メフィラス星人の日 その3 火星での宇宙人会議 | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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メフィラス星人の日 その3 火星での宇宙人会議

「禁じられた言葉」がもし前後篇で、メフィラス配下の宇宙人軍団がもっと活躍していたら? と思うのは誰にでもあったはずです。

再放送の度に、28番街に現れるバルタン、ケムール、ザラブの姿を見逃すまいと目を皿のようにしました。本当に瞬きした瞬間に終わってしまいます。

67年の夏休み。小学校へ入った最初の夏休みで、大宮の親戚のところへ泊まりがけで遊びに行って、不在だった年長の従兄弟の部屋でノーベル書房の怪獣大全集を見つけました。

この全集は、小学校の高学年以上が対象の全集で10巻出す予定がその半分で終わりました。現在、復刻されています。

大宮で出会った怪獣大全集は、第4巻「怪獣の描き方教室」でした。怪獣の絵を描く手引き書であり、また小松崎茂物語に加えて、成田さんがウルトラ怪獣のデザインを紐解いています。その絵が大人びていて、さすがに、年上の持ち物だと思ったのです。

当時、本屋さんで子供向けの本棚に怪獣大全集はなかったと思うんです。かといって動物図鑑のコーナーにもなかった。

ぼくは小学校へ上がる際、百科事典と子供向け物語の名作全集を買ってもらって、けっこう、はまっていました。百科事典と内容はそう変わりませんが、分冊してある子供向けの専門書、例えば、動物や乗り物などの図鑑も大好きでした。それらと平行して単行本の怪獣図鑑や「ぼくら」などの付録の怪獣図鑑も本体以上に好いていました。

厚い本が、それまでの本と違う意味をもっていると思ったためです。文字情報の多い怪獣大全集はとくに権威があると感じました。

大人になっていくつか怪獣図鑑めいた本をつくりましたけど原点はそれらにあるんです。

高校生の時に怪獣大全集に再会出来ました。

筺入りの5巻全体を手に取ったのはこの時が初めてです。同人誌を始めたばかりで、元山くん宅で見せてもらって大興奮でした。

中でも3巻「怪獣絵物語ウルトラマン」は金城哲夫のシナリオからの加筆で、なんとしても読まないと始まらないと、古書店を巡るきっかけになったと思います。

元山くんは、大伴昌司に師事して大伴本に強い思い入れのあった竹内さんと違った切り口で、コレクションとしての怪獣図鑑を評価した先駆者です。その彼がこの怪獣大全集の「怪獣絵物語ウルトラマン」をちくま文庫にまとめています。興味ある方は「小説ウルトラマン」を捜してみて下さい。ウルトラマンのロゴに金城哲夫の文字がパズルのように収まった、下地の番組オープニングの影絵が目印です。

 

「怪獣絵物語ウルトラマン」の、個人的に感じたハイライトは「禁じられた言葉」の前日談、火星での宇宙人会議の項目でした。

メフィラスが議事進行で、ウルトラマンを倒して地球を奪う目的の宇宙人たちが火星に集まって作戦を立てます。

その作戦は、

第一作戦 メフィラス星人

第二作戦 バルタン星人

第三作戦 怪獣ジェロニモン

の順番に決定しました。挿し絵に登場した宇宙人は、バルタン、なぜかドゴラ、ザラブ、メフィラス、ケムール、ダダ、レオのレッドギラスみたいなやつ、そして絵にもされてない、一言の発言もしない正体不明の宇宙人。

 

(ゼットン・・・はやく育て・・・)

 ぽつんとつぶやいた。しかし、その声はだれにもきこえなかった。だれもかれの存在を無視していた。よほど小さな星からやってきたのだろう・・。

 

この絵物語は、シナリオをだいぶはしょった代わりに、ハヤタのウルトラマンへの心情や怪獣の出現とともに姿を消すハヤタへのマスコミ批判など、映像で描ききれなかった部分が興味深い。反面、やはり各エピソードとしての深みがないのが欠点でもあるんですが、金城さんの筆致が楽しめると思います。

会議で喧喧囂囂の宇宙人たち、結局、作戦は巧く行きません。

ジェロニモンが宇宙怪獣だった事も愕きでした。物語はそれから最終話に続きます。

 

