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【原著】original article
          サフランの抗精神作用*
                         

                                      **



 サフランを不安障害、気分障害、そして統合失調症の患者へ応用した。そしてその効果は他の漢方薬との併用であったため断定こそできないが強い効果が結果として得られた。
 サフランは澱んだ“気”の流れを円滑化する。しかしサフランは高価である。保険上許容されている最高量の一日1g服薬するとして薬価は560円になる。
 女性の不安障害、気分障害にはその一日1mg と漢方製剤のみでも充分治療効果が認められる。女性の統合失調症に対してはその一日1mg と漢方製剤そして比較的少量の抗精神病薬で対処できる。
 サフランと漢方製剤のみで対処すると場合、女性の統合失調症に対してはサフラン一日2mg 以上の投薬は絶対的に必要である。また男性に対しては女性の倍量の投薬が必要である。よってサフランの有効成分の抽出・同定・大量生産は急務と確信する。
 以下に、抗精神病薬を頑なに拒む強い27歳の外来の統合失調症の女性患者に対し漢方製剤とサフランの増量のみで対処し劇的な結果を得た。その内容を記す。

【症例】
 小学校4学年時、痙攣発作にて某神経内科受診。それより carbamazepine, aleviatine などの投薬を受けてきた。看護学校通校時、精神症状発現。 sulpiride 300mg/day の投薬も受け始める。看護学校は何とか卒業し正看護婦の資格を取ったが就職先が見つからずアルバイトを行っていた。筆者初診時の処方は carbamazepine 400mg/day(朝夕分2), aleviatine 300mg/day(朝昼夕分3), sulpiride 300mg/day(朝昼夕分3)、nitrarazepam 20mg/day(眠前)であった。この処方のみでは精神症状をコントロールすることが困難であった(時折見せる空笑、反�R的な態度、夜の家人への多弁などが有った)。脳波上、てんかん様異常波は認められず。carbamazepine および aleviatine を完全に抜く。しかし、てんかん発作は認められず。小学校4学年時の痙攣発作はヒステリーと思われる。
 不眠を強く訴えるためflunitrazepam 4mg/day(眠前)をnitrazepam 20mg/day(眠前)の代わりに処方。これにより不眠は解消されたが、精神状態の軽度の不調は不変であった。また sulpiride は『太る』ということで服薬を拒否し始める。 risperidone 2mg/day に変薬するもこれも『眠くなる』と服薬を拒否する。haloperidol 3mg/day に変薬するもこれをも『私が飲むクスリではない』と服薬を拒否する。
 患者の服薬拒否激しく、精神状態は悪化。空笑、反抗的な態度、夜の家人への多弁は激しくなり、精神病院入院を考えさせた。以前のクリニックのクスリを真面目に服薬していたことを言うと『あの頃は何も知らなかったのです。てんかん発作が怖くてそれで飲んでいたのです。』と答える。この時点での服薬内容は 苓桂朮甘湯 7.5mg/day 分3とflunitrazepam 4mg/day (眠前)のみであった。これ以上、服薬しようとしない。 
 よって上記の処方にサフラン1mg/day 分3を増量(サフランを飲むと肌がきれいになると言って服薬させた。また本人もそういうと喜んで服薬した。)。精神症状はやや改善傾向を見せた。以前の sulpiride と carbamazepine が入っていた時の状態と同じような精神状態になった。つまり軽度の精神状態の不調という状態に逆戻りといった感じになった。
 サフランを一日2mg 分3に増量。精神状態は明らかに改善傾向を見せた。(空笑が消失し、反抗的な態度がほとんど消失し、従順になった。また家人への夜の多弁が消失した。)これはサフランの睡眠改善作用によるもの7)とも思われたが、睡眠はサフラン投与以前より flunitrazepam 投与によって良好に保たれていた。また本人も睡眠は不変であると言う。
(苓桂朮甘湯は『ツムラ』を用いた。サフランは『太鼓堂』を用いた。)
 
