ブラームスの交響曲第1番 その1 | geezenstacの森

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フィレンツェ5月音楽祭のバーンスタインのライヴ

曲目

ブラームス  交響曲第1番
ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」
       劇的交響曲「ロメオとジュリエット」~マブ女王のスケルツォ

指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/フィレンツェ5月音楽祭管弦楽団
録音1967/06/01
  フィレンツェ,イタリア
伊SIRIO SO5502-1

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 バーンスタインはライブで熱く燃えるタイプの男を証明するディスクです。正直言ってニューヨーク・フィル時代のバーンスタインはあまり好きではありません。ちっとも面白く無いからです。本人もそれが分かっていたのでしょうかDGに移籍してからの彼の録音はライブが多いのが特徴です。

 今回ひょんな事で入手したこのブラームスの一番は1967年のフィレンツェでのライブです。あまり中身の事は気にせずに、ジャケットがかっこ良かったので購入したのですが最初ブレーヤーに掛けて出てきた音を聞いてがっかりしました。1967年といえば完全にステレオ録音の時代のはずですが、この録音はモノラルでしかも1950年代以前の音でしかありません。スペアナで見ても1万Hz以上は極端に低レベルです。まるで、低レベルのAMラジオの音を聞いているような印象です。海賊盤なのでしょうか。

 でも聴き進むに従って演奏の熱さに引き込まれてしまいます。第1楽章の開始の連打音は淡白で肩すかしを食いますが、以降は他流試合に挑んで必死にオーケストラをコントロールするバーンスタインの熱い息吹がひしひしと感じられます。貧しい音の向こう側にステージでいつものように跳ね回り、フレーズを唸りながら汗を飛び散らしながら指揮する姿が目の前に浮かんできます。

 とくに第4楽章は壮絶で指揮台の上を飛び回り足を踏み鳴らす音が随所に聴き取れます。時にはオーケストラのアタックの前にその一音がティンパニのアタック音のように響き劇的効果(?)をあげています。こういうバーンスタインのゼスチャーに臨時編成であろうオーケストラは必死に喰らいついていっています。これは演奏の高い完成度を聴くというより,指揮者とオケとが精魂を傾けて優れた演奏を成し遂げようという純粋な姿勢にこそ説得力のある演奏なのではないかと思います。まさに、一期一会の出会いが成せる歴史的記録ということで、音のまずさはさておいて記憶に残る名演といえます。

 続いて演奏されているベルリオーズの「ローマの謝肉祭」は,実際にはコンサートの第1曲で演奏されたのではと思われます。さあ。お手合わせしましょうという雰囲気で、オーケストラのデモンストレーションを兼ねて、ドラスティクに明るく抜けきった演奏を繰り広げているのが印象的で,聴いていて実に爽快です。最後の「マブ女王のスケルツォ」はアンコールピースとして演奏されたものでは無いようで、明るい表現で楽しめる演奏を聴かせてくれていますが最後に静かに終わるので聴衆はやや戸惑っているようにも聴こえます。

 バーンスタインの60年代のライブは限られていますので、このディスクは彼の他流試合としての記録としても貴重な記録といえるでしょう。所々音がドロップアウトしてソースの状態が良くないのが残念です。