「高雄型」重巡洋艦と共にすずさんたちが見たのは駆逐艦「雪風」でした。

そして直後に巨大戦艦「大和」が視界に入ってきます。

 

 「この世界の片隅に」 第1巻P.109より

 

 第1巻P.111より

 

 

予告編を見る限り、映画では義理の姪・晴美が「大和が二つおる。いっこは武蔵じゃ」と言っているようですが、原作では武蔵がハッキリと登場するシーンはありません。

大和型戦艦はその存在が軍事機密として秘匿された為、一般国民には知らされませんでした。しかし軍港が丸見えで、少なくとも就役後はその姿が視野に入る呉市民は、艦名もそれとなく知っていたようですね。

ただし大和の諸元・装備は徹底的に秘匿され、1944年10月のレイテ沖海戦時においても指揮を執った栗田健男提督は「主砲口径が(世界最大の)46cmである事を知らなかった」と戦後の米軍調査団に陳述しているという、信じられない話があります。

戦艦大和に関しては既に幾つか記事にしてあるので、

 

戦艦大和  2016最新映像(2016/08/24)
2016.4.7 二つの追悼式(2016/04/13)

眠る旧日本海軍の戦艦たち② 「大和(2015/03/10)

 

を参照ください。

 

さて今回紹介する雪風は1945年4月、沖縄救援に向かう大和最期の出撃に随伴し、坊ノ岬沖海戦を戦って生還した駆逐艦です。また戦史好きの方には説明する必要もないでしょうが、対米開戦時から主要な海戦に数多く参加しながらも、大きな損傷を受ける事なく終戦を迎えた武勲艦・幸運艦でもありました。

 

1939(昭和14)年12月の撮影 (Wikipediaより)

 

坊ノ岬沖海戦で大和(後方)を護衛する雪風  奥の航跡は冬月のもの (Wikipediaより)

 

「陽炎型」駆逐艦(全19隻)の第8番艦として、1940(昭和15)年1月に雪風は竣工しています。という事は上の写真は正式に完成する直前のものになりますね。書類上では8番艦ですが、竣工そのものは同型艦の中で3番目でした。

雪風は働き者でした。大戦中は僚艦が次々に沈んでしまった関係で任務が二重三重に増え、大きな海戦の合間でも常に何かしら動き回っているような状態で、しまいには司令部も雪風の所在を把握しきれなくなったそうです。ある新兵が乗務を命じられた際、雪風を探して横須賀、シンガポール、台湾、呉と渡り歩くはめになり、とうとう呉でデング熱に倒れて療養・・・してたら雪風が寄港したので着任できた、という嘘か本当か分からないような逸話まであるそうですよ。

 

終戦後は中国国民党に引き渡され、「丹陽」と名付けられました。この時、きちんと手入れの行き届いていた雪風を見て、「これが敗戦国の軍艦か?」と国民党側は大変驚いたそうです。

1965年に退役するまで台湾の地で働き続け、その後1970年に解体処分。舵輪と錨は日本に返還され、現在広島・江田島で見る事が出来ます。

 

 

「宇宙戦艦ヤマト 2199」より

 

戦後の海上自衛隊でも、雪風の名称(表記はひらがな)は護衛艦に継承されました(既に退役済み)。

またアニメ「宇宙戦艦ヤマト 2199」にも、主人公・古代進の兄が乗艦する宇宙駆逐艦として名前が登場しています。因みにアニメでは「ゆきかぜ」が戦没し「ヤマト」は生還するので、史実と逆の結果になっていますね。

この作品には他にも、坊ノ岬沖海戦に出撃した艦名が多く採用されているようです。

 

天一号作戦とか菊水一号作戦の名で語られる事も多い沖縄特攻。

坊ノ岬沖海戦を戦った水上部隊は、巨大戦艦大和の他に軽巡洋艦1、駆逐艦8。護衛戦闘機もありません。そのうち何とか本土に帰還出来たのは、雪風を含め駆逐艦4。

とかく大和ばかりが注目されがちですが、親方そのものよりも、親方を守ろうと奮戦し続けた艦艇たちの方に梅之助は情が行きます。

 

 

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