【考察1】
 サフランが明らかに精神状態改善作用を見せたのは未だこの1例のみであるが、この他にもサフランが精神状態改善作用を見せたと思われるのは同じく女性例であるが2例ほど存在する。
 未だ文献に見当たらないが、サフランは明らかに男性よりも女性の方に効果が強く現れる。同じ効果を得るのに男性では女性の2倍の量を必要とする。これは漢方薬についても同じである。これは男性が女性よりも2倍ほど多量の食事を摂取するという理由も成り立つと推測している。
 そしてサフランは何故か老人には効果がないようである。しかし20代から60代前半の女性には劇的に奏功することが良くある。それは何故か? サフランは婦人科の病気に効くことが以前より強調されてきた。妊娠中の女性が服薬すると流産してしまうことで妊娠中の女性には禁違とされている。その年代の女性のサフランに対する感受性が非常に強いと推測される。
 また駆悪血剤として最強のものとされている。老人に効かないのは悪血があまりに強すぎるからではないだろうか。

【考察2】
 サフランを文献的に見ると『鬱を散らし結を開く、憂鬱病、胸苦しさ、吐血、熱病による発狂、恐怖恍惚、無月経、産後の鬱血による腹痛、打撲による腫れと痛みを治す。1)』『血を調える、胸郭をゆるやかにする、胃を開き飲食を進ませる、長く服用すると気分をさわやかにする。2)』
『傷寒発狂、恐怖し、恍惚たるには、サフランを水に一夜浸して服す。3)』『心憂鬱積、気悶して散ぜぬものに血を活かす。久しく服すれば精神状態を愉快にする。又、驚悸を治す。3)』
『心気憂鬱なるもの、結悶が散らないものを主り、血を活かして驚悸を治す。結を散らして血を行ぐらす。4)』
『傷寒発狂・驚悸恍惚を治す。5)』
『逆を下し気を順らせ、血を散じ汚を消す。6)』
 また『子宮に対する興奮作用があり、少量投与では子宮に緊張性あるいは律動性収縮を起こさせ、大量投与では子宮の緊張性と興奮性を高め、自動収縮率を強め、甚だしいときは痙攣の程度にまで達し、懐妊した子宮はいっそう敏感である。1)』 
『通経作用があるので、妊婦の服用は禁忌である。2)』
『更年期障害からくる不定愁訴や生理不順による血の道症の症状(気分がすぐれない、イライラする、のぼせ、肩こり、不眠、頭痛、めまい等)に1回量サフラン0.2~0.3gを湯飲みに入れ熱湯を注ぐと数分で美しい赤黄色の湯になり成分が浸出される。箸でそっと掻き回せば柱頭だけ�ェ下に沈むから浸出液だけを飲む。湯飲みに残った柱頭には再度湯を注いで1日2~3回服用することができる。この液は風邪にも効果がある。ふつうは1日量0.5g くらいが良い。2)』
『雌しべの柱頭の赤い部分のみを集めて乾燥したものをサフラン(Crocus, 蔵紅花)といい、古代エジプト、ギリシャの時代から婦人病薬として用いられ、鎮静、鎮痛、通経薬などとし、婦人病の家庭薬によく加えられる。民間薬的にもよく用いられ、1回に5~10本を湯呑みに入�黶A熱湯を注いで数分間置くと橙黄色の美しい色が出て来るが、これを茶のように常用すると、血の道症、月経不順、ヒステリー、更年期障害、子供の百日咳などに効果があるという。また、食品の香料、着色料としてもよく使われ、スパイスとしてはクロッカスの名で売られている。
 成分は、柱頭にはもともと protocrocin と呼ぶカロチノイドの配糖体が含まれていると考えられ、これが順次酸化されて出来たと思われる crocin, crocetindimethylester, picrocrocin, safranal などが見出されている。crocin, croctin には橙黄色の色があり、 picrocrocin �ヘ苦みがあり、safranal には芳香がある。
 生産のための標準的な栽培法を記すと、10月に球茎を浅い育苗箱のようなものにぎっしりと並べ、25~30cm 間隔の棚になるような架台を作って室内に置く。10月下旬に開花したら雌しべをつみ取って、花が終わると主芽だけを残して側芽はすべてかき落とし、路地に植え付�ッる。5)』

【終わりに】
 上記の症例の他にもサフランが奏功していると思われる統合失調症の症例があるが、サフランは女性だけでなく男性にも充分に効果が見られる。これは精神科領域に限られるのか、それは不明である。


【文献】
1)中薬大事典 下巻、p.2671~2672, 上海科学技術出版社、1986.
2)薬用植物大事典、p.342~344, 広川書店、 1978.
3)『新註国訳本草綱目』第5冊、番紅花、p.87~p92, 春陽堂、1964.
4)本草綱目;李時珍
5)医林集要
6)本草正義
7)サフランの入眠効果について;松橋俊夫;p123~p125;新薬と臨床・第42巻、1995.

