geezenstacの森

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音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

名曲が語る名画

 

監修:永井龍之介

出版:三才ブックス

 


クラシック音楽を聴けば美術鑑賞はもっと楽しい!誰もが一度は耳にしたことのあるクラシックの名曲、あるいはどこかで一度は目にしたことがある名画――そういった名曲や名画のなかには、意外な結びつき・不思議な結び付きがあるものもめずらしくありません。

例えば、ボッティチェッリの『春(プリマヴェーラ)』をはじめとした3点の絵画に着想を得た、イタリアの作曲家レスピーギの管弦楽曲『ボッティチェッリの3枚の絵』、ベートーヴェンの『第九』をイメージしてクリムトが絵筆を走らせた壁画『ベートーヴェン・フリーズ』、ドビュッシーの『海』に楽譜の表紙として用いられた葛飾北斎の浮世絵『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』、スメタナの『我が祖国』に故郷への想いを駆り立てられたミュシャの連作絵画『スラヴ叙事詩』など。

そのほか、聖書のなかの物語やギリシャ・ローマ神話、シェイクスピアの戯曲、歴史上の出来事など、名曲と名画で同じテーマを扱っているものも数多くあります。

本書では、そうしたクラシックの名曲と歴史に残る名画の数々を楽曲の誕生した年代順に紹介しています。
素敵なコンサートと展覧会の同時進行をお楽しみください。---データベース---

  まあ、内容てんこ盛りの本です。ここでは49作の絵画が紹介されていますが、その絵画にまつわる名曲は複数存在していますから、全てを堪能しようと思うと夕に1ヶ月は楽しめるのではないでしょうか。表紙はボッティチェッリの「春」ですが、裏表紙は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」です。ただ主体はキリスト教に付随する西洋の作品と楽曲で、日本の絵画はあっても楽曲は皆無です。こういうところに世界の芸術との隔たりをかんぜさせるを得ません。

 

 記事にするにあたっては第1作と、最後の49作に音源を貼り付けてありますが、全体を聴きたい人には、最後にこの本で登場する曲をSpotifyでまとまって配信されていますから、ご用とお急ぎでない方はそちらをご利用くださいな。

 

 この本の章立てです。


[目次]

・名曲と名画の不思議な結び付き
・クラシック音楽と西洋絵画の歴史
・本書の見方と楽しみ方/主な参考文献

01)
名曲:ヴァイオリンソナタ ト短調「悪魔のトリル」ジュッゼッペ・タルティーニ
名画:『タルティーニの夢』ルイ=レオポルド・ボワイー


02)
名曲:オペラ『エジプトのジュリアス・シーザー』ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
名画:『ジュリアス・シーザー』ピーテル・パウル・ルーベンス/『クレオパトラをエジプト女王へ据えるカエサル』ピエトロ・ダ・コルトーナ/『カエサルの死』ジャン=レオン・ジェローム

03)
名曲:讃美歌「主よ、人の望みの喜びよ」ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
名画:『受胎告知』フラ・アンジェリコ/『受胎告知』ヤン・ファン・エイク/『受胎告知』レオナルド・ダ・ヴィンチ

04)
名曲:『ヨハネ受難曲』ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
名画:『死せるキリスト』アンドレア・マンテーニャ/『キリストの昇天』ジョン・シングルトン・コプリー/『最後の晩餐』レオナルド・ダ・ヴィンチ

05)
名曲:オラトリオ『ソロモン』ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
名画:『聖木の礼拝、シバの女王とソロモン王の会見』ピエロ・デラ・フランチェスカ/『ソロモンの審判』ピーテル・パウル・ルーベンス/『知者ソロモンの裁き』ギュスターヴ・ドレ

06)
名曲:オペラ『皇帝ティートの慈悲』ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
名画:『ポンペイとヘルクラネウムの崩壊』ジョン・マーティン/『ポンペイ最後の日』カール・ブリューロフ

07)
名曲:オペラ『魔笛』ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
名画:『魔笛』マルク・シャガール

08)
名曲:『交響曲』第3 番「英雄」ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
名画:『戴冠式の正装の皇帝ナポレオン』フランソワ・ジェラール/『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』ジャック=ルイ・ダヴィッド/『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』ジャック=ルイ・ダヴィッド

