ベルマンとフェラスのチャイコフスキー | geezenstacの森

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チャイコフスキー

ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲

曲目/チャイコフスキー
1.ピアノ協奏曲第1番ロ短調Op.23*
2.ヴアイオリン協奏曲ニ長調Op.35**
ピアノ/ラザール・ベルマン*
ヴァイオリン/クリスチャン・フェラス**
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1975/11,フィルハーモニー,ベルリン*
   1965/11/6-11,イエス・キリスト教会,ヘルリン**
P: H.ヒルシュ,M.パトベルク*
オットー・ゲルデス**
E: ギュンター・ヘルマンス

 

独DGG 429166-2

 

イメージ 1

 

 ラザール・ベルマンも忘れかけられているピアニストでは無いでしょうか。リヒテルの後を追って1970年代に西側に現れこのCDの様にカラヤンと共演するなどして話題になりました。カラヤンはステレオ以降ではリヒテル、ワイセンベルクもそしてこのベルマンとチャイコフスキーを録音していますが、小生はこのベルマンとの共演が一番好きです。下記はカラヤンの録音タイミングですがベルマンとの演奏が一番、第1楽章のタイミングが早くなっています。そして、ベルマンは1986年にテルミカーノフと原典版で再録音していますがほとんどタイミング的に違いがありません。これはカラヤンを向こうに回して自分のテンポで録音を押し進めていたからではないでしょうか。
 
録音 第1楽章 第2楽章 第3楽章
ベルマン盤 21:55 7:57 7:13
リヒテル盤 22:07 6:55 7:09
ワイセンベルク盤 23:12 8:48 7:31
ベルマン原典版 21:40 7:30 7:38

 第1楽章から実に堂々とした鳴らしっぷりで痛快です。リヒテル盤は何処か神経質な所があり、ワイセンベルクは技巧でバリバリと弾きまくるだけのような印象が強いので、そういう意味でもカラヤンと対等に距離を置いて、自己主張をしながらベルマン流のチャイコフスキーを組み立てているベルマンは好きです。

 

 

 

 

 ピアノは中央にきっちりと定位し堂々の鳴りっぷりなのですが、オーケストラの低域がちょいとだぶつき気味なのが気になります。73年頃まではイエス・キリスト教会が使われていましたがこの頃は全面的にフィルハーモニーホールで録音されるようになっていました。しかし、まだ75年当時は音のバランスがどことなく悪いものもあったのでしょうか、この録音もそういう面では損をしています。これに引き換え。65年のヴァイオリン協奏曲のほうは今となっては音質的には十全ではありませんがバランスの麺では完成されたベルリンフィルの音を聞くことができます。

 

 ピアノ協奏曲はラザール・ベルマンの技が光りますが、ヴァイオリン協奏曲はクリスチャン・フェラスが担当してこちらも骨太のチャイコフスキーを聴かせてくれています。しかし。フェラスも忘れかけられているヴァイオリニストでしょうね。

 

 フェラスは若い頃は才能があり、1949年、わずか15歳でロン=ティボー国際コンクール第2位(1位なし)を獲得しました。その後、華々しくヨーロッパで活躍するようになり、カラヤンの信望を得て、ドイツ・グラモフォンから次々と有名な協奏曲を録音するようになります。しかし、70年代以降伸び悩みが伝えられ、ストレスからか、アルコール依存症に罹り、1982年9月15日、フランスのパリで死去しました。自殺説も取りざたされていますが、49歳の若さでした。

 

 ところがこの録音はあまり評価されていないんですねえ。という小生も聴くまでは期待していませんでした。ところが、カラヤンのサポートのもとこちらも非常に充実した響きと演奏で聴き惚れてしまいました。所々、巨匠時代の名残かルバートや節回しに古さを感じる所がありますが、何の何の。ハイフェッツよりは遥かに面白い演奏を聴かせてくれます。

 

 特に第2楽章以降はジプシー・ヴァイオリンのような独自の味付けがあり、新しいチャイコフスキーの一面を発見出来ました。

 

 

 この組み合わせの国内盤も以前はあったようですが現在は廃盤になっていて残念です。

 

追記

 

 ベルマンも2005年2月6日、フィレンツェの自宅で亡くなられました(享年74歳)。原因はインフルエンザと伝えられています。