* **(文献を集めて下さった0000000氏に感謝の辞を表す。)***

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    水牛角粉による統合失調症への挑戦

                                
 宗教的理由により抗精神病薬を頑なに拒む26歳の外来の統合失調症の女性患者に対し中国で統合失調症に対し頻用されている水牛角粉のみで対処し劇的な結果を得た。その内容を記す。

【症例】
 幼い頃、幼稚園通園以前、天井の木目を見ては恐怖にとらわれることがよくあった。
 小学校4学年時、痙攣発作にて某神経内科受診。それより carbamazepine, aleviatine などの投薬を受けてきた。看護学校通校時、精神症状発現。 sulpiride 300mg/day の投薬も受け始める。看護学校は何とか卒業し正看護婦の資格を取ったが就職先が見つからずアルバイトを行っていた。筆者初診時の処方は carbamazepine 400mg/day(朝夕分2), aleviatine 300mg/day(朝昼夕分3), sulpiride 300mg/day(朝昼夕分3)、nitrarazepam 20mg/day(眠前)であった。この処方のみでは精神症状をコントロールすることが困難であった(時折見せる空笑、反抗的な態度、夜の家人への多弁などが有った)。脳波上、てんかん様異常波は認められず。carbamazepine および aleviatine を完全に抜く。しかし、てんかん発作は認められず。小学校4学年時の痙攣発作はヒステリーと思われる。
 不眠を強く訴えるためflunitrazepam 4mg/day(眠前)をnitrazepam 20mg/day(眠前)の代わりに処方。これにより不眠は解消されたが、精神状態の軽度の不調は不変であった。また sulpiride は『太る』ということで服薬を拒否し始める。 risperidone 2mg/day に変薬するもこれも『眠くなる』と服薬を拒否する。haloperidol 3mg/day に変薬するもこれをも『私が飲むクスリではない』と服薬を拒否する。
 患者の服薬拒否激しく、精神状態は悪化。空笑、反抗的な態度、夜の家人への多弁は激しくなり、精神病院入院を考えさせた。以前のクリニックのクスリを真面目に服薬していたことを言うと『あの頃は何も知らなかったのです。てんかん発作が怖くてそれで飲んでいたのです。』と答える。この時点での服薬内容は 苓桂朮甘湯 7.5mg/day 分3とflunitrazepam 4mg/day (眠前)のみであった。これ以上、服薬しようとしない。 
 よって上記の処方に水牛角粉を毎日1回オブラートに包んで何時でも良いから服薬するように指導。(患者は今、妊娠しているという妄想を持っていた。それ故に抗精神病薬の服薬を頑なに拒否していたものと思われる。妊娠反応マイナス。自然のクスリである水牛角粉は妊娠中も大丈夫と言うと、本人は喜んで服薬し始めた。)。精神症状は改善傾向を見せた。空笑、反抗的な態度、家人への多弁は影を潜めていった。

【考察】
 水牛角粉が明らかに精神状態改善作用を見せたのは未だこの1例のみであるが、この他にも水牛角粉が精神状態改善作用を見せたと思われるのは同じく女性例であるが2例ほど存在する。
 未だ文献に見当たらないが、水牛角粉は明らかに男性よりも女性の方に効果が強く現れる。同じ効果を得るのに男性では女性の2倍の量を必要とするように思われるところがあるからかもしれない。
 これは漢方薬についても同じである。これは男性が女性よりも2倍ほど多量の食事を摂取するという理由も成り立つと推測している。
 そして水牛角粉は何故か老人には効果がないようである。しかし20代から60代前半の女性には劇的に奏功することが良くある。それは何故か? 水牛角粉は婦人科の病気に効くように筆者には感じられる。
 老人にはほとんど効能が見られないのは何故か、現在のところ不明である。