09)
名曲:『ウェリントンの勝利』ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
名画:『1808 年5 月2 日、マドリード』フランシスコ・デ・ゴヤ/『1808 年5 月3 日、マドリード』フランシスコ・デ・ゴヤ

10)
名曲:『交響曲』第9 番』ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
名画:『ベートーヴェン・フリーズ』グスタフ・クリムト

11)
名曲:オペラ『ウィリアム・テル』ジョアキーノ・ロッシーニ
名画:『ウィリアム・テル』フェルディナント・ホドラー

12)
名曲:『交響曲』第5 番「宗教改革」フェリックス・メンデルスゾーン
名画:『四人の使徒』アルブレヒト・デューラー/『ルターの肖像』ルーカス・クラナッハ/『サン・バルテルミの虐殺』フランソワ・デュボワ

13)
名曲:12 の練習曲 作品10「革命のエチュード」フレデリック・ショパン
名画:『ワルシャワ武器庫の奪取』マルチン・ザレスキ/『オストロウェンカの戦い』ユリウシュ・コサック/『ポーランドのプロメテウス』オラース・ヴェルネ

14)
名曲:オペラ『愛の妙薬』ガエターノ・ドニゼッティ
名画:『ドゥルカマラ島』パウル・クレー

15)
名曲:『レクイエム』エクトル・ベルリオーズ
名画:『民衆を導く自由の女神』ウジェーヌ・ドラクロワ

16)
名曲:『夏の夜の夢』より『結婚行進曲』/フェリックス・メンデルスゾーン
名画:『オベロン、ティターニア、パックと妖精たちの踊り』ウィリアム・ブレイク/『オベロンとティターニアの仲直り』ジョセフ・ノエル・ペイトン/『夏の夜の夢』アーサー・ラッカム/『夏の夜の夢(声)』エドヴァルド・ムンク

17)
名曲:『ファウストの劫罰』エクトル・ベルリオーズ
名画:『空を飛ぶメフィストフェレス』ウジェーヌ・ドラクロワ

18)
名曲:楽劇『ニーベルングの指環』リヒャルト・ワーグナー
名画:『ジークフリートの死』ハンス・マカルト/『ワルキューレの騎行』アンリ・ド・グルー/『ワルキューレの祈り』エドワード・ロバート・ヒューズ/『ジークフリートの竜殺し』アーサー・ラッカム

19)
名曲:交響詩『オルウェウス』フランツ・リスト
名画:『オルフェウスとエウリュディケ』フェデリコ・セルベーリ/『未開のギリシア人を文明化し、平和の芸術を教えに来たオルフェウス』ウジェーヌ・ドラクロワ/『オルフェウス』ギュスターヴ・モロー/『エウリュディケを冥界から連れ戻すオルフェウス』/ジャン=バティスト・カミーユ・コロー

20)
名曲:楽劇『トリスタンとイゾルデ』リヒャルト・ワーグナー
名画:『マーク王と美しいイゾルデ』エドワード・バーン=ジョーンズ/『トリスタンとイゾルデ』ガストン・ビュシエール/『船の中で媚薬を飲んでしまったトリスタンとイゾルデ』ハーバート・ジェームズ・ドレイパー/『マルク王に襲われるトリスタン』N・C・ワイエス

21)
名曲:オペラ『トロイアの人々』エクトル・ベルリオーズ
名画:『アポロンとクマエのシビュラ』クロード・ロラン/『トロイアの陥落をディードーに語り聞かせるアエネーアース』ピエール=ナルシス・ゲラン/『金枝』ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

22)
名曲:オペレッタ「地獄のオルフェ』ジャック・オッフェンバック
名画:『キリスト磔刑と最後の審判』ヤン・ファン・エイク/『最後の審判』ミケランジェロ・ブオナローティ/『快楽の園』ヒエロニムス・ボス

23)
名曲:『アヴェ・マリア』シャルル・グノー
名画:『聖母子と天使』サンドロ・ボッティチェッリ/『大公の聖母』ラファエロ・サンティ/『エジプトへの逃避』エル・グレコ

24)
名曲:交響詩『禿山の一夜』モデスト・ムソルグスキー
名画:『洗礼者聖ヨハネの誕生』ヤコポ・ダ・ポントルモ/『少年としての洗礼者聖ヨハネ』アンドレア・デル・サルト/『聖母子と洗礼者ヨハネ』サンドロ・ボッティチェッリ

