今日の一冊 03/04「ガラスの城」 | geezenstacの森

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「ガラスの城」/松本清張

講談社/ハードカパー 890円
0093-128227-2253

 1976年に出版された松本清張の長編小説。1979年に文庫本化されたがカバーデザインは変更されている。しかし、ハードカバー本も文庫本もイメージが合わない気がする。他作に漏れず平成13年にテレビドラマ化されている。
 小説は手記の形式をとっている。 元々は1962年(昭和37年)1月号~1963年(昭和38年)6月号/(「若い女性」)に発表されたものでそのために女性を主人公にして第1部、2部ともに女性の手記形式を採用している。本来の手記ならこんなことはあり得ないのだが、連載物であるから同じストーリーの繰り返しの説明が何カ所もでてくる。
 しかし、ストーリー構成は巧みでいつの間にか自分が探偵になった気分にさせられ主人公の田鶴子、郁子の世界に引きずり込まれてしまう。書き出しはこうである。
 東亜製鋼株式会社の東京支社は、数年前に建った都心の高層ビルの十四階と十三階を借りきって、男女従業員二百名を擁している。支社長は専務で、もう一人の重役が総務部長をかねている。大阪が本社だが、政治面、金融面で、支社といいながら本社なみの陣容を持っている。販売部は、第一、第二の二つの課に分かれている。これは、取引先の種類と、大口、小口との区別から分類されている。各課に五十人の課員がいる。
--三月に入った。
春秋二期には、各課ごとに二日の休日を利用して社員の慰安旅行がある。その期日が近づくと庶務課から希望地の投票が行われる。しかし、この慰安旅行も、ほとんど行くべき所はこれまでに行っている。東京から一泊二日では、行動半径もおよそきまってしまう。
 こうして事件は伊豆への慰安旅行で発生する。主人公が第1部と第2部とでは変り同じ事件が視点を変えることによって二転三転してしまう。ラストはいつもながらあっけない幕切れとなるが、細かい小道具が複雑に絡み合って最後まで楽しめる。この小説を読んでチューリップの品種に興味を持ったのは小生だけではないだろうな。
チューリップの品種については
http://olive.zero.ad.jp/naka/hanaibe/tulip/hinsyu/hinsyu.html