「VIVALDI CONCERTI GROSSI」はタイトルと中身と大違い
曲目1. 奏協奏曲集 「調和の霊感」作品3より 第8番 *
2. マンドリン協奏曲ハ長調 RV 425
3. 奏協奏曲集 「調和の霊感」作品3より 第10番*
4. 2つのオーボエ、2つのホルンとヴァイオリンのための協奏曲 へ長調 RV.571
5. 奏協奏曲集 「調和の霊感」作品3より 第11番 *
6. 弦楽のための協奏曲イ長調 RV 158 *
演奏/ザグレブ合奏団*
サン・マルコ合奏団
サン・マルコ合奏団
Bella Musica BM-CD 31.2002

BELLA MUSICAというマイナーなレーベルで、詳しい解説も何も無い怪しげなCDです。JANコードから推測するとドイツのメーカーらしいのですがPILZ同様海賊版に近いのかもしれません。
一応録音は演奏者にザグレブ合奏団(ザグレブ室内管弦楽団)とサン・マルコ合奏団の名前が挙がっています。ザグレフ合奏団というとアントニオ・ヤニグロが創設した団体ですが、ヤニグロ亡き後は1978年からはズラタン・スルジッチが指揮者に就任しつい最近まで活躍していました。一応DDDの表記のある演奏ですから1980年代中頃以降の録音と言えますが、ヤニグロの時代で無い事は確かです。インターネットで検索すると、この団体の録音が指揮者アントン・ナヌートで他のレーベルから発売されているのが確認出来ました。そこも怪しげなレーベルですから確証は持てません。また、サン・マルコ合奏団も指揮がアルベルト・リッツィオでディアゴスティーニから発売されていた「The Classic Collection 」に収録されていた音源と推測されます。ということで、こちらは幽霊団体ということになります。
能書きはそれ位にして、1曲目のOp3-8はバッハがオルガン協奏曲(第2番BWV.593)に編曲したことでも知られるようによく知られた作品です。小生などずっと後までバッハの作品とばかり思っていました。曲はアレグロ-ラルゲット-アレグロの様式で書かれた作品で、ザグレブの演奏はやや遅めのテンポですがじっくりと曲の輪郭を描いています。3曲目のOp.3-10、5曲目のOp.3-11も同様な傾向できらびやかな華やかさはありませんがまずは無難な演奏です。Op.3-10の第2楽章などは「四季」の冬の第2楽章にも匹敵する出来で、この楽章を入れ替えても遜色は無いと思えます。もちろん、冬のラールゴは素晴らしい作品ですが・・・こザグレブ合奏団、もし、ナヌートが指揮しているとすると、堅実な指揮をする人なので安心して聴いていられます。
これに対してサン・マルコ合奏団の演奏は音量レベルが低く、損をしています。マンドリンのために協奏曲は極端に収録レベルが低くザグレブの次に聴くと何とも貧弱に聴こえてしまいます。しかし、演奏は清楚なもので、これだけ聴けばけっこう真っ当な演奏です。何の表記もしてありませんがこの団体は古楽器で演奏しているようで柔らかいサウンドで好感が持てます。音量的に変化が乏しいのは楽器のせいでもありますが、ホールトーンを取り入れたサウンドは聴きやすくいいバランスです。
とくにめずらしい、4曲目の「2つのオーボエ、2つのホルンとヴァイオリンのための協奏曲」は古色蒼然たるホルンの響きが独特の雰囲気を醸し出しており、このアルバムの中でも出色の仕上がりになっています。不思議とスピーカーで聴くよりヘッドフォンで聴いた方がすっきりしたバランスとサウンドでより雰囲気を楽しむことが出来るようです。
ということで、曲の配列が何の意味があってOp.3をバラバラに配置しているのか分かりませんが、並べ替えの機能のある装置で聴くとそれなりの纏まりができけっこう楽しめます。まあ、現代楽器によるザグレブと古楽器のサン・マルコを同じレベルで比較しても意味はありません。どちらも、それなりにいい意味、曲の本質を突いた演奏で気軽に楽しんで聴く分には何の不足もありません。
録音は確かにDDDで良い音しています。