25)
名曲:オペラ『ハムレット(アムレ)』アンブロワーズ・トマ
名画:『オフィーリア』ジョン・エヴァレット・ミレイ/『オフィーリア』ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス/『オフィーリア』アレクサンドル・カバネル/『墓地のハムレットとホレイシオ(第5 幕第1 場)』ウジェーヌ・ドラクロワ

26)
名曲:組曲「展覧会の絵」モデスト・ムソルグスキー
名画:『バレエ《トリブィ》のための衣装デザイン』ヴィクトル・ハルトマン/『キエフ市の門の設計図』ヴィクトル・ハルトマン/『1873 年ウィーン万国博覧会ロシア館の海軍部の建物の設計図』ヴィクトル・ハルトマン

27)
名曲:交響詩『我が祖国』ベドルジハ・スメタナ
名画:連作『スラヴ叙事詩』より「故郷のスラヴ人ートゥラン人の鞭とゴート族の剣の間で」アルフォンス・ミュシャ/連作『スラヴ叙事詩』より「グリュンワルトの戦闘の後ー北スラヴ人の団結」アルフォンス・ミュシャ

28)
名曲:オペラ『ラ・ジョコンダ』アミルカレ・ポンキエッリ
名画:『モナ・リザ』レオナルド・ダ・ヴィンチ

29)
名曲:交響組曲『春』クロード・ドビュッシー
名画:『印象・日の出』クロード・モネ

30)
名曲:交響詩『ドン・ファン』リヒャルト・シュトラウス
名画:『ドン・ジュアンの難破』ウジェーヌ・ドラクロワ

31)
名曲:『牧神の午後への前奏曲』クロード・ドビュッシー
名画:『二人のサテュロス』ピーテル・パウル・ルーベンス/『サテュロスと農夫』ヤーコブ・ヨルダーンス/『ニュンペーとサテュロス』ウィリアム・アドルフ・ブグロー

32)
名曲:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』リヒャルト・シュトラウス
名画:『アテナイの学堂』ラファエロ・サンティ

33)
名曲:『夜想曲』クロード・ドビュッシー
名画:『青と銀のノクターンーヴェネツィアのラグーン』ジェームズ・マクニール・ホイッスラー/『黒と金色のノクターンー落下する花火』ジェームズ・マクニール・ホイッスラー

34)
名曲:交響詩『人魚姫』アレクサンダー・ツェムリンスキー
名画:『人魚』エドヴァルド・ムンク/『戯れる人魚たち』アルノルト・ベックリン/『自然の驚異』ルネ・マグリット/『人魚』藤田嗣治

35)
名曲:オペラ『サロメ』リヒャルト・シュトラウス
名画:『洗礼者ヨハネの首を持つサロメ』ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ/『洗礼者ヨハネの斬首』レンブラント・ファン・レイン/『出現』ギュスターヴ・モロー/『サロメ』オーブリー・ビアズリー

36)
名曲:オペラ『蝶々夫人』ジャコモニ・プッチーニ
名画:『蝶々夫人』ルイ・イカール/『東海道五拾三次 日本橋朝之景』歌川広重(初代)/『東海道名所風景 日本橋』三代歌川豊国

37)
名曲:『喜びの島』クロード・ドビュッシー
名画:『シテール島の巡礼』ジャン=アントワーヌ・ワトー

38)
名曲:『海』クロード・ドビュッシー
名画:『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』葛飾北斎/『冨嶽三十六景 武州玉川』葛飾北斎/『波』ギュスターヴ・クールベ

39)
名曲:『3 つのピアノ小品』アルノルト・シェーンベルク
名画:『印象Ⅲ(コンサート)』ワシリー・カンディンスキー

40)
名曲:交響詩『死の島』セルゲイ・ラフマニノフ
名画:『死の島Ⅰ』アルノルト・ベックリン/『死の島Ⅲ』アルノルト・ベックリン

41)
名曲:『交響曲』第5 番「プロメテー火の詩」アレクサンドル・スクリャービン
名画:『縛られたプロメテウス』ピーテル・パウル・ルーベンス/『縛られたプロメテウス』ルカ・ジョルダーノ/『火を盗んだプロメテウス』ハインリヒ・フリードリヒ・フューガー/『ヘラクレスによって解放されたプロメテウス』カール・ハインリッヒ・ブロッホ

