黒い羽根 -37ページ目

そのお店は最初に靴を個別に入れるタイプで


靴を脱ぐ時に「私」はバッグの金具に髪を引っ掛けてしまい


思わず、痛っ!と叫んでしまった


店員さんが「大丈夫ですか?」と言う横で


「彼」がクスクス笑っていた


近いうちに髪を切ろうと思った


バッサリいってやろうかな



実は、数日前にもそのお店に「私」は行っていた


もちろん「彼」にはそのことは内緒


別に昨日食べていたって平気なんだけれど


そういことに、「彼」は気を使う人



会話の内容はほとんどが会社の話


今の会社の事や「私」が今どんな内容の仕事をしてるか・・・


今の仕事に不満はないけれど、


前の方が仕事は楽しかったと「彼」は話してくれた



そろそろ出ようかというタイミングで


「私」は少し意地悪な事が浮かんで


「彼」に「彼女」の写真はないのかと聞いた


「彼」は少し困った顔をしたけれど


バッグから取り出して見せてくれた


それはまだ「彼女」が元気だった頃


二人で撮った写真


「私」が見せろと言ったのに


「なんでこんな写真見せるの?」と言いたくなるくらい


楽しそうな写真だった



靴を履くとき、髪の毛に気をつけながら


髪の毛をもう少し伸ばそうと思った


なぜなら、写真の中の「彼女」の髪は


「私」より少し長かったから



「私」の時間はまだ止まったままだ





「彼」が会社を辞めて半年たった


去年の9月頃


「彼」の方からご飯に誘われた


「私」の心の時間はまだ動いてはいなかったけれど


それを拒否するほど固まってもいなかった


「彼」は「私」の好きなものをよく知ってる


一緒に働いていた頃は、それこそ何度もご飯を食べて


お互いの好きなものをたくさん話した


でも、そういえば二人だけは初めてだ


駅で待ち合わせをして、車でお迎え


お酒は飲まないみたい


半年振りに見た「彼」は少し痩せていた


二人の好きな韓国料理屋に行くことになったのだけれど


「彼」が予約までしてくれていた


そうだ、この人はすごくマメな人だった


そういうところも大好きだったのに


半年たって、少し薄れてきていた



「私」の時間が動き出してきたんだろうか






「私」の心の時計も止まったままだ


これ動かすには、もう少し時間がかかりそう


あまり人に相談しない性格が幸いして


誰にも話してないのはよかったと思う


「私」だってこんな話を聞かされたら


どうやって答えたらいいのか分からない


そもそも、恋の相談が「私」は大嫌い



毎日とは言わないけれど、「彼」からメールが来る


ほとんどの内容は「彼女」について


「彼」も誰かに話せて少し安心したんだと思う


それが「私」ってのも皮肉だね



恋の相談なんてだいっきらいだ