細野豪志原発事故担当相は9日のフジテレビの番組で、東京電力福島第1原発から半径20キロ圏内で立ち入りが禁止されている「警戒区域」について「放射線量が比較的低く、(住民に)帰って来てもらえる可能性の高いところはある。一律でなく、地域ごとに考える」と述べ、線量の低下した地域を先行解除する考えを明らかにした。

 細野氏は「年内に(原子炉の冷温停止が)達成できたとしても、すぐ解除にはならない。ただ(放射性物質の除染で年間被ばく線量の半減を目指すこの)2年間、一切動かせないとは思っていない」と指摘。12年度中の部分解除もありうるとの見通しを示した。

 定期検査で停止中の原発の再稼働については「電力が足りなくなるから動かす、という理由ではいけない。安全を確保し、だめなものはだめと(判断すべきだ)」と強調した。

 また、国の除染費用に関し、テレビ朝日の番組で「来年度予算(要求)も含めて1兆1000億円以上あるが、足りなければ増額しなければならない。(野田佳彦)首相もやろうと思っていると思う」と述べ、12年度補正予算での追加計上の可能性を示唆した

日本原子力産業協会は7日までに、9月の国内の商業用原発54基の設備利用率(稼働率)は20.6%との調査結果をまとめた。同協会や電気事業連合会が記録している1977年4月以降では、今年8月の26.4%を下回り、過去最低を更新した。

 原発の停止が長期化し、再稼働した原発はない一方、九州電力川内2号機(鹿児島県)と四国電力伊方1号機(愛媛県)が定期検査に入った。

 稼働率は3月の58.3%から下がり続けている。再稼働には、国に地震や津波に関する安全評価の結果を報告し、認められる必要があるが、安全評価を終えた原発はまだない。10月に入っても4日に九州電力玄海4号機(佐賀県)がトラブルで自動停止し、稼働率低下は今後も続く見通し。

 東電が廃炉を表明した福島第1原発1~4号機は現役の原発として調査対象にしている。本年度上半期(4~9月)の稼働率は34.9%。2010年度は67.3%だった。

福島県は6日、予備検査で一部の新米から国の暫定規制値と同じ1キロ当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出された二本松市について、収穫後の本検査結果の公表を始めた。

 初回分は同市下川崎地区の5地点で、いずれも測定器で検出できるレベル(5~10ベクレル)を下回り、セシウムは確認されなかった。

 県は、同市を重点調査区域とし、本検査対象を当初予定の約40地点から288地点に拡大している。来週中には終了する見込みで、市全体の結果がそろうまで出荷は行わない。暫定規制値を上回った地点があれば、旧市町村ごとに出荷を規制する。

市民団体「福島老朽原発を考える会」(阪上武代表)などは5日、都内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故の影響で部分的に放射線量が高いとされる福島市渡利地区で独自に土壌を調査した結果、最大で1キロ当たり30万ベクレルを超える高濃度の放射性セシウムを検出したと発表した。

 政府は10万ベクレルを超える汚泥についてはコンクリートなどで遮蔽(しゃへい)して保管することを求めており、それを上回るレベル。

 渡利地区は、放射線量が局所的に高いホットスポットとして政府が避難を支援する「特定避難勧奨地点」に指定されておらず、市民団体は「チェルノブイリ事故で避難を要する地域とされた『特別規制ゾーン』に相当する高い数値。一帯を特定避難勧奨の地区として指定すべきだ」と指摘している。

 同団体などは神戸大の山内知也教授(放射線計測学)に依頼し、9月14日に同地区や周辺の側溝や通学路脇、民家の庭など5カ所の土壌を測定した。その結果、1キロ当たり約3万8000~30万7000ベクレルのセシウムを検出し、6月に調査した時より数値が高い場所もあったという。

 調査地点の中には既に除染が行われた地域もあるといい、山内教授は「事故前の水準まで戻れば『除染』と言えるが、そのレベルには下がっていない」と話した。

長野県松本市の認定NPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」と信州大病院が福島県内の子ども130人を対象に実施した健康調査で、甲状腺ホルモンが基準値を下回るなど10人の甲状腺機能に変化がみられたことが4日、同NPOへの取材で分かった。

 福島第1原発事故との関連ははっきりしていない。同NPOの鎌田実理事長は、25年前のチェルノブイリ原発事故では約5年で小児甲状腺がんの発症がピークを迎えたとして「現段階で病気とは言えないが、長期的な経過観察の必要がある」と話している。

 同NPOによると、調査は7月末から8月末にかけて実施。原発事故で福島県から避難し、長野県茅野市に短期滞在していた当時0歳から16歳の子どもが医師の問診と血液、尿の検査を受けた。

 1人の甲状腺ホルモンが基準値を下回ったほか、7人は甲状腺ホルモンの分泌量を調節する甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。さらに2人は、甲状腺組織が壊れることなどで血中濃度が高い数値を示すたんぱく質「サイログロブリン」の濃度がやや高かった。

 10人の居住地の内訳は警戒区域が3人、9月30日に解除された緊急時避難準備区域が1人、避難の指定区域外が6人だった。甲状腺は成長に関する甲状腺ホルモンなどを分泌。子どもは放射性ヨウ素が集まりやすく、蓄積すると甲状腺機能低下症や甲状腺がんになる可能性が高まる。