ベーム/ウィーンフィル1975年のシューベルト
曲目1.シューベルト/交響曲第9番「ザ・グレート」
2.ワーグナー/「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲*
3.シュトラウス/喜歌劇「こうもり」序曲*
指揮/カール・ベーム
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1975/03/19
1975/03/25*
NHKホール,東京 ライブ

1975年来日のライブレコーディングによる「ザ・グレート」です。この時の公演はNHKが放送収録しテレビ・FMで全国放送してくれました。まあこれは「放送開始50周年記念事業」としてNHKが招いた公演だったので当然だった訳ですが、おかげで小生もFMでエアチェックしてカセットテープに録音し良く聴いたものでした。ベームはこの時は気力、体力ともに充実していたようで素晴らしい名演の数々を聴かせてくれたものです。
ベームは、60年代にシューベルトの交響曲全集をベルリンフィルと録音していてLPで所有していましたが、それよりもこのライブは、テンポといいハーモニーといい実に雄大でまさに天国的な時の流れを作り出しています。下記はそのデータですが79年のドレスデン・シュターツカペレよりもゆっくりとした演奏になっています。録音 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 | 第4楽章 |
1963年盤/ベルリンフィル | 14:13 | 13:44 | 11:121 | 11:20 |
1975年盤/ウィーンフィル | 14:59 | 14:28 | 12:07 | 12:33 |
1979年盤ドレスデン・シュターツカペレ | 13:57 | 13:30 | 11:00 | 11:34 |
第1楽章のホルンによる主題からして悠々としたテンポで、それが弦楽に移ってもそのインテンポは変わらず本当にスケールの大きな音楽が紡ぎ出されています。ウィーンフィルならではのシルキーな美しい調べに乗ってシューベルトの夢の世界へ誘われます。
続く第2楽章も悠々自適のテンポは変わらず、この演奏を当日ライブで聴けた人はどんなに幸せだった事でしょう。とにかく、ベームは晩年はテンポが遅くなり老害を感じさせる演奏もありましたが、この演奏はまだまだそれとは無縁です。当時の演奏記録によると。ベームは下記のプログラムを演奏しています。
3月16日 NHKホール
日本、オーストリア両国の国歌演奏
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
3月17日 NHKホール
ベートーヴェン:レオノーレ序曲 第3番 作品72a
ストラヴィンスキー:バエレ組曲《火の鳥》(1919年版)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
ストラヴィンスキー:バエレ組曲《火の鳥》(1919年版)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
3月19日 NHKホール
シューベルト:交響曲第8番 ロ短調 D759《未完成》
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調 D944《グレイト》
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調 D944《グレイト》
3月20日 NHKホール
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
3月22日 NHKホール
ベートーヴェン:レオノーレ序曲 第3番 作品72a
ストラヴィンスキー:バエレ組曲《火の鳥》(1919年版)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
ストラヴィンスキー:バエレ組曲《火の鳥》(1919年版)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
3月23日 NHKホール
シューベルト:交響曲第8番 ロ短調 D759《未完成》
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調 D944《グレイト》
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調 D944《グレイト》
3月25日 NHKホール
モーツアルト:交響曲第41番 ハ長調《ジュピター》
J.シュトラウス:円舞曲《南国のばら》 作品388
J.シュトラウス:アンネン・ポルカ 作品117
J.シュトラウス:皇帝円舞曲 作品437
J.シュトラウス:常動曲 作品257
ヨハン/ヨーゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
J.シュトラウス:喜歌劇《こうもり》序曲
J.シュトラウス:円舞曲《南国のばら》 作品388
J.シュトラウス:アンネン・ポルカ 作品117
J.シュトラウス:皇帝円舞曲 作品437
J.シュトラウス:常動曲 作品257
ヨハン/ヨーゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
J.シュトラウス:喜歌劇《こうもり》序曲
ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲」は最終日のアンコールの第1曲目、そして喜歌劇《こうもり》序曲は2曲目のアンコールでも演奏されました。この日がベームの持ち分の最後の演奏会とあって、アンコールにも熱が入っています。ウィーンフィルも余分な力がとれて実にのびのびとしたワーグナーの演奏です。いつもより金管が張り切って吹いています。まあ、爆演の部類に入る演奏でしょう。
多分音響的には、1977年や1980年の昭和女子大学人見記念講堂での演奏の方がいいとは思うのですが、演奏の質の点ではこの1975年の演奏の方が遥かに充実していると言ってもいいでしょう。