メフィラス星人の日 その2  | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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メフィラス星人の日 その2 

冒頭、引力を操る逆引力、半引力と言うSF科学の説明で有り得ない状況を納得させます。

当時のSFにあるんですかね。ぼくはSF小説の世界は疎いのですが、大伴昌司が出入りしている円谷プロだし、築地の料亭でSF作家を集めてアイディア出し意見出しをやっているところから始まっていますから、何が出て来ても不思議でありません。当の金城さんもSF小説やSFドラマ、SF映画のマニアです。

一般には、物体が互いに引き合う力を引力と言い、その反対は、磁石の同じ極が反撥する斥力(せきりょく)と言うと、高校生の時に習ったと思います。でも理科の先生に聞いても逆引力、半引力は分からないかもしれません。

反重力と言う言葉はあります。なにかの介在によって重力をを調整する、あれです。

ぼくらは引力光線とか重力嵐なんて一般に有り得ない言葉を特撮から得たわけですが、今回は何万トンものタンカーが空を飛んできます。そして上空へ吸い込まれ爆発。岩本博士は、上へ落ちる、と説明します。

子供だから、まったく分からない理屈でも、博士の説明に、そうかと思うんです。

大伴さんの図解を、1兆度の火球って有り得ないだろ!と目くじらを立てる人には空想特撮シリーズは楽しめませんよね。

それじゃ、28番街に現れた巨大フジ隊員や宇宙人たちは、どういうものなのか。フジ隊員は円盤内にいましたから、投影された姿でしょうに、それが物理的な破壊をします。どこかで実体になっているのか。

宇宙人たちは暴れませんから、投影だけかもしれないですね。シナリオにはその説明がありません。

さまざまな謎と空想が駆け巡ります。

その中でリアルなところでは、28番街は見て分かるように丸の内のビル街でした。

「ウルトラQ」でも東京の中心は丸の内でした。マンモスフラワーの開花、ガラダマの襲来、続いて「ウルトラマン」では、グリーンモンスとウルトラマンの決戦。あのマルサンのウルトラマンの台紙は銀座和光ビルを背景に、ペギラとウルトラマンが戦う場面でした。

この回でもし宇宙人たちが暴れていたら? あるいは、ウルトラマンと戦っていたら?

すごい画面になるのに、顔見せだけです。残念と言えば残念だし、贅沢と言えば贅沢。

バルタン星人、ケムール人、ザラブ星人。シナリオでは、ダダも居ました。ダダが出なかったのは、単純に、ショーの地方回りから戻ってなかったのかも知れません。楳図かずおのマンガでダダを確認出来ます。

さらに、シナリオ初稿では、写真で、ナメゴン、ベムラー、ガラモン、ギャンゴも登場する予定でした。総決算ですね。

メフィラスは、それらの上位に君臨する力関係です。自称宇宙の帝王のバド星人は情けない戦いを見せましたが、紳士的な戦いを見せたメフィラスなら、帝王を名乗っても不思議でありません。

シナリオには、

 照明が次第に明るくなり、奇妙な椅子に座

 ったメフィラス星人が現れる。

 怪物である。しかし、その顔は、見方によ

 っては、非情に美しいとさえいえるつくり

 だ。例えばダリの絵のように。

 

とあります。これを成田さんは、

 怪獣、怪物、怪人ではなく、宇宙人のデザインを真剣にやり始めた頃のデザインです。

と画集で説明しています。

黒は宇宙感を表します。宇宙人の路線は、ゼットンがこの後に続きます。

造型は高山さん。

頭部は型くずれを防ぐため樹脂で裏打ちし、銀色のところは樹脂です。黒い部分はラテックス。

目、口の電飾は倉方さんです。

素晴らしい造型でした。

人気が出たので6年後の「ウルトラマンTタロウ」に再登場しました。

その2代目はなんだかなぁ。。。と思ったものです。ひきょうもらっきょも、は名台詞だと思いましたが。

これ、私見では、初代メフィラスが中に入っていますよ。試しに写真の顔を入れ替えてみた事があるんですが、違和感がありません。

開米プロへの造型の指示書が残されています。安井さんの絵です。

安井さん、楳図かずおのコレクターで先生がぼくより持っていると太鼓判を押す人でした。その上、アシスタントまでやっているんですね。絵が上手いわけです。この頃は大学生で、バイトで開米プロに出入りして、怪獣ショーをやっていたとか。

