フルニエ/セルのドヴォルザーク
曲目
1.ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調Op.104*
2.ブロッホ/チェロと管弦楽のためのヘブライ狂詩曲「シェロモ」***
3.ブルッフ/コル・ニドライ**
<チェロ>ピエール・フルニエ
ジョージ・セル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団*
アルフレッド・ウォーレンシュタイン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団***
ジャン・マルティノン/ラムルー管弦楽団**
2.ブロッホ/チェロと管弦楽のためのヘブライ狂詩曲「シェロモ」***
3.ブルッフ/コル・ニドライ**
<チェロ>ピエール・フルニエ
ジョージ・セル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団*
アルフレッド・ウォーレンシュタイン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団***
ジャン・マルティノン/ラムルー管弦楽団**
P:エルザ・シラー
D:H.ウェーバー
E:ギュンター・ヘルマンス
D:H.ウェーバー
E:ギュンター・ヘルマンス
録音1962/06/01-3*,1960/05**,1966/10***
ベルリン*,**、パリ***
独DG 429155-2

もう40年近くこの演奏を聴いてきていますのに今名をこの演奏を超えますものが見つからない状況です。刷り込みとは実に恐ろしいもので、この演奏がディフェクト・スタンダードになっていますのでこの基準から外れますものを排除してしまっていますのかもしれません。しかし、意外にも小生はこの演奏はエアチェックしたカセットを持っていただけでLPでは所有していませんでした。
語り尽くされた感のあますディスクで、LP時代から名演の誉れ高くこの曲のベストCDにも常にランクインしています。確かにこの演奏の前では他の演奏はどこか小細工していまるような印象があり疑ってしまうのです。オーケストラもいつものクリーヴランドとは違い同じ、緻密なアンサンブルながらベルリン・フィルということで全体に音に重厚さを感じます。全体にきびきびとした展開でオーケストラとチェロのぶつかり合いがいい緊張を醸し出しています。
それにしても、ここで聴かれるセルとフルニエの一期一会ともいえる演奏は気迫がみなぎっています。当時セルは米コロンビアの専属アーティストだったはずです。しかし、DGへのこの録音を初め、
DECCAへはベートーヴェンのエグモントの音楽をそしてフィリップスへはシベリウスの交響曲第2番やベートーヴェンの交響曲第5番などを残しています。思うにコロンビアにはバーンスタイン/NPOやオーマンディ/フィラデルフィアという甲板アーティストも専属で抱えていましたから、セル/クリーヴランドは常に3番手でしかなく思うようなレパートリーを録音させてもらえない状況であったのでしょう。でも、こういう名演が残されたのですから我々聴き手にとってはその方が結果的には良かったと言えるのかもしれません。
DECCAへはベートーヴェンのエグモントの音楽をそしてフィリップスへはシベリウスの交響曲第2番やベートーヴェンの交響曲第5番などを残しています。思うにコロンビアにはバーンスタイン/NPOやオーマンディ/フィラデルフィアという甲板アーティストも専属で抱えていましたから、セル/クリーヴランドは常に3番手でしかなく思うようなレパートリーを録音させてもらえない状況であったのでしょう。でも、こういう名演が残されたのですから我々聴き手にとってはその方が結果的には良かったと言えるのかもしれません。
第1楽章は出だしから寸分の隙もない演奏でドヴォルザークが譜面に書いた音がそのまま鳴っているように感じられます。この録音の1962年と言えばカラヤンが第1回目のベートーヴェンの交響曲全集を録音している最中で、すでにカラヤン・トーンに染まっているはずですが、そこはベルリンフィルです。セルの棒にぴったり柔軟に応え、素晴らしいドヴォルザークの世界を表現しています。惜しいのはホルンの音がゴツゴツとした印象でやや滑らかさにかける点でしょうか。フルニエのソロの音はオンマイクで収録されており、すこぶる力強い演奏ですが格調高く品があります。オーケストラとのやりとりも絶妙でチェロとオーケストラががっちりと四つに組んだ演奏に仕上がっています。第2楽章も切々と奏でるチェロの音色は艶やかで、哀愁があり思わず聴き惚れてしまいます。第3楽章もセルの棒はぴったりとフルニエをサポートし緊張感の高い演奏を展開します。ステレオ初期の録音ながら非常に聴きやすい音で、録音の古さなどみじんも感じさせない迫力です。
つづく、ヘブライ狂詩曲「シェロモ」という名のように狂詩曲で緩-急-緩で構成されていますが一応自由形式になっていてブロッホの代表曲といって差し支えないでしょう。さて、このブロッホの「シェロモ」は、いたってムードミュージック風の演奏で感心しません。特にトランペットなど金管の響きが安っぽく、ちゃらちゃらした映画音楽のように聴こえてしまいます。フルニエのチェロはユダヤの神秘的な旋律を細やかに演奏しているだけに惜しまれます。
3曲目のコルニドライはオールフランスキャストによる演奏です。ヘブライの旋律によるアダージョ〜作品47というのが正式名称のようですが、確かに10分前後の曲で気持ちよく時間が過ぎ去ります。ひたすらゆったりと優雅にシミジミと歌い続ける旋律は、食後のソファーでくつろいで聴くにはもってこいの曲です。ここでも、フルニエは情緒豊かにチェロを謳わせリラックスした気分で弾いています。上手い語り口です。バックのマルティノン/ラムルー管弦楽団も寄り添うような好サポートです。派手さは無いもののフルニエのチェロは心に染み入ます響きを共感させてくれる好ディテスクとなっています。
追記
ライナーには録音場所の明記はありませんが、ドヴォルザークはイエス・キリスト教会かと思われます。LP時代には低音がダブって締まりのない音に聴こえたのですが、CD時代になってこのリマスタリングでバランスの良い締まりのある音に生まれ変わっています。個人的には、LP時代のDGの音は同様な傾向があったのであまり買わずにいました。