 中国では統合失調症者に水牛角粉を漢方薬で調合し与える(水牛角粉を主として漢方薬を調合する)。患者ごとにその患者に良く効くように水牛角粉を中心とした漢方薬を調合する。その効果は chlorpromazine を越え、副作用が皆無に近いため、中国では副作用のある西洋の薬よりもその水牛角粉を用いている施設の方が多いという6)。
 水牛角は確かに生産量は限られ、他国でも用いられると生産が間に合わないと思われる。そのためにもそのムコ蛋白あるいは多糖類の抽出・発見が急務となる。また現代の進んだ遺伝子産業ではその大量生産は分子構造が余りにも巨大なため困難を極めるものの不可能ではないと思われる。
 なお、この水牛角粉は鬱病・メニエール病にも卓効するという6)。何故、鬱病・メニエール病に卓効するのか、解らない。
 水牛角粉に何故こういう効能があるのかと中国でも研究され、数種類のアミノ酸が見つかった6)。しかし水牛角粉の効能はアミノ酸ではなく比較的に巨大な構造を持つムコ蛋白あるいは多糖類にあり、アミノ酸では説明が付かないと思われる。そのムコ蛋白あるいは多糖類は未だ発見されていない6)。脳血液関門を通過しないムコ蛋白あるいは多糖類が視床下部に働きかけ、大脳基底核部のセロトニンなどのバランスを取り、統合失調症の症状を抑えていると思われる。(これは大黄の統合失調症への効用を調べる段階に於いて、それが巨大な分子構造を持ち、脳脊髄関門を通過しない故に、これは視床下部において大脳基底核部のセロトニンなどのバランスを取っているとしか考えられないことより、そう推測される。しかしその他にもそれが腹腔神経叢に働きかけ、統合失調症の症状を抑えているとも推測できる。)
 これを現代の進んだ遺伝子産業により大量生産することが可能か否か、それはそのムコ蛋白あるいは多糖類の分子構造式の巨大さに依ると思われる。


【文献】
1)丁 宋鉄;現代東洋医学、vol.12 ;p121(1991)
2)村田行夫;Proc. symp. WAKAN-YAKU, 15, p192(1982)
3)村田行夫;第33回日本東洋医学会講演要旨集、p35(1983)
4)外台秘要;江戸時代刊と推測される
5)漢方診療医典;大塚敬節、矢数道明、清水藤太郎;p652(1969)
6)郭先生からの手紙
7)植木昭和;現代東洋医学 vol.7、98(1986)
8)丁 宋鉄;現代東洋医学、vol.12 ;p121(1991)
9)村田行夫;Proc. symp. WAKAN-YAKU, 15, p192(1982)
10)村田行夫;第33回日本東洋医学会講演要旨集、p35(1983)
11)外台秘要;江戸時代刊と推測される
12)漢方診療医典;大塚敬節、矢数道明、清水藤太郎;p652(1969)
13)植木昭和;現代東洋医学 vol.7、98(1986)

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神経性無食欲症と診断され3年間IVHを施行されてきた食欲中枢を破壊したmicroprolactinoma の一例*     

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【抄録】
 7年前より食思不振出現、神経性無食欲症と診断され、3年前より全く経口摂取不能となりIVH(intravenous hyperalimentation) を受けていたプロラクチン産生腺腫を見逃されていた一女性例を経験した。
 血漿プロラクチン 91ng/ml と軽度の上昇であり、プロラクチンを上昇させる薬剤は服用していなかった。症例のプロラクチン産生腺腫は極めて小さな腺腫であり、判読は困難を極めた。
 この症例はプロラクチン産生腺腫が外側視床下部の食欲中枢を破壊してゆき、そして経口摂取不能となったものと推測された。
 症例にドーパミンD2受容体作働薬であるterguride を投与開始。血漿プロラクチンは 27ng/ml と減少。しかし経口摂取不能は不変。プロラクチン産生腺腫がすでに外側視床下部の食欲中枢を破壊していたと推測された。
 乳汁濾出に早期に注目しterguride などドーパミンD2受容体作働薬を投与していたならば症例は食欲中枢を破壊されず、経口摂取可能になっていたと推測される。
 
【key words】Microprolactinoma、Feeding center、Anorexia nervosa、Galactorrhea、Intravenous Hyperalimentation     