デザイン画というより、ここを注意して作って下さい、と言う指示書で、あまり細かいので、開米さん、もう残っていた初代を使っちゃえ!みたいなように感じます。お腹の模様もそのままのようだし。

メフィラス星人は撮影後、他のキャラクター同様怪獣ショーで活躍します。「泣いてたまるか」や「レッドマン」でも使われました。

 

メフィラス星人のメディアでの登場は、放映中はそんなにありません。

誌面では「少年マガジン」「ぼくら」の巻頭グラビアにこれから登場するキャラクターとしてメフィラスも登場するぐらい。

年が明けてからの商品は、年末商戦で一段落したため、一拍空いちゃうんでしょうね。新発売の図鑑たちほとんどは再放送時期で、内容的に二番煎じでした。

番組が終わるともう次の新番組に商品は集中します。いまでもそうですよね。「ウルトラマン」が商品数で桁外れなのは累計なのとたしかに66年末までは爆発的な収益があったと思います。

オモチャでは、マルサンが出した最後の「ウルトラマン」怪獣人形がメフィラス星人でした。硬い素材であまり遊べませんでした。

本放送が終わってすぐの発売でしょう。

「キャプテンウルトラ」から、コストダウンのため人形のパーツが少なくなり、足が動かない首が動かない事に、ぼくは人形に魅力を感じなくなりました。

遊びよりも観賞用なのか、リアルな造型に変わって、全体に子供っぽい雰囲気でなくなります。

メフィラスと同じテイストでゼットンも出ていたら面白かったかもしれませんが。体をひねったリアルなシワは、エレキングの造型師と同じかもしれません。

 

怪獣ブームはいずれまた検証するとして、ざっと、67年の春から夏を簡単に振り返ってみます。

「ウルトラマン」3クールはそのように怪獣ブーム熱がいったん下がりました。最終回から新番組でまた熱が上がります。

この頃のショッキングな出来事と言えば、66年晦日に放映された「鉄腕アトム」の最終回でした。視聴者、重なりますからね。

あれだけ元気印のアトムがあんなことになって、全国の子供たち、ちょっと心に傷をつくったと思います。

「ウルトラマン」の後半から実にシリアスになってきて、なんだか嫌な予感を感じていたかもしれません。

それまでの怪獣と言えば東宝の写実的な本格怪獣でした。幼児から見ると怖かったほどです。

その点、「ウルトラマン」は、広く子供たちに空想とSFの楽しさを知らしめ、悪い意味でない子供向け番組の決定版になったと思います。

それはちょうど映画からテレビの時代にバトンが渡されたタイミングでした。

「ウルトラマン」の原点となる「ウルトラQ」は64年から2年近い制作期間を費やし「アウターリミッツ」「ミステリーゾーン」など海外のSFやサスペンスの番組を範にしています。66年の「サンダーバード」は人形とミニチュアで冒険とサスペンスを見せました。それらの流れから、次に来るのは、プラス宇宙でした。

米ソの宇宙開発はやがて少年誌を賑わしていくアポロ計画に子供の夢が集約します。ハリウッドが映像に採り上げないわけにいかない重要な要素です。決定版は「2001年宇宙の旅」(68年)ですが、ぼくはそれより「宇宙家族ロビンソン」(66年)にはまりました。

円谷プロが「ウルトラマン」を3クール分で終了させるのは制作が追いつかなくなったためと言われています。後番組は東映がとり、宇宙特撮シリーズ「キャプテンウルトラ」を半年。円谷プロは、その間「ウルトラセブン」の制作準備をしていました。

誰もが和製宇宙ものに期待をしたはずです。

ところが、制作会社が宇宙SFとメカを新作の主軸にと考える傍らで「恐竜100万年」(67年)の登場にに子供たちは愕きました。

ちょうど「禁じられた言葉」が放映された頃の公開で、ぼくは、ハリーハウゼンの特撮を映画館で観た最初でした。これは本物だ!と幼稚園児が思うんですからね。

たしかに、大伴昌司が事ある毎に紹介する海外のリアルな怪物映画に比べたらウルトラ怪獣は子供向けと思います(むろん褒め言葉です)。

そこへ生々しい恐竜が入って来ました。少し後の「猿の惑星」(68年)も愕きました。生々しい要素は、68年になると我が方では妖怪に引き継がれました。

経緯としては、怪獣、恐竜、妖怪です。

仮にもう1クール(13本)「ウルトラマン」があっても楽しめたと思うんですが、宇宙特撮は面白かったかどうか? と言うと、疑問は残ります。

「キャプテンウルトラ」も、「ウルトラマン」38話「宇宙船救助命令」の宇宙特撮も正直、期待以上ではありません。画面がモノクロで小さいですから、よく分からないんですよ。