42)
名曲:バレエ音楽『火の鳥』イーゴリ・ストラヴィンスキー
名画:『火の鳥』舞台芸術 マルク・シャガール

43)
名曲:オペラ『ナクソス島のアリアドネ』リヒャルト・シュトラウス
名画:『テセウスに捨てられたアリアドネ』アンゲリカ・カウフマン/『ナクソス島に眠るアリアドネ』ジョン・ヴァンダーリン/『バッカスとアリアドネ』ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

44)
名曲:交響詩『タピオラ』ジャン・シベリウス
名画:『アイノ』アクセリ・ガッレン=カッレラ/『サンポの防衛』アクセリ・ガッレン=カッレラ/『ヨウカハイネンの復讐』アクセリ・ガッレン=カッレラ

45)
名曲:「ボッティチェッリの3 枚の絵」オットリーノ・レスピーギ
名画:『春(プリマヴェーラ)』サンドロ・ボッティチェッリ/『東方三博士の礼拝』サンドロ・ボッティチェッリ/『ヴィーナスの誕生』サンドロ・ボッティチェッリ

46)
名曲:『画家マティス』パウル・ヒンデミット
名画:『イーゼンハイム祭壇図』マティアス・グリューネヴァルト(マティス・ゴートハルト・ナイトハルト)

 

 「画家マティス」はてっきりアンリ・マティスのことだと思っていましたが、これが違うんですなぁ。ヒンデミットはドイツ人ですから、描いたのは16世紀にドイツで活躍していたマティアス・グリューネヴァルとの方です。こんな作品を描いています。


 

47) 名曲:オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」アウテュール・オネゲル
名画:『シャルル7 世戴冠式のジャンヌ・ダルク』ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル/『ウィンチェスター枢機卿の尋問を受ける独房のジャンヌ・ダルク』ポール・ドラローシュ/『火刑台のジャンヌ・ダルク』ヘルマン・スティルケ/『ジャンヌ・ダルク』ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

48)
名曲:『ロメオとジュリエット』セルゲイ・プロコフィエフ
名画:『ロミオとジュエリエット』フォード・マドックス・ブラウン/『ロミオとジュリエット』ジョセフ・ライト/『ロミオとジュリエットの死』グスタフ・クリムト

49)
名曲:14 の楽曲
名画:『夢の花束』マルク・シャガール

・コラム:名画を観る世界の美術館めぐり 
 ヨーロッパ編①/ヨーロッパ編②/アメリカ編①/アメリカ編②/日本編
・あとがきにかえて 武満とルドン 素敵な出会い
・画家別索引

 

 と、まあこんな内容です。

 

 名曲に結び付いた絵でまず想起するのは「展覧会の絵」でムソルグスキーに追悼されたヴィクトル・ハルトマンの絵画で、この本にも勿論掲載されています。絵を知っていて曲を知らないものもあれば逆もあります。意外性のある組み合わせだったのが「禿山の一夜」に項で紹介されたのが洗礼者ヨハネを描く、ロシアとは全く別世界の西洋絵画的なボッティチェリらの作品であることです。まあ、しかしこういう企画だと、聞きながら読めるような(自分でいちいち検索するのではなくて)附属の音源が欲しくなります。ということでSpotifyへリンクを貼っておきます。

 

2025記憶に残る

my展覧会ベスト10

 

 音楽会はまだこの後も続きますので先に展覧会の方をまとめて振り返ることにします。今年はあちこちに出かけていますがその中から記憶に残っている展覧会を拾い上げてみました。まあ、個人で動き回る範囲ですから識れたもんなんですけどね。

 

1.大覚寺障壁画100面

 

 東京は国立博物館で開催されていた「京都の大覚寺障壁画の展示会でした。大覚寺には安土桃山~江戸時代に制作された約240面におよぶ襖絵や障子絵などの障壁画が伝来しており、これらは一括して重要文化財に指定されています(重文指定116面、附124面)。現在14か年にわたる大修理の途中ですが、本展では修理を終えたものを中心に、前後期併せて123面(前期100面、後期102面)を展示していました。巡回展が無かったのでこれを目当てに東京まで出かけたものです。

