今日の一冊 03/07 | geezenstacの森

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熱い絹

松本清張
ISBN: 4061842528 ; 上 巻 (July 1988)
ISBN: 4061842536 ; 下 巻 (July 1988)

 今日も松本清張です。この小説の存在を知ったのはマレーシアのリゾート地として紹介されているキャメロン・ハイランドについて調べていたときだった。どの紹介本にもまず、松本清張の「熱い絹」の紹介がされているのだ。それほどキャメロン・ハイランドとこの小説は密接に結びついている。小説の舞台となるのがこの地であり事件の失踪者が実在のジム・トンプソンを題材に描かれているからである。このジム・トンプソンはWikipediaに下記のように紹介されている。
1967年3月26日に、休暇で訪れていたマレーシアの高級別荘地、キャメロン・ハイランドにある友人の別荘『ムーンライト・コテージ』で忽然と姿を消し、マレーシア軍や警察、現地の住人などのべ数百名を動員した大規模な捜索活動にも拘らず、その姿は二度と発見されることはなかった。
失踪当時、トンプソンは自らの名を冠したタイ・シルク製品生産・販売の成功によりアジアだけでなく、アメリカやヨーロッパでも有名になっていただけでなく、失踪当時ベトナム戦争が激化しており、それに伴い東南アジアでも諜報活動が盛んになっていた上に、トンプソン自体が以前諜報機関に所属し、失踪当時もアメリカなどの諜報関係者と接触を持っていたこと、政変が繰り返されていたタイの政府上層部や反政府指導者に知人が多かったことなどから、身代金目的の営利誘拐から諜報活動がらみの誘拐・暗殺、単なるジャングルでの遭難から地元住民による殺害まで、さまざまな失踪理由が取りざたされたものの、現在に至るまでその行方も生死も謎のままである。
 小説ではこのジム・トンプソンが「ジェームス・ウィルバー」という名に置き換えられ、事件は日本の軽井沢でアメリカ人のウィルバーの妹が扼殺されるところから始まる。これが思わぬ展開で担当刑事がマレーシアに捜査員として出向くきっかけとなる。
 国際的なスケールで描かれるこの小説は日本では全くといっていいほど取り上げられなかった事件をベースにしているが意外な点で日本との結びつき静岡のお茶とキャメロン・ハイランドの紅茶、蝶、そして踊り子。これらが巧みに交錯しストーリーの伏線を形作ってゆく。清張ならではの緻密な考察で日本とマレーシアの歴史的背景も折り込みながらの下巻の展開は特に面白く、一気に読破してしまった。ただ、肝心の事件の結末は物語の盛り上がりに反してあっけなく解決の方向に向かってしまいやや腰砕けの感がした。
 マレーシアには一度旅行したことがあるが、これでますますキャメロン・ハイランドに興味を持ち一度はこの地に旅行したいものだと思っている。なをこのストーリーも平成10年 3月24日にNTVから火曜サスペンスの枠で放送されている。
キャメロン・ハイランドについては
http://www10.ocn.ne.jp/~cameron/cameron_highlands.htm
補足ながらジム・トンプソンはタイ・シルクのブランドにもなっておりその製品は最高級ブランドの位置づけである。ジム・トンプソンについては
http://www.jimthompsonhouse.com/
http://www.jimthompson.com/index.asp