第99回市民会館名曲シリーズ
〈ベートーヴェンPLUSⅣ〉
曲目
▊ リスト[北村朋幹編]:山の夕べ(エルンスト・クノップによる)-田園風夜想曲(「旅人のアルバム」 S.156/11より)
▊ ベートーヴェン:交響曲第2番ニ長調 作品36
▊ 作曲者不詳:アッペンツェル地方の牛追い唄*
▊ ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 作品68『田園』
北村朋幹(指揮)
安土真弓(アルプホルン/名フィル首席奏者)*
小川響子(コンサートマスター/名フィル コンサートマスター)
ピアニスト・編曲者・指揮者という3つの顔を持つ 北村朋幹さんが、今回は“指揮者”として名フィルに登場しました。今回のプログラム、ベートーヴェン像を多面的に照らし出すプログラムで、ピアニストとして作品の内側を深く知り、編曲者として音と構造を再創造してきた北村さんならではの視点が詰まっています。
さて、開演前に恒例のロビーコンサートが開催されました。今回はチラシにもこの告知が載っていました。
[出演]
小玉裕美,川上裕司(ヴァイオリン)
池村明子,今村聡子(ヴィオラ)
幸田有哉(チェロ)
佐渡谷綾子(コントラバス)
[曲目]ケスラー:弦楽六重奏曲ヘ短調より第1楽章
ハンス・フォン・ケスラー(1853年1月1日 - 1926年5月23日)は、ドイツの作曲家、指揮者、音楽教師でした。26年間ハンガリーで活動し、ヤーノシュ・ケスラーとして知られていました。 略歴 マックス・レーガーの従兄弟であるケスラーは、フィヒテル山地のヴァルデック(現在はオーバープファルツ州ケムナートの一部)に生まれました。1874年から1877年までヨーゼフ・ラインベルガーにオルガンを師事し、ミュンヘンではフランツ・ヴュルナーに合唱のレッスンを受けました。その後すぐにドレスデンに移り、ドレスデン音楽学校で音楽理論と合唱の指導者兼教師に任命されました。1878年からはドレスデン・リーダーターフェル管弦楽団の指揮者も務めました。 1882年から1908年まで、ハンガリーのブダペスト国立音楽アカデミーでオルガンと合唱を教えた。後に作曲の教授も兼任し、貴族の称号も授与された。
初めて耳にする作曲家でしたがブラームスと同世代ということで同じように中な中渋い作品を描いています。なを、このメンバーで11月16日栄にある宗次ホールでこのケスラーの作品とブラームスの弦楽六重奏曲第2番というプログラムの演奏会が開催されるそうです。
今回のステージ編成
さて、本題のコンサートです。前半はリスト[北村朋幹編]:山の夕べ(エルンスト・クノップによる)-田園風夜想曲(「旅人のアルバム」 S.156より)からスタートします。こだわりの曲ですねぇ。今年10月5日、武蔵野市民文化会館 小ホールのリサイタルではこの曲のピアノ版を披露しています。ここではそのオーケストラ編曲版を披露しました。冒頭は北村さん自身の編曲によるリスト《山の夕べ》。リストのピアノ作品に込められた詩情がオーケストラで広がり色彩豊かな響きになっていました。
リハーサルでも指揮台を使わない演奏です
楽譜スタンドは使っていますから身振りはかなり上のポイントで振っています
紹介されていた北村朋幹氏のプロフィールです。
愛知県生まれ。3歳よりピアノを始め、浜松国際ピアノ・コンクール第3位、シドニー国際ピアノ・コンクール第5位ならびに3つの特別賞、リーズ国際ピアノ・コンクール第5位、ボン・テレコム・ベートーヴェン国際ピアノ・コンクール第2位などを受賞。
第3回東京音楽コンクールにおいて第1位(2位なし)ならびに審査員大賞(全部門共通)受賞、以来日本国内をはじめヨーロッパ各地で、オーケストラとの共演、リサイタル、室内楽、そして古楽器による演奏活動を定期的に行っている。その演奏は「類稀なる時間の感覚。まるで素晴らしい指揮者によるオーケストラの演奏を聴いているよう(パヴェル・ギリロフ)」「卓抜な詩的感性、そして哲学的叡智を具えた芸術家(濱田滋郎)」などと評されている。