 

2.ミロ展

 

 

 こちらはそのついでに東京都美術館で開催されていた「ミロ展」にも出かけたものです。この展覧会は、日本でのミロの回顧展としては、存命中の画家自身が協力した1966年の展覧会に並ぶ、最大規模の回顧展でもありました。シュルレアリスムの画家として紹介されることが多いミロですが、彼はシュルレアリストとされることはもとより、どんな派にくくられることも嫌いました。「画家」といわれることすら厭ったとも。純粋で“子どものような”楽しげな作品には、同時に、母国の内戦と第二次世界大戦という激動の時代に生きて、故郷を愛し、祖国を想い、時代を捉えた、政治・社会へのまなざしがピカソの作品ともども深く感じられる作家ですね。

3.パウル・クレー展

 

 

 こちらも、キュビスム、表現主義、ダダ、シュルレアリスムといったクレーと同時代の美術動向にも目を向け、他作家の作品とあわせて展示することで、クレーの独自性にとどまらずその同時代性や交流などにも焦点を合わせている展覧会で先の「ミロ展」と合わせて、現代芸術の巨匠二人の作品展が同時期に見れたのは何よりでした。

4.手塚治虫展

 

 

 こちらは日本の誇る漫画の世界の巨匠である手塚治虫の展覧会でした。学生の頃は「鉄腕アトム」をはじめ、「ビッグX」、「ワンタースリー」、「マグマ大使」「リボンの騎士」等々のテレビ作品に魅了されました。この作品展ではそのコマ割りやプロットの作成過程、時代に合わせた修正の後なども伺い知れた貴重な一面を覗き見る事が出来ました。

 

5.鈴木英人展

 

 

 彼の名を最初に知ったのは、パソコンとの出会いの中でした。マルチメディアが叫ばれた1990年代中ごろにパソコンソフトとして発売された鈴木英人の画集が自分の中ではそこに収録されていた音楽とともに走馬灯のように蘇りました。そこに収録されていた「LIsten to the Music」という曲は、今でも鈴木英人の絵と切り離しては考えられない存在になっています。ドゥ・ビー・ブラザーズの名曲ですな。

 

 

6.生誕100年宮脇綾子の芸術

 

 
 これは東京駅の赤駅舎の構造を露わにしたレンガ壁の展示室を見たいと思ったら展覧会を見ないと見れない仕組みになっていました。ま、そんなことでついでに見た展覧会でした。ところがこれがなかなかの内容で、なおかつ宮脇綾子さんは生まれは東京でしたが亡くなったのは名古屋で円のある人でした。布による造形作家(アップリケ作家)、エッセイストで、端切れを使ってそれを芸術作品に昇華させているところがすごいです。

 

7.安藤シオン カガヤク物語

 

 

  全国的には知られていないでしょうが、色鉛筆で描く独特なアートの世界に魅せられました。黒を基調としたメルヘンの世界で圧倒的なスケール間があります。テレビで見る色鉛筆画とは一味も二味も違います。地元出身の安藤さんはまだ20代のイケメンですが、名古屋造形大学在学中から個展を開き、数々の現代童画展やイラストレーターズコンペで受賞する新進気鋭の色鉛筆イラストレーターです。

 

8.橋口五葉のデザインの世界

 

 
 かの夏目漱石の出版した作品の大多数の装丁を手掛けているのがこの「橋口五葉」です。展覧会に行くまでは上村松園や鏑木清方、伊藤深水のような日本画の美人画を描く作家の一人ぐらいの程度の認識でした。それが、イラストの世界では大御所中の大御所でした。

 

9.近代日本画のトップランナー竹内栖風

 

 

 竹内栖風は京都の画家ですがこの展覧会に出会うまで全く眼中になかった作家です。京都派の重鎮ということで上村荘園もこの栖風の弟子ということです。まあ、特に美人画にこだわった人ではなく、この展覧会でも、写生帳も展示されていたように動物の作品が多く展示されていました。

 

10.「なつやすみ所蔵企画 えともじ展」

 

