24-09-06 ギャレゴジ | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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主に仕事に関わる、特撮、怪獣がらみのブログです。
ときどき、猫が登場します。

24-09-06 ギャレゴジ

2年前に作ったドハゴジ原型に続いて、今回はギャレゴジの原型。ともにアメリカのスパイラルトイの依頼です。ソフビになります。

基本は米国内での販売です。日本ではワンフェスへ彼らが参加した時に買えるかと思います。生産は日本です。怪獣ソフビのブランドが日本製だから、そこが良いそうです。

販売は2025年。現在、原型写真がメーカーから公開され、アメリカのみなさんが喜んでくれているので一安心しました。

ぼくの手を離れ、これからシリコン型をとってワックス原型を起こし、金型を作ります。成形、組み立て、塗装、パッケージ、流通とまだ先は長く、早くても半年先になります。進展したら報告します。

 

アメリカ製のゴジラ映画は、トライスター製作、エメリッヒ監督の「GODZILLA」(1998年)がまずあって、同じタイトルでレジェンダリーピクチャーズが仕切り直したのが「GODZILLA ゴジラ」(2014年)でした。これがシリーズ化して現在のコング篇に続きます。並べてみるとこうなります。

「GODZILLA」(1998年)ローランド・エメリッヒ

「GODZILLA ゴジラ」(2014年)ギャレス・エドワーズ

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(19年)マイケル・ドハディ

それぞれ、監督名をとって、エメゴジ、ギャレゴジ、ドハゴジ、と日本では呼ばれます。

ドハゴジの原型を頼まれたのが2年前でした。

あの新型コロナで五里霧中の2021年、有り難い事に、スパイラルトイとメディコムトイから仕事の依頼がありました。イベントがなくなり、個人メーカーがお手上げの時期でしたから渡りに船でした。

前年の20年に持続化給付金が出ました。どうするか思案を重ね同人誌へ投資することに。連続して出す事で顧客をつかんで内容も煉れて現在に続けられました。やって良かったと思うんです。

同人誌出身の商業ライターはふたたび同人誌をやることに抵抗のある人とそうでない人に別れます。ぼくは抵抗がある方でした。

またSNSへの投稿を一切やらない人もいますが、そこは面白く、率先して書き続けました。悪筆なので、手を休めるとダメだと思った事も一因です。

同人誌を、そういう時にこそと押してくれた人たちのおかげでした。

幼少時に通院が多かったぼくは褒美に怪獣図鑑と怪獣人形が与えられました。大人になってそのどちらも仕事に繋がり、この歳でも続けられる事へ感謝しないわけにいきません。

ソフビの原型は92年のM1号のラゴンやリトラ、ガラモンミドルから数えて30年選手です。その前に、50㎝の可動式ラテックス人形を80年ぐらいからやっていたので、プラス10年の原型経験がありました。

本もソフビも形として世に残ります。

とくに海外の人がマーミットでやったデスゴジをとても喜んで写真をよく載せてくれた。嬉しくなって、それは自分がやったものです、大切にしてくれて感謝します、とレスをしました。何十人もです。

その積み重ねで原型師としての名前が売れました。

ソフビと言うか、オモチャ業界は原型や設計者の名前を伏せる傾向が古くからあります。企業秘ですからね。他社へ知られたくない。さらに、オモチャだからと勝手な改造や流用は日常茶飯事でした。海賊版も生まれます。原型や設計はあくまでも仕事の一過程なんです。

でも、例えば、オーロラ社のプラモデルの原型をやったレイ・マイヤーズさんは著名です。映画でもそうです。元を作った人がちゃんと名前を残せます。

45周年の企画でブルマァク(とマルサンの)原型師・河本武さんの名前が世に出たのは今世紀に入ってからでした。それまで名古屋の瀬戸物職人とだけ言われ続けてきました。あのミリオンヒットした怪獣の原形をやった人が名前を出せない現実でした。

ぼくにとって昭和の怪獣造型の3傑は、利光貞三、高山良策、河本武です。河本さん、どれだけ会社を儲けさせたんだろう。むろん、とうに故人です。

だからソフビも、著作本と同じように、原型の名前を残そうと思ってせめてもの抵抗で体のどこかに<y>の文字を彫りました。

ソフビが日本の文化の1つに数えられる今、その小さな運動の一環として、海外へセールスしたわけです。相手は1人1人の個人ですから地道です。その結果が仕事に繋がりました。現在も応援して下さる青い目の人たちとやりとりが続きます。

いえ、ぼくは英語は出来ません。いったん日本語で書いたものを英訳し、もう1回日本語に和訳する。そこで意味が通らない文章は直してからまた英訳する。この手間が肝要です。センテンスを出来るだけ短くするのがコツで、Google翻訳を使います。これだって専門家から見たら稚拙な翻訳ですが日常のやりとりは充分です。

ただし、会話となるとどうにもなりません。通訳してくれる人が間に入らないとただ笑っているだけになります。でも案外、それでも良いんです。握手してハグして。みんな怪獣が好きだから。

 

今回依頼された原型は、ギャレゴジです。

前回の反省点として、少し大人し目だったので、動きを感じさせるようにしました。基本は左右対称であるものの、若干、脚の踏ん張りを違えています。

あと、前回同様、ヘッドヘビーにしてあります。劇中ではもっと小顔ですけど、人形の表情を伝えるサイズに。

自分ならではのこだわりと言う点では、マルサンの怪獣の原点はキューピー人形でした。赤ちゃん座りが出来る腰のVカット。鳩胸出っ尻のS字曲線。それと五月人形のような眉目秀麗さ。これをぼくも踏襲して人形としての愛らしさを狙いにします。ガレージキットとの境界がここにありますから。

キンゴジのような骨太の体形も狙いです。アメリカ人の好みを考えました。なにしろオーロラのゴジラがすべてのゴジラグッズの原点ですからね。あれはキンゴジです。そしてマルサンのゴジラはオーロラのゴジラをモデルにしたもの。

オーロラのゴジラのダイナミックなフォルムが参考になります。

さらに気持ちの問題として。現在のゴジラは人が入らずにモーションキャプチャーで役者の動きをデータに置き換えます。ですが、元は人の動きですから、モーションアクター担当のアンディ・サーキスさんが構えるゴジラのポーズを念頭に入れました。

 

 

画像

・オーロラ社のプラモデル、ゴジラなどの彫刻家、レイ・メイヤーズさんとマルサン、ブルマァクの原型師、河本武さん。

・ギャレゴジのモーションアクター、アンディ・サーキスさんの代表作、拾い画像となります。コングとゴジラ両方やった人は中島春雄さんに継いで2人目。

・スパイラルトイから公表されたギャレゴジの原型と、それに加工してくれた人がいました。こういう色にして欲しいと。これいいですねぇ。