近年では特に、近現代作品の演奏への評価が高く、2022年10月、びわ湖ホール及び、滋賀県立美術館で行った「北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)」が、第22回(2022年度)佐治敬三賞受賞。また、2024年にはアーヴィン・アルディッティからの指名を受け、アルディッティ弦楽四重奏団とともに、2曲のピアノ五重奏曲の世界初演に携わる。
録音はフォンテックから『遙かなる恋人に寄す―シューマン「幻想曲」からの展望―』(2011)、『夜の肖像』(2014)、『黄昏に― ブラームス/リスト/ベルク作品集』(2016)、『Bagatellen』(2019)がそれぞれ発売され、2021年録音の『ケージ プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード』は令和3年度(第76回)文化庁芸術祭賞 レコード部門 優秀賞を受賞するなど、レコード芸術誌をはじめとする主要な音楽メディアにおいて好評を得ている。2024年3月新譜『リスト 巡礼の年 全3年』をリリース。
東京藝術大学に入学、2011年よりベルリン芸術大学ピアノ科で学び最優秀の成績で卒業。またフランクフルト音楽・舞台芸術大学では歴史的奏法の研究に取り組んだ。
これまでに伊藤恵、エヴァ・ポブウォツカ、ライナー・ベッカー、イェスパー・クリステンセンの各氏に師事。ベルリン在住。
前半の2曲目はベートーヴェンの今回のステージは対抗型の配置で第2ヴァイオリンが右手に、コントラバスは第1ヴァイオリンの後ろ、チェロ、ヴィオラという構成です。そんなことで、ホルンは右手奥に陣取っています。いわゆる対抗配置です。ピリオド・オーケストラのていばんはいちですが、小生はあまり好きではありません。高音部と低音部が混ざってしまい。せっかくのステレオ効果が損なわれるからです。オーケストラの近くで聞く分には分離がいいのかもしれませんが、ホールの中央後ろのいわゆるS席あたりで聴くとやはり団子状で、ステレオ感は半減です。また、今回も最近の傾向のメトロノーム準拠の店舗で演奏されました。全体にはアクセントの効いた演奏ながら旋律線の中央を持ち上げるという大胆な手法でティンパニの打ち込みの強打を和らげるような歌わせ方で全体のバランスをとっているような表現でした。なかなか面白いアプローチで4楽章、弛緩なく聴くことができました。それは演奏後の聴衆の反応にも現れていて、いつもは2度ほどのアンコールで前半は終わるのですが、今回は奏者のスタンディング・オベーションもあり、4回ほどアンコール登場がありました。
後半のプログラムのメインは交響曲第6番「田園」です。びっくりしたのは演奏者と共に指揮者も一緒に登場し、チューニングが終わるとそのままライトがステージも暗くなったのです。スポットライトでも当たるのかなと思ったのですが、その暗いままにアルペンホルンが朗々と響き渡ります。このアルペンホルン、舞台裏で演奏されていたのです。首席ホルン奏者の安土真弓がアルプホルン独奏で奏でる《アッペルツェル地方の牛追い唄》でした。
こんな響きがホールに響きます。
そして、アルペンホルンの演奏が終わると照明が明るくなり、そのまま「田園」が開始されます。まるでホルンの響きが曲の一部のような構成です。ただ、こちらの演奏も第2番と同様、ピリオド楽器のメトロノームに引っ張られた速いテンポの演奏で全体に田園のゆとりが感じられない演奏になってしまっていました。最近のベートーヴェンの演奏はテンポが画一的で楽しめるコンサートがほとんどありません。もう70*80年代の巨匠風の重厚長大のゆったりとしたベートーヴェンを効かせる指揮者は皆無なんでしょうかねぇ。曲の表情づけは第2番と同様に個性が感じられましたし、ティンパニのマレットは頭の小さいもので打音が許ぅ列で、これに呼応するかのように2本のホルンがオーケストラの右側から咆哮します。今回はやけに目立つ演奏になっていました。まあ、ステレオ感を演出するにはうってつけの演奏になっていました。














