 これは期待した展覧会ではなかったのですが、葛飾応為の肉筆画、「夜桜美人図」は注目に値しました。これは、長らく行方知らずだった作品で現在はこのメナード美術館に収蔵されているものが期間を区切って展示されていたのです。また、この展示会には2023年に個展を開いた今井龍満の作品が追悼展示されていたのです。この今井龍満も注目の画家でしたが、今年の2月に48歳の若さで亡くなってしまったのです。

 

 さて、ベストテン以外にもこれはというちょっと小粒ですがキラッと光る展示もあり、2つだけ次点として取り上げます。まあ、こちらはクリックして当該記事に飛んでみてくださいな。

 

次点 千と千尋の神隠しとジブリ展

 

 

   東海伝統工芸展

 

 

 

  

 

能面の世界

 

 

 今年はNHKの大河ドラマ「べらぼう」で一ツ橋治済(生田斗真)が、劇中家斉の乳母であった大崎(映美くらら)らを使って邪魔者を次々と排除し、人を意のままに操る傀儡(くぐつ)師のような存在として描かれました。そんな治済の場面で印象的に用いられたのが能面です。

 

 

 特に、登場人物の一人である治済が能面を選ぶシーンがあり、彼の心情や意図を示す重要な要素となっています。能面は、特定の感情や性格を象徴するために選ばれることが多く、治済が選んだ面には以下のような意味があります。

1. 男面

男面は、男性のキャラクターを表現するために使用されます。力強さや落ち着きを演出し、主に以下のような面があります。

  • 中将: 若武者や壮年の男性を表現。

  • : 中年男性の役に使われることが多い。

2. 女面

女面は、女性のキャラクターを表現するために使用され、優美さや繊細さを演出します。代表的な女面には以下があります。

  • 小面: 若い女性を表現。

  • 孫次郎: 成熟した女性の役に使われる。

3. 霊や鬼の面

霊や鬼の面は、超自然的な存在を表現するために使用されます。これには以下のような面が含まれます。

  • 般若: 嫉妬に狂う女性を表現する面。

  • 武悪: 鬼を表す面で、愛嬌のある表情が特徴。

4. 翁面や尉面

翁面は、特別な場面で使用される面で、主に神や鬼などの異界の存在を表現します。尉面は、翁面と同様に特別な役割を持つ面です。
能面はそれぞれに個性や意味があり、演じる役や場面に合わせて選ばれます。能面の種類を知ることで、能の舞台をより深く味わうことができます。能面の詳細な情報は、能楽協会や専門のウェブサイトで確認できます。

 

 今回展示されていたものは以下のようなものでした。この展覧会は市民ギャラリー栄で21日まで開催されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして会場の中央には能面を手作りする様を模した展示もありました。今年は歌舞伎を題材にした「国宝」もヒットし、伝統芸能が見直されています。この流れが「能」の世界にも広がるといいですなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうそう、映画「国宝」は12月31日に伝統ある「歌舞伎座」で特別上演会が行われるようです。舞台挨拶もあるようです。名古屋の御園座でも昔は映画を上映したことがあり出かけたことがあります。今はそういう粋な考えは無くなってしまったのでしょかねぇ。この上映会、舞台挨拶は全国の上演会場に同時配信もされるようです。見れば御園座は12月31日はスケジュールはないようで空いているんですがねぇ。

第49回

オーケストラコンサート

曲目

 

アンコール/

ワーグナー/楽劇「ローエングリーン」から「エルザの大聖堂への行列」

 

指揮/岩村 力

ピアノ/神原雅治

演奏/名古屋音楽大学オーケストラ

 

  17日は創立60周年を迎えた名古屋音楽大学のオーケストラの定期演奏会に出かけてきました。今年から東大路憲太氏が大学の講師陣に加わったということで、今回はその初演作品も披露されることで期待して出かけたところです。また、ソロピアニストの神神原雅治さんは今年のロンティボー国際コンクールで4位に入賞した逸材でもあります。期待たっぷりのコンサートといったところでした。

 

   びっくりしたのは、まだ開演前に、合唱団がぞろぞろと入場したことです。最初の曲目はエルガーの「威風堂々第1番」なのですが、これが本格的なコーラスき、またオルガン付きの演奏であったということです。多分60周年のセレブレーションを祝う幕開けの曲と言う意味合いもあったのでしょう。