マルサンのキャプテンの怪獣人形もウルトラ怪獣を越えられなくて、どんどん求心力が薄れました。

マルサンは怪獣人形の次にとSFメカのプラモデルで攻めて来ます。今井のサンダーバードが大ヒットしたためです。

マルサンはもともとプラモデルの元祖、パテントをもった会社なので、サンダーバードのメカ人気に追いつけ追いこせと、「キャプテンウルトラ」「宇宙家族ロビンソン」、秋の新番組「ウルトラセブン」と大量生産しますが、ヒットは打てても金型の回収までいけたのかどうか。その先は倒産が待っていました。

また、今井でも「マイティジャック」(68年)が振るわなかった現実を見ると、メカものは質実ともにイギリス制作に軍配がありそうでした。

67年の夏、怪獣ブームが盛りあがります。

東宝系で「キングコングの逆襲」と「長篇怪獣映画ウルトラマン」が公開されてのブーム後半です。

ぼくたちは、初めて動くカラーのウルトラマンを観るのです。カラータイマーに黄色がないのを初めて知るんです。

そして、新番組「ウルトラセブン」の宣伝をかねて「ウルトラマン」の最初の再放送が始まりました。「ウルトラマン」人気を当て込んで図鑑がまた企画されます。

でも思いは新番組「ウルトラセブン」へ気持ちは傾きますよね。「恐竜100万年」の影響で始まった「怪獣王子」も同じ秋の新番組でした。

「ウルトラセブン」はSFを求めすぎました。そのわりに吊った宇宙人がひょごひょご動きます。

1話の怪獣の人形が出ないなんて有り得ない話でした。怪獣ブームなのに怪獣が出ない。やがて視聴率は落ちて行き、それまで正月の2日(ゴメスを倒せ!)、元旦(怪彗星ツイフォン)とゴールデンタイムで放映されたウルトラシリーズが、「ウルトラセブン」では第2週の放映になります(キングジョーの前篇)。

「ウルトラマン」は再放送でも高視聴率を上げましたが、怪獣ブームは少しずつ衰退していきました。

 

 

 

 

 

【画像】

 

・ウルトラマンの特写、Cタイプは、組み合っている全身はあるんですが、単体の全身がないんですね。このカットも足下まで写ってません。

 

 

・同じ頃のビンさんの特写。前回紹介した「少年マガジン」の巻頭カラーグラビアで紹介された未使用のカット。使用分は残っていないんですね。いつもそうです。

 

 

・67年の講談社「ぼくら 5月号」の巻頭カラーグラビア。

 

 

・67年講談社「ぼくら 10月号」付録の「怪獣図解事典」、その表紙をメフィラスが飾った。

 

 

・その本のメフィラス星人の図解。大伴昌司の構成。やはり反重力関係です。

 

 

・現代コミックス「ウルトラマン 5月号」表紙は、柳柊二。

 

 

・そのマンガはいつもの井上英沖ではなく、同門の加来あきらが描いている。

 

 

・現代芸術社「パノラマ世界大怪獣」。石原豪人の表紙。67年の後半の出版と思います。成田さんのパノラマの再録など。

 

 

・ミュージックグラフ「怪獣図解百科」から、メフィラス星人の項目。分かりづらいですが、セロハンに印刷されたページがはさまれていて、めくると内臓が見える仕組み。これも67年の後半。

 

 

・現代芸術社「宇宙大怪獣」の表紙、宇宙大怪獣ギララとウルトラマンとメフィラス星人。宇宙づくし。67年5月発行。

 

 

・ソノラマ「宇宙大怪獣図鑑」のメフィラス星人。南村喬之の絵。67年。

 

 

・エルムの図鑑から、初出は、ふらんす書房「怪獣カラー百科」。梶田達二の絵。

 

 

・これもエルムだろうか、拾い画になります。再録です。「怪獣カラー百科」は手元にないので確認出来ません。前村教綱の絵。

 

 

・70年前後の5円引きブロマイド。講談社の特写の転用です。下の左のカットは知られたところですが、ノートリミングだと上のように左右があったんですね。大怪獣ってなんだよ(笑)。

 

 

・マルサンの怪獣人形、「ウルトラマン」ではこれが最後の発売。頭まで黒が吹いてあるのが初期分。