「少年マガジン」で連載していた楳図かずおのマンガ「ウルトラマン」も大好きでした。一峰大二、井上英沖らも「ウルトラマン」を描いています。それぞれに名人芸の表現で印象深いのですが、楳図の全体にただよう怪奇調の雰囲気は格別の思いがありました。

「ウルトラQ」の紹介があった号が「半魚人」の最終回だったせいか、この時期の楳図作品に惹かれます。「ひびわれ人間」とか「笑い仮面」とか。

うちの方は下町で(品川区中延)、貸本屋がありました。70年代になって貸本業はなくなってただの古本屋になります。単行本は紐閉じされ、厚めのビニールのカバーがつけられました。最終ページに図書カードのように貸し出しの日付を差し込んで、店主に有料で借り受けます。人気のあるマンガは、ページが外れているものもありました。ずいぶん借りました。

またうちは中華屋でしたから、少年誌が、マガジン、サンデー、キングと揃っていて、他の子供より恵まれていました。

楳図の「ウルトラマン」にも「禁じられた言葉」の回がありました。

なんと、ウルトラマンが、宇宙人軍団に踏みつけられて「グエ!」って、ほとんど「まことちゃん」ですね。ここにテレビに出てないダダがいるんです。台本をもらってそのまま絵にしたんでしょうね。

 

 

30 二八番街

 ビルから出て来るムラマツたち。

 巨人のアキコ、ビルをこわす。

 警官がピストルを射っている。

 アキコ、怒る。

 イデ、警官の前にふっとんでくる。

イ デ「やめろ! 射っちゃあいかん!」

警 官「こうなったら、怪獣も同然です! 射て!」

 警官たち、狙う。

イ デ「待て! 待ってくれ! フジ隊員はロボットな

    んだ! 射っちゃあいかん!」

 その時である。

 天を轟かして、メフィラスの笑う声。

 ハッとなる一同。

ムラマツ「誰れだ!? 正体をみせろ!」

 と、アキコの姿がパッと消える。

 驚くムラマツたち。

 と、バルタン星人が現われる。

ムラマツ「バルタン星人!?」

 ダダが現れる。

イ デ「ダダ!?」

 ザラブ星人が現れる。

「ザラブ星人!?」

 アラシ、スパイダーを射とうとする。

メフィラスの声「やめたまえ、アラシ隊員」

 アラシ、ギョッとなる。

メフィラスの声「争いは止めよう! 戦おうと思えば私の命令で

行動を開始する! しかし私は争いは嫌いだ!」

ムラマツ「姿をみせろ!」

メフィラスの声「その必要はない。私には君達がみえている。バ

ルタンもダダも、ザラブも、ケムール星人も、そしてナメゴンも」

 ○ナメゴンの写真が来る。

メフィラスの声「ベムラーも・・」

 ○ベムラーの写真。

メフィラスの声「ガラモンも・・」

 ○ガラモンの写真。

メフィラスの声「ギャンゴも・・」

 ○ギャンゴの写真。

「みんな私の命令で地球を破壊することが出来る

のだ。」

「嘘をつけ! みんな我々科学特捜隊の力で退治

したぞ!」

メフィラスの笑う声。

 

31 ドーム型の奇妙な部屋

 スクリーンに二八番街のムラマツたちがう

 つっている。

メフィラス「(笑)君たちは、狭い庭を全世界だと思って

 いる小さな蟻だ。自分の力を過信しちゃいかん

 よ」

 

32 二八番街

メフィラスの声「私は連中のように暴力をふるうのは嫌いだ。私

        は人間の心に挑戦するためにやって来たのだ」

ムラマツ「心?」

メフィラスの声「そうだ! 科学特捜隊の人類に対する忠誠心に

        挑戦するんだ。サトル君が、もう間もなく私の

        頼みを受け入れてくれるだろう! ハッハッ・

        ・・」

 バルタン、ダダ、ザラブ、消える。

ムラマツ「待て! 私の頼みって何だ!?」

 一同、見廻す。

 だが、返事はない。

 

