横須賀ドライドック見学ツアー | gayasan8560のブログ

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趣味の鉄道、街歩きネタを中心としたブログです。鉄道については、主に歴史的視点からの記事が多いです。

 幕末、ペリー来航をきっかけとして開港に踏み切った江戸幕府は、海防の重要性を痛感します。そこで軍艦の製造のために造船所を建設することにしました。担当したのは勘定奉行なども歴任した小栗上野介忠順でした。小栗は当時盛んに幕府に接近を図っていたフランスの協力を仰ぎ、その結果、フランスの海軍技術者であるフランソワ・レオンス・ヴェルニーの指導のもと横須賀造船所の建設が行われることになりました。今回ツアーに参加して見学したドライドック(第1号から第3号)も、そのとき建設された造船所施設の一つです(ただし、造船所の完成は明治になってからですが)。

 ドライドックを含む横須賀造船所は、明治維新後に旧海軍の横須賀海軍工廠となり、敗戦後は米海軍横須賀基地となっています。ドライドック自体は艦艇の修理施設として今も健在ですが、米軍基地内のため普段は見学することができません。今回、横須賀市の主催により普段は入れない米軍基地内のドライドック見学ツアーが行われ、幸い抽選に当選したので参加することができました。

 

            図-1 ドライドック位置図

 

 横須賀基地内には6カ所のドライドックがありますが、今回の見学ツアーの対象となるのは幕末から明治初期に建設された第1号から第3号までの3箇所のドライドックです。上図に示したように、ヴェルニー公園から海を隔てて外観を見ることができます。下の写真はヴェルニー公園側から見た第2号、第3号ドックです。

 

   写真ー1 ヴェルニー公園から見た第2号、第3号ドック

 

 見学コースを図ー1に赤い線で示しました。ただし、後から記憶をたどって描いたので、少し違うところがあるかもしれません。

 金属探知機をくぐるなど、空港なみの検査を受けて基地内に入ると、まずは第1号ドックに向かいます。今回見学した3箇所のドックのうち、残りの2箇所は起工が明治維新後ですが、第1号ドックだけは慶応2年に起工されています。竣工は明治4年です。残念ながら、ここには修理中の艦艇が入渠していたので撮影禁止でした。入渠していたのは海上自衛隊の輸送艇2号、全長50m強の小さな艇なので、小さいとはいえ130mの長さのある第1号ドックなら楽々です。

 

  写真ー2 第1号ドックから見た対岸のヴェルニー公園

 

 入渠中の艦艇は撮影禁止でしたが、ドックと海を隔てている扉船上を歩くことができたので、そこからドックの反対側の海側を撮影したのが写真ー2です。

 第2号ドックは幸いにも空だったので撮影可でした。明治17年に完成した全長170m余りある、今回見学した3ドックのうち最大のドックになります。とはいっても空母信濃を建造した第6号ドックは337mあるので話んいなりませんが。

 

写真ー3 第2号ドック(ドック毎に建造年が記載された看板があった)

 

写真ー4 第2号ドック(この溝のところに扉船で仕切りを付けることで小さな船なら2隻同時に工事ができる)

 

写真ー5 第2号ドック(底に置いてあるブロックを入渠させる船の形に合わせて配置させ、その上に船を置けるようにする)

 

 第3号ドックは、小さな曳舟のような船が入渠していたので撮影禁止。とても軍事機密とは思えない船ですが規則は規則、仕方ありません。

 ドックの脇にはレールが埋もれていました。ツアーを引率しているガイドの方(日本人)は、ドックのクレーン用じゃないかと言ってましたが、ドックから離れたところにカーブして延びていた痕跡があるので、引き込線の跡のようです。

 

写真ー6 第2号ドッック脇の埋め込まれたレール(他のドックにもありました)

 

写真ー7 ドックの先にカーブしながらレールの痕跡は続いています。

 

図ー2 米軍が戦時中から終戦直後にかけて作成した地図(ドック周囲に引込線が描かれている)

 

おまけ(その1)

 基地内は広いので、職員用の巡回バスが走っています。

 

        写真ー8 巡回バスのバス停

 

おまけ(その2)

 旧海軍工廠の庁舎(関東大震災で初代庁舎が壊れたので二代目)だった建物が、下士官用クラブとして健在です。建物の前には、二代目庁舎の竣工時に建てられた記念碑がありました。

 

写真ー9 旧海軍工廠庁舎(現在はCPO(Chief Petty officer:下士官)クラブとして利用)

 

写真ー10 二代目庁舎竣工時の記念碑

 

 大震災で壊れた初代庁舎の廃材が使われているとのこと。また、記念碑の上部には初代庁舎が描かれており、下部には二代目庁舎再建までの経緯が書かれているそうですが、遠くてわかりません。