SONY BMG RCA 82876 70830
これは昨年発売された交響曲全集の中の一枚です。録音は1979年と新しくはありませんがこの全集で初めて日の目を見た録音です。というのも、もともとこのドヴォルザークの録音はSONYで行われていたものですが数点発売されてお蔵入りになっていたものです。日本では交響曲第7,8番のカップリングで1枚だけソニーから1996年に発売されました( SRCR-1642)。今回このCDはBMGの看板レーベル「RCA REDSEAL」から発売になりました。日本では特殊な事情があってBMGとSONYは別会社のままですが世界的には合併して同一の会社になっているんですねえ。それゆえ会社の枠を超えての発売が可能となったということです。
肝心の曲ですが、この曲は小生が一番好きな曲です。そうなんです「新世界から」よりも「イギリス」よりも好きなんですね。順番でいうと第2番、次いで8番、9番、7番・・・・という順になります。一般にはニックネームも何も付いていないのであまりというかほとんど知られていません。でも、一度聴いたらそのメロディの美しさに魅かれるのではないでしょうか。初期の交響曲にもかかわらず、作品的には完成された内容です。それもそのはず、1865年には完成していた楽譜はお蔵入りとなり、1888年になって改訂された後初めて公開されたのですから。つまりは8番が作曲される前年に完成したといえる内容なのです。
デイヴィスのこの録音はまだ30代の若さですが、若さに似ずツボを心得た“聴かせ上手”ぶりと、さわやかな聴後感を残す清涼なリリシズムという個性は既に明瞭、1973年から准指揮者として関わってきたフィルハーモニア管弦楽団との相性も良く、いわゆる民俗的な要素に寄りかからない清々しい表現が聴きどころとなっています。この年で全集を録音したのは彼が初めてです。紹介されている彼のプロフィールは以下のようになっています。
アンドルー・デイヴィスは1944年生まれ。オックスフォード大学キングス・カレッジでオルガンを学びますが、在学中から指揮の才能を認められ、卒業後ローマの聖チェチーリア音楽院へ留学、フランコ・フェラーラに指揮法の基礎を授かります。帰国後は英ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー協会に選抜されて経験を重ねる一方、ネヴィル・マリナー率いるアカデミー・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの鍵盤楽器奏者としてプロの演奏家の道を歩み始めます。
その運が急展開をみせるのは、1970年11月、准指揮者のポストにあったBBC交響楽団の演奏会で急遽代役指揮を務めてセンセーショナルな成功を収めてから。翌年からはイギリス国内の主要オケに次々と客演する多忙な日々がはじまり、1970年代なかばにソニーからレコーディング・デビューをはたした時には、既に若いながらも場数を踏んだ経験豊かな指揮者へと成長を遂げていました。
さて、この全集には曲目としては以下のものが含まれています。
ドヴォルザーク:管弦楽作品集
交響曲全集(全9曲)[1979年録音]
序曲「謝肉祭」[1979年録音]
スラヴ舞曲集第1集OP.46[1983年録音]
スケルツォ・カプリチオーソOp.66[1981年録音]
以上、アンドルー・デイヴィス(指揮)、フィルハーモニア管弦楽団
序曲「自然の中で」[1988年録音]/デイヴィッド・ジンマン(指揮)、南西ドイツ放送交響楽団
弦楽セレナード[1967年録音]/ルドルフ・ケンペ(指揮)、ミュンヘン・フィル
管楽セレナード[1957年録音]/マルセル・モイーズ(指揮)、マルボロ祝祭管楽アンサンブル
序曲「自然の中で」はジンマン指揮のArte Nova音源、後はSONYのカタログの中の音源を使用しています。 そういえばモントゥーのベートーヴェン交響曲全集は昨年(2005年)発売されましたがこれも初の全集でした。こちらももともと9番はウェストミュンスターの原盤で先年ユニバーサルグループの翼下に入ったのではれて同一グループ内での発売ということで全集が完成したのでした。今後こういう違うレーベルに跨がったものが発売される機会が増えるのかもしれませんね。
と、いうことはRCAとSONY(CBS)にほとんどの録音を入れているオーマンディなんかは一番その恩恵にあずかる可能性が高いような気がするのですが如何なものでしょうか。まあ、本国での可能性はありそうですが日本盤の発売は無理でしょうねえ。