・メータ
演奏/イラエル・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音 1979/03、1977/02* フレデリック・R.マンオーディトリウム,テル・アビブ
P: レイ・ミンシャル
E: ジェイムズ・ロック、ジョン・ベロウ
  サイモン・イードン*
独DECCA 425000

 

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 海外では、2005年11月30日に還暦を迎えたラドゥ・ルプーをたたえて、ピアノ協奏曲を含む4枚組のアルバムが発売されましたが、日本では人気がないのが全集での発売はありませんでした。ルプーは、1966年にヴァン・クライバーン・ピアノ・コンクールを皮切りに1967年のエネスコ・コンクール、1969年のリーズ国際コンクールに次々と優勝し、早くから世界的名声を確立しました。その後メジャーなデッカからデビューし世界的な名声を博しました。このベートーヴェンのピアノ協奏曲もその一連の流れの中で録音された物です。

 

 

 

 

 このベートーヴェンはメータがサポートしていますが、メータはこの後アシュケナージの全集でもサポートしています。まあ、そちらの方がバックがウィーン・フィルということもあって評価が高いので、このルプーの協奏曲全集は評論家でこれをあげる人はほとんどいません。でも、メータの好サポートで曲の輪郭が引き締まって聴こえます。この頃のイスラエル・フィルは弦を中心に非常にまとまったオーケストラで、メータの他にもケルテスやバーンスタインがよく振っていました。

 

 特に第3番はルプーのタッチも強靭で、メータとの丁々発止のやりとりで力強い音楽を作り出しています。鋭い音の立ち上がりにもかかわらず繊細な音で、伝統的なドイツ封の重厚さは感じられませんがこの曲の魅力は充分伝えています。第4番も同様の傾向で音楽の仕上がりはアシュケナージ盤に負けない演奏を展開しています。このころのメータは輝いていて、実にスケール感のある音楽を聴かせていましたし、メータ自身はブレンデルのベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番でデビューをしているので伴奏は手慣れたものです。ルプーもそれに応える快演を聴かせてくれます。ルプーのメジャーデビュー盤はグリークのピアノ協奏曲で、こちらはやや力が入りすぎて少々ついていけない所があるのですが、このベートーヴェンは素晴らしい出来です。

 

 

 

 

 95年以降は、レコーディングをほとんどしなくなってしまったのは残念なことです。
 
*追記
ラドゥ・ルプーは2022年4月17日スイスのローザンヌで亡くなりました。享年76歳だったでした。1993年以降は一切の録音や放送収録、インタビューを拒み、この数年は体調不良によるキャンセルが増え、2018/2019シーズン終了をもって演奏活動から引退ていました。ご冥福を祈ります。