 

 

 それに続く上吉のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番はプログラムの位置としてはまっとうなものです。今まで2番の実演は何度も聞いてきましたけど、3番は多分初めての事ではなかったかと思います。実はラフマニノフのピアノ協奏曲については、この第3番の方が先に知っていました。それはポップスによる演奏だったのですが、フランテとタイシャーが見事なアレンジでこの曲のメロディーを奏でていました。それ以来、3番は自分の中ではポピュラーな曲になっていたのですがこの曲なかなかの難曲と見えて、かのル-ビンシュタインは難しすぎて弾けなかったと言うエピソードも残っています。

 

 神原雅治さんの演奏については、以前はブラームスの第2番の演奏を聴いたことがあります。そして、今年のコンクールでもそのブラームスの第2番を演奏しています。下は、そのロン・ティボーでのファイナルの演奏です。トップで演奏しています。ここでは最近話題のカワイのSK-EXで演奏しています。

 

 

 スケールの大きな演奏で、これはなかなかの逸材だぞという印象を持っていましたので、今回のラフマニノフについても期待大でした。その期待に応えるかのようにイントロから実に柔らかいタッチでこの難曲に臨んでいました。指揮者の岩村力氏は、もう何十年ぶりに、この学生オーケストラに登場したのですが、実にうまく曲をまとめ、ソリストをサポートしていました。そうそう、来年の「NHK名古屋ニューイヤーコンサート」にも出演するのですが、チケットは完売だそうです。まあ、NHKですからテレビ放送はされるでしょう。

 

  前半のプログラムの終了とともに、世界初演の東大路氏が登場してこの曲の解説をしていました。ゲーム音楽ではかなり知られた存在ですので、この曲も期待をしていました。難解な現代音楽ではなく、そのゲームミュージックの世界を彷彿させる、また映画音楽のジョン・ウィリアムズを尊敬していると言うことで高らかに金管を鳴らせる音楽を目指したということで、ここでもこの学生オーケストラの特徴を生かした打楽器、そして金管楽器を思う存分フューチャーした賑やかな作品になっていました。所々スター・ウォーズを思わせるような旋律も聴こえてきて、かなりうれしいサウンドではありました。ただ、世界初演といってもちょっと曲の構成としては散漫なゲームミュージックのような印象を受け、もう少し整理された作品になれば、リピート演奏がかなり増える曲ではないかと言いう印象を持ちました。

 

 

  まぁ今回の演奏会で締めがチャイコフスキーの「幻想的序曲ロミオとジュリエット」というのは意外でしたが、これがなかなか面白い演奏でした。この曲も実演で聴くのは初めてなんですが、オーケストラの左右に分かれた弦楽器の扱いがなかなかチャイコフスキーらしく、またかなり苦労して作曲したと言うことを知っていましたので、その響き的なものの面白さも充分感じ取ることができました。チャイコフスキーの作品はそれほど好きではないのですが、この曲は実演で聴くとかなり面白いなぁと言う印象を持ちました。

 

 最後のアンコールでは、またピアニストの神原さんや合唱団が再登場し、さらにパイプオルガンまで響くという壮大な演奏で、ワーグナーのローエングリーンから「エルザの大聖堂への行列」が演奏されました。こういう盛大なアンコールも珍しいなぁということで、大変満足のいくコンサートになりました。

 

 まぁ個人的には2時間半を超えるコンサートでしたので、家路にたどり着くのは10時を回っていました^^;

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近世愛知の俳人

 

 

 

 

名古屋には芭蕉が俳諧を芸術の域に高めるきっかけとなった「蕉風発祥の地」の碑が立ち、芭蕉の門人も活躍するなど、江戸時代、現在の愛知県では俳諧が大変盛んに行われていました。今回は愛知県図書館が所蔵する中から、貴重な和本を中心に、江戸時代のあいちの俳諧・俳人に関連する資料を展示しています。

 

 

 

図書館の敷地内にある横井也有の説明板

 

 展示書籍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらは2階の企画ですが、3階でも「名古屋の書肆」という企画展示も同時開催されています。「べらぼう」の終盤には蔦重が尾張に出かける場面もありましたが、それを裏付ける書籍も展示されています。またと無いチャンスですから出かけてみては如何でしょう?