がんフーフー日記 -47ページ目

ひと月経過

ダンナです。




「ってことで、あれからひと月経ったみたいだけど」

「どうよ、そっちの生活は? そろそろ慣れてきたわい?」

「っていうか、そっちこそどうなんだよ。天国の様子は」

「ああー、ここはまさしく天国だわい。

 空調は快適だし、ドリンクは飲み放題、マンガ、インターネットは

 もちろんのこと、ダーツにビリヤード、カラオケまで完備……」

「それ、わしが今いるマンガ喫茶のことじゃねーか!」

「おほほほほほ、ご愛嬌ご愛嬌」

「なんか天国に行って、キャラ変わってない?」

「で、もちろんわたしのことは忘れてないわい?」

「ああ、忘れられるものか。ハローワークに行く道すがら、いつも

 アノヤローのおかげでこんな目に……って狂犬の瞳でつぶやいてるよ」

「おほほおほほ、やっぱりわたしが忘れられないんだわい。

 まあ、やつあたりといえど、それも愛」

「これも愛」

「たぶん愛」

「きっと愛……って、これ『愛の水中花』じゃねーか!」

「おほほほほほほ、ひさびさのナツメロ愛のデュエットは新鮮だわい」




「……で、来週にはもう戻ってくるらしいじゃん」

「そうなんだわい。新盆で、わたしも帰省だわい」

「もう戻ってくるのって、ちょっと早くない? 先月逝ったばかりなのに」

「それ言われてもしょうがないわい。臨終が7月だったんだから

 こういうことになるのは、あたりまえだわい」

「まあ、そうかもしれんけど。

 しかしひと月って言っても、実際のとこ、よくわからんね。

 長いのか短いのか、まるでピンときてないよ」

「んー、人間だった頃の感覚、忘れちゃったから

 わたしゃ何にも言えんわい。みんな相変わらずなん?」

「みんな、フツーに相変わらずよ。

 あ、来月のKMOくん結婚式ビデオの制作でKZOが再び

 ガッチガチに緊張しとるのがおもろいな」

「あー、想像つくねぇ。BOOのお腹も順調そう?」

「順調順調。もうかなりデカいことになっとった。

 みんなもあなたがいなくなったリアクション、

 どうとっていいかわからんみたいよ」

「おほほほほほほ、なんてたってわたしはみんなから愛されとったからね!

 愛されキャラやったからね!」

「あ、そう言えば、

 いろいろ整理してたら、知らんキャッシュカードの明細で

 なんやらいろいろインターネット関連の請求があったけど、あれなに?

 わし、解約するのに死ぬほど苦労したんだけど」

「どきっ! おほほほほほ、最後まで神秘的な裏の顔、ごめんなさ~い」

「そういうとこ、ちゃんとしとけーよ」




「ところで、ぺ~はどうなん?」

「どうなんって……でかいよ」

「どれくらい、でかいん?」

「ものすごくでかいよ。子牛くらいの大きさはあるよ」

「で、どれくらい、重いん?」

「相当重いね。工事現場の重機くらい重いよ」

「と一応聞いてみたものの、実はわたし、全部天国から見て知ってるんだわい」

「だったら聞くなよ! まあ、最近は後追いとかするようになって、

 わしのこと見つけるとハイハイで寄ってくるからね。

 ええやろ? うらやましいやろ?」

「うらやまちい……わたしのところにもハイハイで寄ってきてほしいわい……」

「さすがに、まだ宙は浮けないから。歩けてもいないし」

「最近、ぺ~熱出してない?」

「あ、見てた? そうなんだよね、ちょっと心配してんだよ」

「あれ、実はわたしが呪っちゃってるの~~~」

「ほんと、やめろよそういうの! 母親なんだから、ちゃんとしようよ!」

「おほほほほほほ、母の愛はHOTなのよ~」





「しかし、新盆ってなにすんの?」

「うーん、いろいろあるけど説明するのが面倒だわい。

 まあ、ダンナ、がんばって。なんといっても、わたしが帰ってくるんだから!」

「大人だからやりますけど……

 なんかわしだけ貧乏クジ引いてる気がしてならないんだけど」

「おほほほほほ、気にしない気にしない。

 死者に優しくしておくとね、きっとね……イイコトアルヨーホントダヨー!!!」

「いったい、天国でどんな友達と付き合ってるんだ!?

 ま、いっか……じゃあとりあえず来週、いわきで」

「じゃ、来週そっちに行きますんで、よろしくだわい。

 あ、みんなにも伝えといてね」

「ハイハイ、わかりましたわかりました。そいじゃ、また」

「……あ、ダンナ」

「……なに?」

「イイコトアルヨーホントダヨー!!!!」

「だから誰の影響かっつってんだよ、それ」

「おほほほほほほ、じゃあ、来週ね。チャオー☆」