初稿からです。決定稿では、ガラモンたちの写真はオミット。

「たのしい幼稚園」の金城さんの絵物語では、ガラモン、登場します。河島治之さんの絵です。河島さんは、TBSでドラマのタイトルロゴなどを描いています。そこから演出部に移って、エイケンへ出向し、「エイトマン」全話の絵コンテを描いた伝説の人でした。桑田タッチなのは、そこで慣らしたからでしょう。

TBSビデオサービス名義で、水氣隆義さんと共に、「ガラモンの逆襲」や「ペギラが来た」「ナメゴン対ゴメス」などのフォノシートの絵を描いています。

講談社では「たのしい幼稚園」用に切り絵のようなイラストで、えものがたり「ウルトラマン」を描いています。執筆は金城さんです。

メフィラスの話は、初出が67年の本誌、71年に絵本で再録されています。手元に絵本しかないので、絵本版の河島さんの絵を紹介します。こっちの方が大きく載っています。

 

残念ながら、「ウルトラマン」も終盤なので(それゆえに生まれた話ではあるものの)、メディアの中で宇宙人軍団の策略・登場は、これくらいしかありません。

ノーベル書房の怪獣大全集では、金城さんの意見が反映してか、絵物語以外でも、宇宙星間図が紹介され、どこにバルタンらがいるのか、また宇宙警備隊としての活躍なども紹介されました。

ドラマを離れたところでですが、重要な情報だったので、サブストーリーとして元山くんとやった竹書房の「ベストブック ウルトラマン」で火星での宇宙人会議を紹介しました。

円盤の内部から見る窓の外に火星のバラが咲きナメゴンも居る、ちょっとした遊びです。絵が上手くないのはご愛敬で。南村さんあたりに頼みたかったのに予算が出ませんでした。

あと、もう1つ、手前味噌ながら。飲み会の酒の肴に成田さんのデザインをならべたミニポスターをつくった事もありました。宇宙人たちがつく席は「ナショナルキッド」の円盤を逆さにしたものです。メモリを持っていってコピー機から出力するんです。便利な時代ですね。

 

 

 

 

【画像】

 

・成田さんがレーザーディスク用に描いた宇宙人軍団。

 

 

・メフィラス星人。金城さんのシナリオではメフィラス。扇幸二が演じた。

 

 

・バルタン星人。3代目と称される。若干、塗装も変わっています。建物の合成前のショット。

 

 

・ケムール人、これも合成前。中島さんが入っています。妙に堂々としているのはそのため。手は塗装してない手術用のゴム手袋。ラテックスそのままの色です。カラーのケムール人、実はエビ茶ぽいんですね。ビンさんの述懐でも、その色だそうで、成形色がそうなんでしょう。高山さんは予めラテックスに色を付けて成形色にしています。その上にくるみ塗装したり、簡単な色の強弱をつけます。

 

 

・ザラブ星人。これも合成前。

 

 

・ノーベル書房怪獣大全集第3巻「怪獣絵物語ウルトラマン」から。ドゴラ、実は下半身があったのか!? 右端はレッドギラスか。南村喬之の絵。

 

 

・「少年マガジン」連載のマンガ「ウルトラマン」から、楳図かずおの絵。

 

 

・上、講談社67年「たのしい幼稚園」連載の絵物語「メフィラスせいじんのまき」から。文金城哲夫、絵河島治之。

下、71年の絵本で再録された際。

 

 

・河島さんの絵は素晴らしいですね。巨人になったアキコ隊員。踏みつぶされたいですねぇ。

 

 

・ガラモンがいるのは、シナリオからの引用。

 

 

・ここではサトルくんの代わりに<ほしのくん>が出ています。

 

 

・右上、ノーベル書房の怪獣大全集から、宇宙星間図と宇宙警備隊の解説。

手前味噌ですが、左上「ベストブックウルトラマン」から、下自作したイメージの、宇宙人会議の模様。

 

 

・おまけ。「ウルトラマンTタロウ」に登場するメフィラス星人。上、造型のための指示書。安井さんの絵。下の左端が完成したぬいぐるみ。そのとなり、お腹の模様の比較。左が初代。右が2代目。

 

 

・以前にもやってみたんですが、顔の目鼻のパーツを入れ替えてみました。ほぼ同じなんですね。初代を素体にしてウレタンを盛りつけたんだと思います。

 

 

・メフィラス星人、初代の流用の流れ。