ハリウッドボウル交響楽団の映画音楽 | geezenstacの森

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The Movies Go to the Hollywood Bowl
 
曲目
1.ニユーマン/征服への道 (1948)から「征服」
2.ガーシュイン/セカンド・ラプソディ
3.ニューマン/愛欲の十字路 から詩編23編
ニューマン/聖衣から
4.Palm Sunday
5.ハレルヤ
6.チヤールス・ウィリアムズ/オルウェンの夢
キング・オブ・キングスより
7.出生
8.十字架への路
9.ピエタ
10.キング・オブ・キングス/テーマ
11.ローザ/白い恐怖協奏曲
ローザ/「エル・シド」より
12.序曲
13.愛のテーマ
14.エル・シド・マーチ

 

指揮/アルフレッド・ニユーマン 1-5
   ミクロス・ローザ 6-14
ピアノ/レナード・ペナリオ 2,6,11
演奏/ハリウッドボウル交響楽団
EMI CDM 763735-2

 

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多分2枚のアルバムをコンピュレーションしたものだと思いますが元のオリジナルは分かりませんでした。大体、ハリウッドボウル交響楽団のCDさえ日本ではまともに発売されていません。でも、映画音楽ファンにとってはアルフレッド・ニューマン、ミクロス・ローザの2代巨匠が自作自演しているのですから見逃せません。
 1曲目の/征服への道からの「征服」はアルフレッド・ニューマンの代表作の1つで、何といってもラストで流れる(征服)」マーチが有名です。この曲はアメリカの映画音楽作曲家が書いたマーチとしては、エルマー・バーンステイン作曲の「大脱走」マーチ等と並んで、最も広く親しまれている曲の1つだと思います。ジョン・ウィリアムス指揮ボストン・ポップスをはじめとしたカバー演奏も多数存在します。ニューマン自身はこの映画のスコアを組曲にして録音したものも存在するようです。ファンファーレが響き勇壮なマーチが華を添えます。

 

 

 2曲目はご存知ガーシュインの曲ですが、あまり演奏される機会は無いようです。有名な「ラプソディ・イン・ブルー」は実際にはグローフェの編曲なんですがこちらは正真正銘ガーシュインがオーケストレーションした曲です。1931年の作品でラプソディを彷彿とさせる作品です。ガーシュインはこの曲を「ピアノ独奏とオーケストラのための曲」ではなく「ピアノを伴ったオーケストラのための曲」としたということです。14分ほどの曲ですがペナリオのこなれたピアノがジャジーで楽しめます。これ、映画音楽とは全然関係ないのですが聴き方によっては映画音楽に聴こえます。

 

 

 愛欲の十字路からの詩編23編はハープの和音で始まる格調高い音楽です。聖書による「主は羊飼い」という有名な一編なのですが、小生はキリスト教に疎いので下記を参照してもらうといいでしょう。
http://www.mikio.wada.catholic.ne.jp/PS_23.html
さて、音楽は荘厳で金管の分厚いサウンドと金の音が印象的です。

 

 聖衣」からの音楽では「Palm Sunday」がルネッサンスの舞曲を彷彿させるのジョスカンデュプレやスザートなどの金管のサウンドとタンバリンの音が新鮮に響きます。一転して「ハレルヤ」はおよそ賑やかな曲とは違いハープとホルンの厳粛な響きで始まり続いて電子音と金管の不思議なサウンドのアダージョが続き、最後にようやくハレルヤらしいメロディで締めくくられます。アルフレッド・ニューマンの音楽は奥が深いです。

 

 チャールズ・ウィリアムズの「オルウェンの夢」はけっこう録音されているのですがその出典となる映画に付いてはタイトルこそ「While I Live」ということは分かっているのですがキネ旬のデータベースでも検索できませんでした。どうもスリラー映画らしいのですが詳しい内容は分かりません。ここではピアノと管弦楽の作品として演奏されています。リチャード・クレイダーマンも録音しているくらいですから欧米では人気のある曲なんでしょうね。

 

 後半はミクロス・ローザの音楽です。これを聴くとジョン・ウィリアムズの偉大な先輩である事が分かります。「キング・オブ・キングス」と「エル・シド」の音楽が大半を占めていますが、そのメロディラインを重視した音作りは映画音楽の王道をいっています。ま、実際、ジョン・ウィリアムズはローザに師事していた事があります。重厚な弦楽器によるオーケストラ・サウンドと金管の扱いは見事です。ところで、11曲目に「白い恐怖協奏曲」というのがあります。「白い恐怖」はヒッチコックの作品でイングリッド・バーグマンとグレゴリーペックが主演した病院を舞台にした映画です。まるでアディンセルのワルソー・コンチェルトなみにピアノが活躍する協奏曲でここでも華麗なペナリオのピアノを聴くことができます。このアルバムには都合3曲のピアノをフューチャーした曲がありますが、これを一気に聴くと、作風は違いますがまるで1曲のピアノ協奏曲のように感じます。

 

 

 このオーケストラは、ライナーノートによるとカーメン・ドラゴン(1914-1984)によって組織された、ハリウッド映画スタジオで働く音楽家たちの自主運営団体であるということです。「グレンデール交響楽団」というのが正式名称ということなのですが、彼らは決して本名では録音せず、CBSへはコロンビア交響楽団、RCAへはRCAビクター交響楽団、キャピトルへはキャピトル交響楽団あるいはハリウッドボウル交響楽団と、それぞれ名乗って出演しています。ブルーノ・ワルターの最晩年の録音で活躍したオーケストラの実体が、まさかこのオケだったとは本当に驚きです。実際、あらためて聴いてみるとfl4Zs@-@4.、なかなかしっかりした演奏をしています。けっしてロスフィルの別働隊ではありません。