ダグラス・アダムス「銀河ヒッチハイク・ガイド」 | アルバレスのブログ

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1979年発表。
文庫1冊、302ページ
読んだ期間:2日


[あらすじ]
ある朝、アーサーが目覚めると家の前に黄色いブルドーザーが停まっていた。
「ありゃなんだろな…」とぼんやん考えながら歯を磨き顔を洗っていたところ、急に思い出した。
”バイパス工事を行うので立ち退いてください”
それが今日だった事に。
あわててブルドーザーの前に寝っころがり工事を妨害するアーサー。
そこに友人のフォードが深刻な顔をしてやって来た。
「そんな事はいいから一杯飲もう。もう時間が無いんだ」
なぜか朝から一杯ひっかける事になったアーサーは、フォードから意外な事を聞かされる。
「地球はもう終わりだ。後12分くらいしかない。」
ふざけてると思ったアーサーだが、その時、大きな物音を聞き外を見るとさっきのブルドーザーが自分の家を壊してるのを見て頭にきて走り出す。
工事担当者に罵詈雑言を浴びせながら工事を中止させようとするアーサー。
すると工事担当者たちが逃げて行った。
良くみると空には巨大な宇宙船。
宇宙船から聞こえてくるメッセージはこんな風だった。
”このたび、超空間高速道路建設のため、地球は取り壊しになります。”
そして地球は消滅した…

次にアーサーが気づいたのは宇宙船の中。
実はフォードは宇宙最大のガイドブック「銀河ヒッチハイク・ガイド」の現地調査員で、誤って15年も地球に取り残されていた宇宙人だった。
アーサーはフォードと一緒に宇宙を旅する事になる…


本書を読んだ事の無い人に、まずは、本書冒頭導入部の1ページ半を紹介します。


「星図にも載っていない辺鄙な宙域のはるか奥地、銀河の西の渦状腕の地味な端っこに、なんのへんてつもない小さな黄色い太陽がある。
この太陽のまわりを、だいたい1億5000万キロメートルの距離をおいて、まったくぱっとしない小さな青緑色の惑星がまわっている。
この惑星に住むサルの子孫はあきれるほど遅れていて、いまだにデジタル時計をいかした発明だと思っているほどだ。
この惑星にはひとつ問題がある、というか、あった。
そこに住む人間のほとんどが、たいていいつでも不幸せだということだ。
多くの解決法が提案されたが、そのほとんどはおおむね小さな緑の紙切れの移動に関係していた。
これはおかしなことだ。
というのも、だいたいにおいて、不幸せだったのはその小さな緑の紙切れではなかったからである。
というわけで問題はいつまでも残った。
人々の多くは心が狭く、ほとんどの人がみじめだった。
デジタル時計を持っている人さえ例外ではなかった。
そもそも木から降りたのが大きなまちがいだったのだ、と多くの人が言うようになった。
木に登ったのさえいけない、海を離れるべきではなかったのだと言いだす者もいた。
そんなこんなのある木曜日のこと。
たまには人に親切にしようよ楽しいよ、と言ったばかりにひとりの男が木に釘付けにされてから2000年近く経ったその日、リクマンズワースの小さな喫茶店に座っていたひとりの若い娘が、いままでずっとなにがまちがっていたのかふいに気がついた。
そしてやっと、世界を善にして幸福な場所にする方法を思いついた。
今度の方法は確実で、きっとうまく行くはずだったし、だれかがなにかに釘付けにされる心配もなかった。
ところが悲しいことに、電話をかけてそのことを人に伝えるひまもなく、恐ろしくも無意味な災厄が襲ってきて、彼女の思いつきは永遠に失われてしまった。
これは、その若い娘の物語ではない。
その恐ろしくも無意味な災厄と、その後のてんまつの物語だ。」


この部分を読んで、ニヤリとした人はぜひ本書を買って読んでください。
何だか良くわからんと思った人、全然面白くないと思った人は、たぶん向いてないのでここまでにして忘れてください。


本書はこのようなひねくれた文章が大量に出てきます。
そしてそれが実に良くひねられているだけでなく、ただのバカSFとタカをくくるには惜しいほど良く練られた小説でもあります。
SF考証が厳密かなんて事がばからしくなるほど突拍子もない事が次々に起こりますが、取るに足りないと思われる事が後に重大な結果につながるための巧妙な伏線になっています。
正直言ってここまで読ませる小説だとは思っていませんでした。
著者の力量に脱帽しました。
もともとラジオドラマの脚本家としてスタートした著者だけに文章だけで状況描写する能力に長けていて、いちいち目の前にそのシーンが浮かんでくるようです。


登場人物も実にひねくれています。
あらすじで書いたアーサーとフォード以外に、二つの頭と三本の腕を持つ、いい加減で自己顕示欲の強い詐欺師だからこそ銀河帝国大統領になれた(理由は読むとわかります)ゼイフォードや超根暗で重度のうつ病患者のようなロボットのマーヴィン(彼も意外な活躍をします)など、個性的な人物・事物が登場。
人を通すために開ける事に恍惚感を味わうドアとか、イマイチ意味の分からない無限不可能性ドライブも面白い。
さらには地球とは何かとか「生命、宇宙、その他もろもろについての回答」と言った壮大なテーマまで取り込んでいます。
まさに大風呂敷。
そしてそのたたみっぷりのセコさ加減がまたひねくれてて良い。


本シリーズはこの後「宇宙の果てのレストラン」「宇宙クリケット大戦争」「さようなら、いままで魚をありがとう」「ほとんど無害
と続きますが、これらの触りが本書にみんな入ってるところも洒落てます。

本書カバーのグジラも本書である意味重要(?)な役割を果たしてたり。


とにかく気軽に読める傑作面白小説なので、読まないと損します。