【はじめに】
 下垂体腺腫は産生されるホルモンによって分類される。大きく、ホルモン非産生腺腫とホルモン産生腺腫に分類される。ホルモン産生腺腫にはプロラクチン産生腺腫、成長ホルモン産生腺腫、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫、甲状腺刺激ホルモン産生腺腫、黄体形成刺激ホルモン産生腺腫、卵胞刺激ホルモン産生腺腫、多種ホルモン産生腺腫などがある。全脳腫瘍の60%を占め、成人に好発し、成人の脳腫瘍では髄膜腫、神経膠腫に次いで多い腫瘍である。その頻度は一般にホルモン非産生腺腫が約40%、プロラクチン産生腺腫約40%、成長ホルモン産生腺腫約20%であり、他のホルモン産生腺腫は稀である3)。
 プロラクチン産生腺腫は女性が圧倒的に多く、統計的に男性の10倍近くを女性が占める。
 プロラクチンは乳腺に作用して乳蛋白の合成や乳汁の分泌を促進するのみでなくゴナドトロピンの分泌や性腺機能にも影響を与える。
 プロラクチン分泌過剰症の女性では一般に乳汁濾出と無月経を伴うため、乳汁濾出・無月経症候群とも呼ばれる。プロラクチンの存在が知られるようになる以前から、これらの症状が分娩後に引き続いて生じた場合はChiari-Frommel 症候群、下垂体腫瘍に依るものはForbes-Albright 症候群、いずれにも属さない場合はArgonz-del Castillo 症候群という名で呼ばれてきた。
 プロラクチン産生腺腫は一般に良性の腫瘍であり、悪性の場合は稀である。女性では不妊症の原因となり、男性では性欲低下・陰萎の原因となる。
 血漿プロラクチン値が 200ng/ml 以上の著しい高値を示す場合はプロラクチン産生腺腫の存在が示唆される。しかし微小腺腫すなわちmicroprolactinoma では 30~100ng/ml という軽度の上昇を示すことが多い。また 30~100ng/ml という軽度の上昇は薬剤性に起こることが非常に多い。
 腺腫の大きさとプロラクチン産生能は必ずしも比例せず、巨大腺腫の場合はプロラクチン非産生腺腫が多く見られる11)。プロラクチン産生腺腫は女性では約半数がトルコ鞍の拡大を伴わない微小腺腫(microadenoma)であるが、男性では90%以上が巨大腺腫(macroadenoma)である11)。
 プロラクチン産生腺腫によりうつ病性障害およびうつ状態が高頻度に起こることが最近知られてきた14)。
 
【症例】
症例:24歳、女性
家族歴:特記すべきものなし
既往歴:特記すべきものなし
現病歴:高校3年の始め、食思不振出現。同時に生理不順、月経停止、乳汁濾出が起こる。A総合病院にて精査するも原因は不明。心理的ストレスによるものとされ、精神科にて抗不安薬および抗うつ薬などを投与されてきた。この頃、失恋があり、その心的外傷によるものと精神科にて解釈され神経性無食欲症および身体表現性障害と診断されてきた。
 食思不振は次第に増悪。月経停止、乳汁濾出は継続。3年前より全く経口摂取不能となる。IVH(intravenous hyperalimentation) にて栄養摂取せざるを得なくなる。
 3年前、乳汁濾出よりプロラクチン産生腺腫をA総合病院の内科の医師より疑われ、トルコ鞍を中心とした造影MRIを受けたが放射線科より「特記すべきものなし」と読映された。このとき抗うつ薬の服用を中止して1ヶ月が経過したときに採血した血漿プロラクチン値は 86ng/ml と測定された。
 A総合病院までは遠く、当院が近くである故、IVHの3週間毎の最挿入目的にて紹介通院開始。来院時処方は(alprazolam 1.2mg/日、分3。rilmazafone 1mg/日、眠前。)であり、この処方が半年間続いていた。IVH挿入部の消毒は母親が元・看護婦であり前医にてもIVH挿入部の消毒は母親が毎日行っていた。
 紹介状には第一病名に神経性無食欲症、第二病名にうつ病性障害、第三病名に身体表現性障害(疑)と記載されていた。
 IVHの容器を提げるための移行器とともに来院していた。IVHは過去3年間、中止されたことはなかった。
 症例には、性格的歪みが全く認められなく、うつ的傾向は軽度であり、このうつ的傾向は高プロラクチン血症に依るもの14)と判断。以前、この症例と酷似した症例の経験があり、乳汁濾出よりプロラクチン産生腺腫と考え新しく開発された副作用が比較的少ないと言われるドーパミンD2受容体作働薬である terguride の投与を開始する。初来院時、採血し、血漿プロラクチン 91ng/ml と測定される。   
 初来院から21日後(来院2回目)、プロラクチン産生腺腫(疑)としてトルコ鞍を中心とした造影MRIを施行。トルコ鞍を中心とした造影MRI上、直径2mm 程の極めて小さな腺腫を認める。
 3年前に撮影したトルコ鞍を中心とした造影MRIをA総合病院より取り寄せ読映すると同部位に直径2mm 程の極めて小さな腺腫を認める。
 初来院から35日後(来院4回目)、症例は「テルロン(terguride)を1ヶ月以上服用していますが食欲は全く湧いて来ません。経口摂取は全く出来ません」と言う。ドーパミンD2受容体作働薬抵抗性腺腫を考えたが、すでに食欲中枢を破壊され、経口摂取不能になっていると判断し、放射線療法は行わず。血漿プロラクチン 27ng/ml と低下しておりドーパミンD2受容体作働薬抵抗性腺腫ではなかった。

