ロバート・メイスン「戦闘マシーン ソロ」 | アルバレスのブログ

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最近はガンプラとかをちょこちょこ作ってます。ヘタなりに(^^)

1989年発表。
文庫1冊、469ページ
読んだ期間:4日


[あらすじ]
ソロ。
それは米軍が20億ドルかけて開発した、自律学習AIを搭載した戦闘ロボット。
当初、歩くことから始めたソロは、数々の訓練を経て、実戦投入一歩手前までやって来た。
速やかに成果を上げたいプロジェクト副司令官のクライド・ヘインズ准将は、時期尚早として反対する設計者ビル・スチュワートの反対を押し切り、ニカラグアでの実戦訓練を行う。
かつて戦闘訓練中に誤って教官を撲殺したソロは、それがトラウマとなり生と死について特別な感情を抱いており、実際の人間を標的にした実戦訓練に反発。
帰還後に自らが消去(=死)される事を恐れたソロは脱走を図る。
反アメリカを掲げるサンディニスタ政権配下のラス・クルーサス村にたどり着いたソロは、バッテリーの枯渇に瀕し、たまたま居合わせた現地の少年エウセビオとインヒーニオに助けを求める。
彼ら村民からの援助により、活動を再開したソロは、素朴な村人との交流の中、人間性を学んでゆく。
そんな時、親米ゲリラ組織コントラ軍が村を襲う。
本来の能力を全力で発揮し、村民を救うソロ。
しかしその人間離れした活躍により、ヘインズ准将はソロがそこにいる事を確信。
CIAと共にソロ奪取のため動き出す…

本書はロバート・メイスンの2作目で、SF作品としては初作になります。
著者はベトナム戦争にヘリ・パイロットとして参加。
従軍後、戦争後遺症により酒と麻薬におぼれ、さらに事業に失敗した後、麻薬密輸で懲役を受けるなど、幾度となく人生の挫折を味わった末、服役中に書いた戦争小説でデビューを飾ると言う、実に波乱万丈な経験をしている作家です。

本書は高性能AI搭載のロボットが主人公のSF小説ではありますが、根底には、彼の経験した戦争がベースとなったテクノスリラーの一面が強い作品です。
ソロが指導するラス・クルーサス村の防衛対策や何度も登場するヘリの場面では、その経験が遺憾なく発揮されています。
二つの勢力、巨大な米軍をバックにしたコントラ軍と非力なサンディニスタ政権の間で、木の葉のように揺れるラス・クルーサス村の人々の生活やこの村を襲う戦争の悲惨さが非常にリアルに描かれています。

そして主人公であるソロの存在。
AIである事から常に丁寧な言葉遣いで理性的な話し方をする彼の中に徐々に芽生えていく、感情、友情、愛。
生きる事とは何か、死ぬ事とは何かを考える彼の前に現れる、セルナ神父とのやり取りには考えさせられます。
「君は生き物ではない。だから君には魂はない」と言うセルナ神父に対して、
「突き詰めて行けばあなたの体を構成している原子と電子も生き物ではない。わたしの体も原子と電子で出来ている。わたしもあなたも同じではないか。」と言うソロ。
人間がものを考えると言う行為が、脳細胞のいかなる化学変化により起こっているかは明確には解明されていないはずですが、そうとすると、考えるという行為や魂などは何を根拠にすればいいか分からなくなります。
これからの未来、ソロのような存在が出現した時、人類はどう対応すればいいのか。
意外と色々な事を考えさせる作品でした。

執筆時期が少し昔なため、時代遅れな感は否めないところがありますが、十分に読み応えのある作品だと思います。

ある時期、本書は映画化の話もあったようですが、今の所そんな映画はないようです。
さらにメイスン自身のその後も分からないし、次の著作の話も聞こえてこない。
本書も絶版中。
ちょっと残念ですね。

ちょっと古臭いデザインのソロ。
名前の通り、唯一無二の存在。
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