 以降、来院無し。

【考察】
 この患者の食思不振は心的外傷に依るものと診断されていた。また、3年前から全く経口摂取不能となったのは神経性無食欲症あるいは身体表現性障害と診断されていた。
 この症例は三環形・四環形抗うつ薬を投与されていた。それ故に無月経、乳汁濾出が起こっていると判断されてきた。
 プロラクチン産生腺腫はドーパミンD2受容体作働薬投与にてほとんどの症例の血漿プロラクチン濃度を正常域まで低下させるだけでなく、腺腫容積を縮少させることができる15)。微小腺腫すなわちmicroprolactinoma では腺腫が消失することも報告されている15)。
 しかし大部分の場合、投与の中止により血漿プロラクチン値は再上昇し腫瘍増大が見られ完治には到らない4)。最近はterguride という新しいドーパミンD2受容体作働薬が開発され、 bromocriptine より副作用が少ない10)として頻用されている。
「ドーパミンD2受容体作働薬長期投与後の腫瘍は線維化を示し手術剔出が困難になることが多い。よって経蝶形洞下垂体腺腫摘出術など外科的手術を第一選択とする」意見4)が存在する。また「外科的手術は行わず生涯に亘りドーパミンD2受容体作働薬投与を行うことを第一選択とする」意見14)も存在する。
 Otten P12)は「ドーパミンD2受容体作働薬は血漿プロラクチン値を低下させ腫瘍縮少効果も著明で、手術適応と薬剤による治療と何れを選択するかは腫瘍の大きさで決定する。腫瘍が大きい場合、手術適応となる。手術後の5年生存率は96%を越えており手術は安全で、切除が確実ならば術後のドーパミンD2受容体作働薬維持療法は必要がない」と述べている。
 Mah PM11)は「外科療法に依る下垂体腺腫の長期治癒は微小腺腫(直径1cm 以内)で約60%、巨大腺腫で25%程度である。外科療法の適応は、1)terguride などの服用がその副作用10)のため出来ない、2)terguride などの服用で血清プロラクチンが充分に下がらない、3)terguride などの服用中に腫瘍が大きくなる、以上のときである。」と述べている。
 一般にMah PMの見解が最も多く支持されている13)。しかし未だ様々な見解が入り乱れており、施設によって治療方針が異なる現況である15)。
 血漿プロラクチン値は薬剤性にsulpiride を代表とするドーパミン拮抗剤投与に依って上昇する。症例は乳汁濾出を抗うつ薬の投与故と判断されてきた。症例はsulpiride は投与されておらず、三環形・四環形の抗うつ薬を投与されてきた。三環形・四環形の抗うつ薬に依っても血漿プロラクチン値は軽度ではあるが上昇する2)。
 腫瘍が大きく血漿プロラクチン値が高い場合は外科的術後にプロラクチン値が正常域まで低下することは少なく、術後にドーパミンD2受容体作働薬投与を行う。また、 ドーパミンD2受容体作働薬投与に反応しないプロラクチン産生腺腫は頻度は少ないが存在し、その場合は術後にγ-ナイフ などの放射線療法を行う12)。
 症例の血漿プロラクチンは3年前 86ng/ml であり、今回は 91ng/ml である。なお、血漿プロラクチンの正常値は 4~20ng/ml となっている。
 プロラクチン産生腺腫の症状として無月経・乳汁濾出・眼症状・肥満・脳神経症状・脳圧亢進症状・性欲低下・多毛などの記載6)は有るが、食思不振の記載6)は見られない。逆に、高プロラクチン血症を来す疾患として神経性無食欲症が挙げられている6)。しかし「神経性無食欲症がどういうメカニズムで高プロラクチン血症を来すか?」との説明は記載されていない。また、他の文献にもそのメカニズムを記載されているものは存在しない。Couldwell 4)は「血漿プロラクチン値の基礎値は神経性無食欲症のほとんどの例で正常であるが、時に高値を示すものがある」と述べている。この「時に高値を示すもの」が今まで気付かれないでいた「食欲中枢を破壊したプロラクチン産生腺腫」と推測される。   
「食欲中枢は外側視床下部に存在する。その部位を刺激すると意識ある動物は食欲行動を起こす。破壊すると食欲が消失し痩せ衰えて死ぬまで食欲しない。それに反して満腹中枢は腹内側視床下部に存在する。その部位を刺激すると食欲停止を引き起こし、破壊すると多食と肥満が生じる」とCouldwell 4)は述べている。
 また「ネコの食欲中枢を傷害するとネコは完全な食欲不振のため僅かの間に見る影もなく痩せてしまう。また満腹中枢を傷害するとネコの食欲が非常に亢進し急激に太ってくるとともにどう猛な性格に変わってしまう」ともCouldwell 4)は述べている。
 症例はドーパミンD2受容体作働薬であるterguride 投与に反応せず、他院へ転院していった。このプロラクチン産生腺腫は直径約2mm と極めて小さく、食欲中枢の外に発生し次第々々に食欲中枢を破壊していったとも、食欲中枢の中に発生し次第々々に食欲中枢を破壊していったとも考えることができる。
 乳汁濾出に早期に注目しドーパミンD2受容体作働薬投与を行っていたならば症例は食欲中枢を破壊されず、経口摂取可能になっていたと考えられる。

【おわりに】
 筆者は本症例とほぼ同じ症例を一例経験している。その症例も20代の女性であり、どのような治療も功を奏せず、経口摂取不能・乳汁濾出・無月経を呈しており、神経性無食欲症、プロラクチン産生腺腫(疑)、うつ病性障害(疑)として紹介されてきた。その症例の場合もトルコ鞍を中心とした造影MRIにて極めて微少なプロラクチン産生腺腫が映し出され血漿プロラクチン 80ng/ml であり、採血時、抗うつ薬など血漿プロラクチン値を上昇させる薬剤の服用を中止して1ヶ月以上を経過していた。本症例と同じく経口摂取不能となって数年を経ており、IVHを施行されていた。ドーパミンD2受容体作働薬であるterguride を約1ヶ月間投与したが経口摂取不能は不変であった。terguride を約1ヶ月間投与直後の採血にて血漿プロラクチン 24ng/ml と低下していた。そして入院主体の精神病院へと転院となった。その後の経過は不明。それ以来、筆者は神経性無食欲症の患者には乳汁濾出が存在しなくとも血漿プロラクチン値を必ず測定するようにしている。           
 また筆者は、神経性無食欲症の死亡例を1例経験している。その症例は神経性無食欲症、うつ病性障害と診断されていた。これも20代の女性例であった。この症例は極めて強い食思不振・乳汁濾出・無月経を呈しておりプロラクチン産生腺腫が食欲中枢を破壊する途上であったとして間違いなかった。しかし血漿プロラクチン値を測定することも、CTやMRIを施行することも、ドーパミンD2受容体作働薬を投与することも上級医の無理解に依り行えなかった。
 この症例のようにプロラクチン産生腺腫が外側視床下部の食欲中枢を破壊し神経性無食欲症に酷似した病態を示した症例は筆者には3例目の経験であり、この病態を示す患者は世界中に蔓延していると確信する。
       

----本症例および本症例とほぼ同じ症例のadenoma は直径1mm 程度の極めて小さなmicroadenoma であり、このようなmicroadenoma は例え高精度で印刷しても判読不可能である故、省略する。microadenoma の場合はdynamic MRI (造影剤を静注し30秒間隔ほどで撮影する)の施行が推奨されている13)。しかし造影MRIにて極めて判読困難ではあったが存在を確認できた。症例の経済的負担も考えdynamic MRI は施行せず。----


【文献】
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* A Case of Microprolactinoma, it was Grown in Feeding Center, and Treated with Intravenous Hyperalimentation for Three years

                 完


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